May 07, 2008

●マーシェンカ

画像がないけど、久しぶりに積んである本から一冊読んだ。ナボコフの「マーシェンカ」であります。処女作ということで、つくりも典型的というか、読んでいてナボコフっぽくてほのぼのしちゃいます。ガーニンのマーシェンカ萌えっぷりがおもしろすぎる。なんか思い出のほうが美しくなっちゃうのはいずれも同じというか年をとるとわかるというか。でも最後のガーニンはちと前向きすぎですぞい。

私が持っている本はカバーに映画の写真が載っていて、その映画にあわせて再販されたらしい、がその後あんまり見ないなあ。「ロリータ」もよいけど、手に入るようにして欲しいね。まあ読むほうも新刊でも図書館だったりでどっちもどっちか。先はないな。

April 03, 2008

●愛しのグレンダ

book-Cortazar-02.jpg「愛しのコルサタル」もとい、フリオ・コルサタルの短篇集である「愛しのグレンダ」が出ちゃいました、読んじゃいました。ああ、なんか幸せ。。。なんというか写実的な日常からツイ踏み外しちゃう瞬間がおもしろい、が後期の作品集だけにとっつきにくさも満点。味わうには全身敏感、コルサタル感度MAXの状態で読まないとおもしろくない。

また、解説にある自身の分類が面白かった。儀式、遊戯、移行、あちらとこちらというのはさすがにおもしろい。それに比べて評論家?のミステリーとか幻想とかは陳腐すぎてひいちゃいます。

というわけで久しぶりに文学的なものを読んだ気がする。これを機会に復活できるかどうか。。。でもまだPSPでの魔界戦記「ディスガイア」にはまっているんだよなあ。おわらないっす。

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December 07, 2007

●神を見た犬

book-Buzzati-03.jpg光文社文庫で古典がでるのはうれしいです。ブッツァーティは何冊か持ってますが単行本ばかり。ブッツァーティってななか文庫に会う気がします。

で、半分くらいはすでに邦訳があるのですが手に入りにくいものも多くなってきているので、持ちやすい文庫であることと、代表作というかいいやつが集まっているので、今回のは買いでしょう。

私が 好きなのは表題作の「神を見た犬」「護送大隊襲撃」とかです。「七階」もいいけど有名になりすぎてるし。今回読んで「戦艦《死(トート)》」もつくりが面白かった。もう全部忘れてるなあ。。。 「神を見た犬」「護送大隊襲撃」とか荒木飛呂彦で書いてくれないかなあ。パン屋の怒り具合とか擬音入れて良い感じになりそうなんだがなあ。。。護送大隊襲撃の各おやぶんもそれぞれのポーズ(JOJO立ち)でみたいぞ。

November 23, 2007

●時間割

book-Butor-01.jpgミシェル・ビュトールの時間割をブレストンの時空迷路に苦しみながら読んだ。で、おもしろかったかというと、うーん、微妙。最初はおもしろかったんだけどなあ。。。なんせ途中からしつこいはかったるいはで困った。やりたいことはわかる気もするんだけど、最後の感想は「フ・ラ・ン・ス・野・郎・は・さ・っ・さ・と・国・に・帰・れ」といいましょうか、ブレストンという都市に同情しちゃいますよ、ほんと。

もうちょっとすっきり書いてるとおもしろくなりそうなんだけど、書かれた時代のせいもあるのか、「アレクサンドリア四重奏」みたいにもってまわった書き方で、うーん、もう時代遅れというかそんなにおいがぷんぷんです。ま、こういう粘着質的自分が大事ってやつは冗談としてはおもしろいけど、こうまでやられるとバカの自己弁護を読むことに意味があるのか、ということでございまして、今の私には無理です。団塊の世代的な個人主義というか身勝手さだよな、まったく。

時間のトリックとかちょっとだけおもしろいけど、もう最後はどうでもよくなったので別に2月に何が起こっていようが興味ないです、はい。

September 29, 2007

●風の裏側

book-Pavic-01.jpg本はナマモノであり、買うべきときに買わないともう出会いないかもしれないのだ。買いそびれて消えた本にまた出会える確率は低い。 それでも時には買いそびれていた本に出合えることがあるのだ。日ごろの行いが良いのだ。

ミロラド・パヴィチの「ハザール事典」を持っている身としては「風の裏側」 も買わなきゃ、だったのだが、ふっと気を抜くとなくなっていた。ああ、買いそびれたのう、なかなか出会えないのう(ヘーローとレアンドロスのように)と思っていたが、最近古本ではあるがなぜか出会うことができた。時間の海を越えて。。。

で、これだけ書いても「ハザール事典」はまだ読んでいないのだが。むむむ。

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September 09, 2007

●魔術師の帝国

book-Fiest-01.jpg書店を覗いてみると、レイモンド E.フィーストのリフトウォー・サーガの「魔術師の帝国」が新装で復刊していた。 そういえば昔けっこうはまって好きだったなあと思い出す。私が知ったのはPC(DOS/V機の頃だ)の海外ゲームで「Return to the Krondor」というRPGがあって、それがこのリフトウォー・サーガの後の時代で同じ背景(主人公は違うが登場人物も)ということで、ゲームを始めるために読み始めたのだが、結局本にはまってゲームはほとんどしないままに終わったような。根性ナスだな。

ファンタジーとしては「指輪物語」などとも比べられるのだが、まあそこまでの深さはない、が設定も展開もおもしろいぞ。ただリフトウォー・サーガ3部作の続編である「王国を継ぐ者」「国王の海賊」はリフトウォーほどの設定の大きさはなく、普通のそこらにあるファンタジーになってしまっている。3部作にはまった人のための次世代ではあるのだが、ちょっと落ちると思うなあ。でも昔の登場人物の変わりようや亡くなっていたりするとちょっと悲しかったりする。そういえば「国王の海賊」は翻訳が待てなくて、Paperbackで読んだっけ。

その後、その続きがサーペント・サーガとしてでていたけど翻訳されませんでしたなあ。。。まあワンパターンになってたし。復刊はうれしいけどジャケットが軟弱になっているのはなんとも。

August 30, 2007

●チャパーエフと空虚

book-Pelevin-04.jpg下期はもう少し本を読みたいと思いながら、結局時間がかかってしまいました。ペレーヴィンの本を読むのは4冊目だけど、考えてみるとまともな長編はこれが最初かもしれない。でも「チャパーエフと空虚」 はおもしろいぞ。

そういえば 前にフロイドの心理学は20世紀最大のおもちゃかもしれんと書いたが、哲学は世紀を越えた究極のおもちゃのような気がしてきた(宗教もそれに近い気はするが)。そうだよな、学問とかというより人それぞれだから、いくら純粋知性とかいっても最近の街の人々見てると純粋痴性とか純粋稚性つう感じだし、まあそれぞれが自分はこんなんだよんというだけじゃなかろうか。

もちろんそういう部分だけがこの小説の中心ではなく(中心は空虚なのだ)、展開やストーリーというかつくりがうまい!また、この手のメタフィクションにはめずらしく最後がさわやかな感じだ。

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February 25, 2007

●カフカ短篇集

book-Kafka-01.jpg今年はほとんど海外文学的なものは読んでいないんですが、ま、ちょっとゼーバルトでも読もうかと思ったが、そのためにはカフカよんどかなきゃ、というわけで(いやゼーバルトのなんでも、というわけではないですが)、カフカ短編集を読んでみた。つっかカフカ読んだのは高校の頃でもう忘れてます。短篇集はいくつかは読んでたかなあ。。。もうすべて忘れています。

で、その頃どう感じたかすら忘れているけど、いま読むといろいろおもしろいなあ。不条理は不条理なんだけど、幻想風味だったり皮肉っぽかったり。今読んで思うのは、こんなの高校生で読んでも全部はわからんわなあ。いや、いくつになっても全部はわかりようはないわけですが、昔は小説って言いたいことが決まっているように思っていたりしたわけです。もういまじゃ、解釈つうか感じ方は個人の問題だしそれも経験や体調でも変わるし、いえいえ、そのたびごとに新しい発見がないとおもしろくないわけであります。

開かれた小説空間、閉じない物語世界がいとおかし。

December 24, 2006

●恐怖の兜

book-Pelevin-03.jpg新・世界の神話プロジェクトはどうも最初のアトウッドの「ペネロピアド」が気に入らず放置していたんだけど、ペレーヴィンとあっては買わなくてはなるまい。というわけで、ヴィクトル・ペレーヴィンの「恐怖の兜」を読んだ。

最初チャット形式だし、なんかよくわからんし、どーかな微妙かなと思ったんだけど、脱線も含めて面白かったし最後の一発もなかなか楽しかったす。また途中の禅問答のような変な哲学ごっごもあって、おもしろい・・・けど、一般の人向けかといえばそうでもなく、あんまりペレーヴィンでもこれから読むのはどうかなあと思ってみたりである。が、評価は個人的なものなので星4つ。変な小説に慣れていない人は「虫の生活」とか「眠れ」から読もうね。もっとも「虫の生活」や「眠れ」も結構変だけど。

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December 15, 2006

●ボートの三人男

book-Jerome-01.jpgうー、面白すぎる。今頃読むのもどうかと思ったが、ジェローム・K.ジェロームの「ボートの三人男」を読んだら、いやあおもしろいですなあ。もともとピーター ラヴゼイのクリッブ部長刑事&サッカレイ巡査ものを読もうかと思ったが、「絞首台までご一緒に」を入手したら、元ネタが「ボートの三人男」だったので、そろそろ読んどくべきかなあと。でもこっちのほうが気に入ったので、ピーター ラヴゼイのことは忘れました。

1898年というともはや一世紀以上前なんだけど、いや、なんかイギリス人っておもしろい。なんだかついこの前のお話と言われても信じちゃいそうです。昔からテムズ川下りみたいな休暇があるんですなあ。日本では川は短いのでさすがに似たような話は無理かなあ。話としてはイギリス版東海道五十三次みたいなもんかのう。で、ひねくれ具合とのどかな感じに星4.5。

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October 03, 2006

●シンポジウム

book-spark-03.jpgうーん、ミュリエル・スパークの「シンポジウム」を読んで、どひゃっと思ったけど、どう書こうかと悩んで数日。もうスパークおばさん意地悪すぎ。 そういえば今年お亡くなりになったわけですが、死を忘れるな、ということでスパークおばさんあの世でもシンポジウムを開いているのでは。

マーガレットがおもしろすぎる。「レ・ゾートル(他者)の哲学」とかいいながら回りに不幸と疑惑をばら撒いていく姿はすばらしいです。で、マーガレット最強かと思えば、実は作者のスパーク最強!というところがおもしろすぎる。というわけで、星4つ。しっかし小説の作りといい、ヒルダの運命の提示といい、素敵です。I Love Spark!

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August 29, 2006

●琥珀捕り

book-Carson-01.jpgなんといってよいのか、小説なのかはたまた究極の語りなのか、キアラン・カーソンの「琥珀捕り」は、琥珀やオランダや人魚やその他いろいろなものへの薀蓄と物語の一大交響楽である。拡散していく語り(=騙り)のなかに、陶酔するのがよかろう。Aの副題から始まりZの副題で終わるこの小説はしかし終わりがあるわけではなく、細やかにつながる物語とイメージの中で新しい物語を読者の中で産み増やしていくに違いない。

さてこの迷路のような物語をただただ酔いしれるのも良いけれど、より味わうには、フェルメールの絵画集、ローマ・ギリシア神話の本などをちょっと横に積んで、暑い昼下がりに京都の和菓子(この和菓子に関しては後で触れることとする)など準備して、思うがままに1章づつ、読み終われば思うがままに読み返すのが良い。私としては4.5、他の好事家にはぜひ押し付けたいと思うのである。物語の迷宮に酔いしれよ。

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August 02, 2006

●シャルビューク夫人の肖像

book-Ford-01.jpgジェフリー・フォードは「白い果実」を積んであるんですが、三部作ということでできればそろってから読みたいのだがいつになることやら。さて、そうして待っている間に「シャルビューク夫人の肖像」というのがでてしまいましたので、こちらから読んでみました。ランダムハウス講談社なんてのがあるんだね。

さて、幻想文学かというとそういう感じもむんむんで、途中の語り具合や広がりはけっこうよかったんだけど、最後はちょっとありきたりかなあ、ということで星3つ。ちょっと厳しいかな。でも幻想文学を期待するとちょっとつらいかもしれないので、普通の海外小説として読むほうがよいと思う。幻想文学的な視点では、最後は向こう側に着地するかこちら側に着地するかというと、こちら側に着地しちゃったので、私の好みからはちとはずれるかも。私個人的にはあちら側に着地するか、そもそも着地しないものが望まれるのだ。

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July 18, 2006

●虫の生活

book-Pelevin-02.jpgヴィクトル・ペレーヴィンは角川書店(つうかキャノンゲイト社だな)の「新・世界の神話」シリーズに「The Helmet of Horror」というタイトルで書き下ろすらしい。ギリシア神話の英雄テセウスと迷宮の怪物ミノタウルスの物語らしいが、ぜひアトウッドのようにはならないでくれー。まあペレーヴィンなら大丈夫かな、つうかわけのわからん多層なものになりそう。。。

というか、私はまだ「眠れ-青い火影」しか読んでいないので、今回「虫の生活」を読んだのだが、いや、これがおもしろい。おもしろすぎるぞ。でも、全然わかった気がしない。というわけで仕掛けといい隠喩といいナボコフ系の好きな人に向いているかもしれない。この小説では、人が虫になり虫が人になり、それぞれにすれ違い、人生(あるいは虫生?)での何かを見つけて、あるいは失っていくのだ。ターボリアリズムとやら全開ですな。一見連作短編集のようにも見えるけど、この蜘蛛の糸のような構成は、長編小説といってよいと思う。また、SF作家とジャンルわけされたりもするみたいだけでど、普通の文学作品です。自分的には「青い火影」よりおもしろくて、他の人(虫?)にも推薦したいので星4.5ということで。で、私は何虫?でぶの虫っていたっけ?

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June 21, 2006

●ロリータ

book-Navkov-05.jpg最近文学っぽいのは読んでないなー、つうか移動でどたばたしているのと、時間がかかるものを選んでいるからだろうか?まあだらだらと1ヶ月に1冊読むとすると半期で6冊だし、仕方ないね。特にナボコフは、やはり時間がかかるのであった。「ロリータ」は文庫本でも持っていて今回出た若島正氏の訳と比較しながら読むかあ、とも思ったけどそんな根性もなく、若島訳のみとなりました。ほほほ。

で、やはりナボコフはナボコフ、というか若島訳はナボコフ度が高く、言葉に埋もれる2ヶ月であった。「ロリータ」というとなんだかちょっとエッチっぽいお話と思う人もいるでしょうが、うんにゃ「ロリータ」は遺伝子の塩基成分がアデニン(A) , チミン(T),グアニン(G) ,シトシン(C)の4種類ではなくアルファベットの26種類(+実は感嘆符他)でできているんですよー。また、以前だとくらくらと気を失いそうな今回の若島訳なんだけど、実は結構楽しくついていくことができて、おもしろかった。そういう訳なので星5つだよ。でも一般の人には推薦はできん。いわゆるナボコフ的要素満タンなので、代表作と呼ぶのはそんなにおかしな話ではないと思う。

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May 10, 2006

●「夢に見られて」入手

ないだろうなと思いながらもついつい書店であるはずのない本を探すのが癖になっているんだけど、今日烏丸三条の大垣書店で沼野充義氏の「夢に見られて」を発見。たまにはこういうこともあるんだねえ。まさか再販されたの?とか思ったけど、奥付はやっぱり1990年だった。夢に見られているのは私?

ブルガーコフの「巨匠とマルガリータ」の記述もあるけど、このあたりは前のNHKラジオ講座のテキストのほうが詳しそうではある。でもベールイの「ペテルブルク」を積んであたりするのでぱらぱら読んでみたいと思う。またレムも亡くなられたので追悼でなんか読まなきゃなあ。

April 29, 2006

●レオナルドのユダ

book-Perutz-02.jpg「レオナルドのユダ」でぐぐると長野まゆみが出てきて困る。レオ・ペルッツの遺作の「レオナルドのユダ」である。しかも紀伊国屋書店では芸術書のところに置かれていて見つからずに困った。うーん、小説だよなあ。。。さて、世の中ダ・ヴィンチ祭開催中のようなので、、、というわけではなく、単に年末に読んだ「最後の審判の巨匠」がおもしろかったので読んでみた。

で、やはりペルッツって語り口がうますぎてプロの技やのうと感心する。背景も相当調べてあるんだろうなあ。でもそれがさりげない感じで書かれていて、うーんうまい。もっともそのあたりがうますぎるのがペルッツの弱点といいましょうか、あんまり考える暇も与えずに読んじゃうんだよね。もっとも遺作で凝り方も少ないのかあっさりと読めてしまう。文学の香りよりおもしろさが先立っちゃうんだよなあ。で、星4つ。

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March 17, 2006

●ミルチャ・エリアーデ幻想小説全集第1巻

book-Eliade-01.jpg作品社の全集ではナボコフの短編作品全集や、このミルチャ・エリアーデ幻想小説全集など重要なものがあって、高いんだけどしかたなし。いや、この長編3作分くらいのボリュームが2冊分の読めるんだからよしとせねば。しかし読むのに時間がかかったわ。今回の第1巻では、初期?の「令嬢クリスティナ」「蛇」「ホーニヒベルガー博士の秘密」「セランポーレの夜」「大物」「弟思い」「一万二千頭の牛」「大尉の娘」が入っている。

「ホーニヒベルガー博士の秘密」「セランポーレの夜」は昔福武文庫で読んだなあ。そのときは、ふーん、という感想だったが、今回もいろいろ新たに発見したとはいえ、ふーん、という感じはぬぐえず。中では西欧ゴシックホラーの最高レベルとして「令嬢クリスティナ」、春の祭典的異世界異宗教的な「蛇」が好きだ。また「大物」も後者の系列として好きかも。「大尉の娘」の会話の発散具合は後の「ムントウリャサ通りで」を思わせて好きだ。というわけで、星4つということで。このあたりは「ホーニヒベルガー博士の秘密」「セランポーレの夜」が世間の評価ほど私は気に入っていないということでし。

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March 04, 2006

●デス博士の島その他の物語

book-Wolfe-02.jpgジーン・ウルフは疲れる。少なくとも2回は読み直しを強要されるからで、いやーんなんだけど、1回読み通しただけでわからないとその隔靴掻痒感はより一層いやーんなので結局読み返すのだ。だから一冊読むのに 2~3 倍時間がかかるんですー。ついでに書く量も増えちゃう。

ただ、遊べる範囲からいうと「ケルベロス第五の首」のほうがいろいろ突っ込みどころがあっておもしろいかもしれません。「デス博士の島その他の物語」は「接続された女」のほうで読んでいたんですが、やはり「島三部作」まとめて読めるのはうれしい。また、前に読んだときよりはいろいろなことを発見しているようだよん。「アメリカの七夜」もSFマガジン買いながらほっておいたからなあ。どれも良いのだが、「眼閃の奇蹟」は、へえーこんなふうなのも書くんだあと新しい発見があったのと、なんか暖かくてよい。特に最後は心に残るよ。ということで、「アメリカの七夜」までは星4つくらいかなーと思ったんだけど、「眼閃の奇蹟」を加えて星4.5。

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February 01, 2006

●巨匠とマルガリータ 第2の書

book-Bulgakov-03.jpg第1の書に続いて、ミハイル・ブルガーコフの「巨匠とマルガリータ 第2の書」を読んだが、こいつはすごい、すごすぎます。これだけどたばたに書きながら、最後はハ・ノツリとピラトのことが、巨匠とマルガリータのことが、弟子の詩人(最後は教授になってますが)のことが、モスクワの人々ことが、そしてヴォランドやそのつれのことが心に残るのはなぜなんだろう。。。最後はメタフィクションに突入するとは、もうやられまくりました。というわけで久々に星5つということで、「フリアとシナリオライター」以来の満点でございます。「フリアとシナリオライター」は誰にでも安心して推薦できたけど、今回はそうでもない。そうでもないのだが、しかし、この本は読まれるべきではないか?そして、共産主義や民主主義といった政治、自己憐憫的な宗教を越えて、自分はどう生きるべきなのかを考えるというか感じる必要があるんじゃなかろうか。

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January 16, 2006

●巨匠とマルガリータ 第1の書

book-Bulgakov-02.jpgやっと念願のミハイル・ブルガーコフの「巨匠とマルガリータ」を読み始めた。。。が、まだ上巻。ブルガーコフは「悪魔物語・運命の卵」以来なんですが、もうなにがなんだか面白すぎる。第1の書では、モスクワに現れた悪魔が巻き起こしていく悲喜劇とイエスの物語が並置されますが、もう悪魔がひどいというよりも出てくる人々が自分で滅んでいく感じもあって、その姿はイエスを囲むエルサレムの人々の姿ともあいまって、星4つ。まだ4なのは、ここではほとんど主人公もヒロインもでてきてないんじゃよ。

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January 09, 2006

●ペネロピアド

book-Atwood-01.jpgオデュッセイアをやっと読んだので、封印していたフォロワー?を読み始める。大物はもちろんユリシーズなんだけど、最近でたマーガレット・アトウッドの「ペネロピアド」から。アトウッドは「侍女の物語」を積んであるけど読んでない。「良い骨たち+簡単な殺人」はぱらぱら読んだけど、おもしろくない。さて、というところ・・・なんだけど、これもぜんぜんおもしろくなかった。

なんか元を読んでいるときに想像(妄想)する範囲をぜんぜん超えていないし、ぎゃぐや書き方も上滑りっぽい。ま、そこが浅いと言いましょうか、これじゃちょっとね。オデュッセイア読んで自分で妄想しているほうが百倍面白いです。で、星1.5。アトウッド自体の評価は「昏き目の暗殺者」を読んでからにしようと思うけど、ぼくにはあわないかもね。

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December 31, 2005

●最後の審判の巨匠

book-Perutz-01.jpgレオ・ペルッツの「最後の審判の巨匠」を読む。ミステリ的な紹介もあるけど、どちらかというと幻想小説(というか私の思う妄想小説)に近い。最後まで読むと評価は両方に分かれるんだろうなー、と思う。私は最後の最後も信用できないので、好評価です。つうか惚れました。なによりも表現の不安定さが美しい。というわけで星4つ。私的には4.5でもよいけど推薦するかというと、ちょっと考えちゃいます。逆にこの本を好きだという人とはいろいろ語り合いたくなったり。レオ・ペルッツはどこかで聞いた名前だなーと思っていたら、国書刊行会の幻想文学大系に「第三の魔弾」があるのね。早速購入です。

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December 27, 2005

●オデュッセイア〈下〉

book-ODYSSEY-02.jpgいやあ後半はイタケーへ帰ったオデュッセウスの求婚者への殺戮劇でございますが、現代の目から見るとなんか全編通して突っ込みどころ満載で面白い。というか、こんな読み方していいのか?とも思うが、しかたないよね。あいかわらずオデュッセウスは口先で生きてる詐欺師のようにしか見えないし、求婚者たちも笑っちゃう。この先、オデュッセイアを本歌とした小説群を読んでいこうかとも思うので、星4つにしておこう。なお第24歌はちょっととってつけたようで、注にあるようにその前のペネロピアとのところで終わっても良いのかもしれない。さてギリシャにひかれたので、「ゼウス」というシムシティ系のゲームのギリシャ版を中古で購入した。最初のシーンにキュクロープスの洞窟の絵などが出てきて、やっぱり知っていると笑えてよいかもしれない。

December 20, 2005

●オデュッセイア〈上〉

book-ODYSSEY.jpg直接のきっかけはラファティの「宇宙舟歌」なんだけど、まあ「ユリシーズ」も積んでいるし、その先には「陽かがよう迷宮」もあるし、最近「ペネロピアド」もあるので、そろそろホメロスの「オデュッセイア」も読まなきゃなーということで、読み始めました。なぜか岩波文庫の呉茂一訳の下巻があったので(きっと上巻はどこかに埋もれているか捨てたかだな)、何も考えず岩波文庫の上巻を買って読んだら、途中で訳者が違うことに気づいた。で、最初は退屈かなーと思っていたんだけど、第2歌あたりからおもしろくなっちゃった。なんというか様式感というか語り口がおもしろい。しかも今の目で見るとオデュッセウスってただの悪漢じゃないですかいのう。。。という意味でなんつうか自己中心的なピカレスク小説として読んだりして。翼ある言葉にかけて面白いが、星は4.0。でもこういうのに慣れないとおもしろくはないかもしれない・・・が、個人的評価なので。

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October 02, 2005

●彷徨う日々

book-erickson-01.jpgスティーブ・エリクソンの「アムニジアスコープ」の邦訳が出たので、2,3度挫折していた「彷徨う日々」を読んだ。やはりエリクソンは後期ロマン派で半分無調みたいな濃厚さである。ただ、最近復刊された「黒い時計の旅」や「Xのアーチ」に比較すると、処女作ということもあるのか普通の小説のように思えてしまうぞ。作品としては「黒い時計の旅」や「Xのアーチ」のほうがエリクソンらしいし、それに振り回されてしまった私には少々くいたりない部分もあるかもしれないけど、そういう書き方になれない人には「彷徨う日々」から読むほうが良いかもしれない。

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September 19, 2005

●パラダイス・モーテル

book-McCormack-02.jpgエリック・マコーマックの「パラダイス・モーテル」を読んだ。前に短篇集である「隠し部屋を査察して」を読んで、あまりに変でおもしろいなあと思っていたんだけど、「パラダイス・モーテル」もやはりおかしい。この「おかしい」は「おもしろい」ではなく「狂っている」であります。以前に「カフカ+ボルヘスに筒井康隆を乾燥させてまぶした感じ。どちらかというと幻想小説にすれた人でないつらいかもしれません。」と書きましたが今回もよりいっそうそんな感じで、つうか小説と言うか散文詩というか、なんか違和感を感じつつ、それでも奔放なイメージにはすんげーと思いつつ。

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September 09, 2005

●積読リスト2005秋

まともなSFに落第している私としてはそれでもなんだかぐずぐずと執念深くコアなSFファンに憧れを抱いたりするわけで、それでもイーガンを積んだんだけどまだ最初で挫折しているので一転お馬鹿らしい「銀河のヒッチコックガイド」(レストラン付き)を購入したので積みます。読書の秋だし。SFなのでハヤカワか創元とばかり思い込んで探していたら河出文庫であった。

おまけにジーン・ウルフ (Gene Wolfe) の「新しい太陽の書」4部作がハヤカワ60周年記念リバイバルで復刊されているのを発見し、奇声をあげて購入、いやあ立派に積むことができました。また一歩SFファンに近づいた気分です(早くゼラズニイのドリームマスターも復刊してちょ)。

秋に向けてはエリクソンの「アムネジア・スコープ」も買ったし、奥泉光の「モーダルな事象」はまだまだ長そうだし、ついでに映画に影響されてそういえば昔の(たぶんポプラ社の)物しか読んでいなかったなあということで、「カリオストロ伯爵夫人」なども購入。やはり当面出入りを考えると読む速度より買う速度が当然速いわけで、ことごとく「積まれる」のであった。この秋には他にもマイケル・イネスの「ストップ・プレス」や「アプルビイズ・エンド」はまず買うだろうし、若島正氏訳の2冊「ロリータ」やG・カブレラ=インファンテ 神聖な煙」(一体どう翻訳しているんだ?)もはずせませんなあ。。。そろそろ引っ越して本棚倍増計画を考えないといかんなあ。。。

August 05, 2005

●七悪魔の旅

book-Mujica-Lainez-01.jpg久々に新刊を新刊のうちに読んだと言えよう。マヌエル・ムヒカ=ライネスの「七悪魔の旅」を読んだ。地獄の大魔王から叱責され、七つの大罪の悪魔たちが獲物を探して時空を超えて大騒ぎ、なんですが、とても面白かった。小説のなかで説明されるので、なんの知識がなくても笑えるけど、やはり悪魔の知識が少々と、出てくる場面と言うか歴史を少しでも知っているとより笑えると思われ。久々に「地獄の辞典」(ビアスじゃないよド・プランシー)を持ち出した。つうか講談社プラスアルファ文庫で文庫化されていたとは、世の中捨てたものではない、というかなんでもかんでも文庫化というか。でも手に入らんのか?

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July 24, 2005

●ディフェンス

book-Navkov-04.jpg夕方秋葉原に出ていたら地震で山手線が止まっていて結構つらかったっす。コンビネーション攻撃を仕掛けられているんだね、ぼくも。さて、ウラジーミル・ナボコフの「ディフェンス」を楽しんだ。やはり仕掛けが多いけど、少なくともチェスのシステムの部分はわかりやすいのでありがたい。また、今回も1行目から仕掛けかい!って感じでございました。それを最後の行で落とすのかい!なんか笑っちゃいましたが。

この小説は、ナボコフ対ルージンのゲームでもあるんだけど、もう一方的なコンビネーションで、ルージンはディフェンスを考えるだけだというのが悲しい。勝ちようがないんだから。最後も自由に向かったというよりは、向かう目の前にさえチェス盤の幻影が見えているわけで、チェスの神様に捕まえられたんだから、結局はそれさえもナボコフの読み筋でメイト!という気がする。その他に黒のクイーン?としてルージン夫人がでてくるんですが、彼女も「愛」というわけではなく「憐憫」か「母性愛」の元にコンビネーションの一部に組み込まれているんですよね。またヴァレンチノフの再登場はディスカバードチェックみたいで楽しい。ヴァレンチノフはナイアーラトテップみたいですなあ。

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July 05, 2005

●アルゼンチン短篇集-バベルの図書館

ムヒカ=ライネスの「七悪魔の旅」が7月に出るということなので、先に読んでおこうということです。「アルゼンチン短篇集」はいくつか拾い読みしてたんだけど、今回全部読んだ。傾向としてはだいたい有名どころがおもしろく、やはり有名になるだけのことはあるのかなと思ったり。最近イギリスとかロシアよりだけど、ラテンアメリカも捨てがたい。

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July 01, 2005

●ジーヴズの事件簿

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さて、「ジーヴズの事件簿」は文藝春秋版のP.G.ウッドハウスです。国書刊行会版の「比類なきジーヴス」とは重なっているんで、一冊だけ取るならこちらかな、という気もするんですが、はまっちゃえば全部買っとけ、って感じですので問題なし。で、国書刊行会版に入っていない話と、重なっている部分はすまんが最初の一部を読みました。次読み返すときは文藝春秋版からやろう。というわけで文藝春秋版のP.G.ウッドハウスはまずは3巻までの予定ですが、売れ行きによっては今後もあるのでみんな買えよ。イギリス落語だと思って読めばよろしい。

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June 19, 2005

●ペテルブルグ物語

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崩壊した自作マシンの復旧中です。

そろそろナボコフも何か読もうと思うのだが、やはりその前に読んでおくべきかなあと思って、というかまだ読んでいなかったのかということで、群像社から出ているニコライ・ゴーゴリの「ペテルブルグ物語」を読んだ。タイトルは「ペテルブルグ物語」だけど、そういう題の小説が入っているわけではなく、「ネフスキイ大通り」「」「外套」というペテルブルクを背景とした作品群が入っている。ゴーゴリおもしろすぎる。若いうちに読んでおくべきだったのだった。

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June 10, 2005

●邪魔をしないで

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エリザベス・ボウエンの「幸せな秋の野原」も一部読み始めているんだけど、これは英語、邦訳ともに困難な道なのでゆっくりやることにする。特に邦訳は日本語の文章としてどうよ?というのが多く、疲れまくり。一部ボウエンの流れにあるミュリエル・スパークの「邪魔をしないで」を読んだ。こちらは簡潔な文体と会話なので読みやすかった。が、内容はとんでもない世界じゃのう。スパーク萌え。

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May 20, 2005

●スパーク続き

スパークにはまったら即座に2冊も古本を購入。病気である。本当に風邪のようだ。

若島正氏の他の乱視読者シリーズは少しばかりナボコフ興味で買っていたのだが、「乱視読者の英米短篇講義」にミュリエル・スパークの項目もあるので、購入してそこだけでも読んでみたら出だしはナボコフだった。「透明な対象」の記述者は誰か、に関して本編解説よりはわかりやすく示されていて、先に読んでいて良かったというか、自分も的をはずしていなくてほっとしたという感じ。ただ、他の部分見ても、そこまで部分を読み込んでいいの?というのもちょっとあって、ナボコフの美しさはその部分と全体、あるいは3,4段階の各層での模様の現れ方を同時に楽しむことにあるのだから、説明とはいえあんまり細部ばかり書かれてもなあという気もする。もっとも私の中で「若島正」というのは、「恋唄」の若島正から逃れることはできず、ナボコフ伝道者というよりは自身がひとつの芸術的結晶体のようにしか思えないので、すでにフィルターのかかった見方かもしれない。

おっとスパークの話であった。「ポートベロー通り」「わが生涯の最初の年」「黒眼鏡」は読んでいるのでフムフムといった感じ。長編の「邪魔をしないで」は持っていないので古本頼みだなあ。「ポートベロー通り」はそうか、ナボコフの「透明な対象」と似ているといえばそういう設定もあるなあ。語り手があまりに皮肉っぽいところも似ているかも。「黒眼鏡」も主人公の少女に視点が行くところは自分もそう思った。スパークにかかるとジェンダーなんか関係なくてどちらもただのお馬鹿さんになってしまうところが快感である。ただ「わが生涯の最初の年」については確かに1歳未満のときの語り口ではあるけど、実際語っているタイミングは何歳かわかんないんだよね。それから笑うたびにということは少々時間が経っているとも言えるのだが。。。つうかこんな本を買っている時点でスパークにははまっているのであろうか?

May 17, 2005

●ポートベロー通り

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某所でのミュリエル・スパーク祭に乗り遅れていたんだけど、先週末に某書店の教養文庫ある限りセールで発見したので購入できた。前の引越しのときに間違って捨てたらしく、とても悲しい思いをしていたのだが、発見時のうれしさはたまらん。これも仕事で理不尽な忙しさを熾天使が見ていたのだと信じよう。ミュリエル・スパークは「死を恐れるな」と「マンデルバウム・ゲイト」を積んであるが読んでなかった。「ポートベロー通り」は幻想短編集ということで幻想的・・・というよりは変なのが多い。つうかスパークってやっぱり全部変なの?でも面白すぎるので、他の本も読もうと思う。

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April 03, 2005

●比類なきジーヴス

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P.G.ウッドハウスってイギリスでは有名らしいんだけど、日本ではあんまり知られてないなあ、ということです。翻訳自体があんまりなくて戦前、戦後すぐあたりしかなかったんですが、国書刊行会から「比類なきジーヴス」がでたので読んだ。国書刊行会からはジーヴスものが3冊でるらしいし、文藝春秋からもでるらしい(こちらは第一巻は重なるけど他はジーヴスものではないらしい)。なんかほのぼのとぬるぬるな幸せな気分になれるのであった。

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March 11, 2005

●遊戯の終り

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フリオ・コルタサルの短篇は邦訳されているものは全部読んだはずなんだけど、ほとんど覚えていない。再読したはずの「通りすがりの男」ももう記憶が怪しいんだけど、メモも残しておきたいので再読していこうと思う。「遊戯の終わり」は昔引越しでか誰かに貸してかで手元からなくなっていたんだけど、最近古本で2冊購入。どちらもきれいなのでよかった。リストには載っていないので、アマゾンへのリンクはなしです。

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February 13, 2005

●眠れ―作品集「青い火影」〈1〉

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最近ロシアものに傾いている。音楽はステインベルクの交響的前奏曲とかカバレフスキーのピアノ協奏曲とか。読み物ではブルガーコフとかナボコフとか(ロシア時代の短篇ね)。その流れというわけではないのだが、ヴィクトル・ペレーヴィンというロシアのSF作家の短編集「眠れ」を読んだ。これはおもしろかった。

ロシアものは全く詳しくないんだけど、ペレーヴィンはブルガーコフ、ストルガツキーの流れにつながるロシアン・ファンタスティカの継承者ということでよろしいか?始祖のゴーゴリも読んでおかないといけないなあ。。

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February 01, 2005

●悪魔物語・運命の卵

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ロシアというかソ連の文学作品は、トルストイやドストエフスキーを遠い昔に読んだのを別にすると、ストルガツキーしか知らぬ。そのストルガツキーの「滅びの都」を購入したついでにオビ文句がおもしろそうだったので、ブルガーコフの「巨匠とマルガリータ」(上・下)も勢いで購入。でも分冊ではちと高価ですぞ。

最初からそちらに挑戦しても良いが、読みやすいところからいきたいなーというのもあって探したところ、岩波文庫から「悪魔物語・運命の卵」という中編集がでているので、そちらを先に読んだ。知らない作家で、SFっぽいとも書かれていたので、はずれだと嫌だなーと思っていたが、全くそんなことはなく私にとっては大当たり、おもしろすぎる。

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January 24, 2005

●カーペンターズ・ゴシック

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正月以来ウィリアム・ギャディスの「カーペンターズ・ゴシック」を読むのに取り掛かっていたのだが、やっと読了。でも面白かったから良いのだ。ポストモダンというかその区分はよくわからんのだけど、ピンチョンのように「人生いたるところに陰謀あり」、というか、ナボコフのように「部分こそすべてである」というべきか、どちらもありなので、そういうのが好みの人はすんごく楽しめるだろうけど、自分で話を組み立てることのできない人にはちょっと無理だろうなと思った。そういう意味では読者をすごく選ぶ小説である。

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January 04, 2005

●三つのブルジョワ物語

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年末年始はみたいTVもないので、ドラクエVIIIと曲の修正と読書で終わったのだった。5日間短い!読書に関してはそろそろ何をいつ読んだかわかんなくなってきたので、時系列の読書録のページを作った。右のリンクにも入れておきます。

さて、ホセ・ドノーソといえば「夜のみだらな鳥」が有名で実際に悶絶するほどおもしろいんだけど、さすがに「夜のみだらな鳥」ほど期待しちゃいかんかなーと思いながら「三つのブルジョア物語」を読んだらこれまた悶絶するくらいに面白かった。

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December 29, 2004

●クレア

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ローレンス・ダレルアレキサンドリア四重奏の最後である「クレア」を仕事納めの後、喫茶店をはしごしながら読了。なんとか今年中に、文庫復刊前に終わったね。

第4巻の「クレア」はなんじゃろ?クレアの存在は全体の人々と愛を見つめる視線でありうるのだろうか?と「マウントオリーブ」の感想の最後で書いたんだけど、第4巻は、生者と死者の世界だったね。そういう意味ではクレアはダーリーの相手としての生者の代表として、またパースウォーデンやナルーズ、スコービーといった死者の想い出をひきずってその間に立つ巫女のような役割だったのかなあ。

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December 27, 2004

●2004年に読んだ本

去年から「読むぞ!」と再開して、月1冊ペースでしたが、今年はけっこう読んだかな、他にも一応推理小説などあるし。その分+仕事の忙しさで後半日々是音楽のほうは開店休業中になってました。まだ年末まで数日あるので、「アレキサンドリア四重奏」はなんとか終わらせたいと思う。。。が、スタージョンの「時間のかかる彫刻」とクイーンの「三角形の第四辺」を同時に読んでいるのでどうなることやら。除夜の鐘聞きながら読んでたりして。スタージョン、初めてかも。クイーンの「盤面の敵」を読んだことがあるがスタージョンを読んだことにはならんだろうし。さて、今年読んだ本をちょっと並べて、書いてみようかな。

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December 19, 2004

●マウントオリーブ

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ローレンス・ダレルの「マウントオリーブ」ですが、「エジプト4人衆」の第3巻です。だいたい「ジュスティーヌ」のときに、ぼく、ジュスティーヌ、ネシム、メリッサの愛の行方はいかに(昼の1時より放映中)みたいなのりだったのに、第3巻のタイトルは第1巻にでてこないマウントオリーブですから。もう技かけすぎでダレルったらいやん、って感じです。

第3巻では今までできて、なんでだろう?と思っていた事件のつながりが見えてきて楽しい。しかもパースウォーデンがどんどん重要になってくるし、ぼんやりダーリーはアレキサンドリアの関口巽くんになっちゃってるし。ただ、その自殺の部分はやはり謎があるなあ。そうそうパースウォーデンさんの盲目の妹初登場です。パースウォーデンが愛していたのは実は・・・ジュスティーヌが愛していたのは実は・・・。そんな中で印象薄かったメリッサが、実は愛というものの本質を最も純粋な形で突いているかもしれないのが考えさせられるね。

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December 18, 2004

●あの薔薇を見てよ

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エリザベス・ボウエンの「あの薔薇を見てよ―ボウエン・ミステリー短編集」を途中まで読んだ。ミステリー短編集とあるがミステリーとはち・が・い・ま・す・か・ら。どちらかというと英国ゴシック幻想に近い流れではあるが、かといって遠い話ではなく英国の生活の中の日常に潜む「不安」や「恐怖」なのである。

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December 05, 2004

●バルタザール

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ナボコフの作品を古書で収集中。汚くても積んでおくと安心する私です。

ローレンス・ダレルの「バルタザール」ですが、例の「エジプト4人衆」の第2巻です。あら、やっぱり「ぼく」はだめだめで、バルタザールおぢさんは冷徹な目で見ています。「ぼく」かわいそうですねえ。「ジュスティーヌ」ででてきた出来事や会話、日記や本のみかたがどんどん変わっていきますねえ。いやあおもしろくなってきました。やはり第1巻だけでは水晶の一つの面だけを見ていたに過ぎず、それだけではガラスとあまりかわりがないわけだけど、いくつかの切り口が現れると複雑な輝きを見せ始めるようなもんです。

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November 27, 2004

●七人の使者

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帰省中、金沢の書店にもいったのだが、まともな文学の本はほとんどない。小松のブックオフで初めてナボコフのハードカバーに出会ったのはなんとも悲しいような。品揃えでは一番がネットで二番がブックオフというのはちょっとどうかと思う。

さて、「アレキサンドリア」が長いので並列に読むには短編集が良いのだ。というわけで、ディーノ・ブッツァーティの「七人の使者」を読んだ。確か去年も今ごろ(もう少し前か)ブッツァーティを読んでいたような気がする。もっとも秋に似合うっていうわけでもないんだけど。

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November 24, 2004

●マルタン君物語

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だいたい購入してつんどくのは仕方ないけど、せめて出だしの5行くらいは読もうよ、って自分に説教したい。だいたいこの本5行も読めば、私の好みからいってはまるに決まっているのである。そうなら、10年以上前に読み終わっていたはずだよなあ。残念!というわけで、マルセル・エーメの「マルタン君物語」を読んだ。もっと早く読むべきであった。

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November 21, 2004

●ジュスティーヌ

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なんだか全然頭に入らない状態なんですけど、ローレンス・ダレルの「ジュスティーヌ」を読んだ。アレキサンドリア四重奏の1巻目です。アレキサンドリアのイメージがわかないし、文章の表現は頭からどんどん落ちていくし、愛についてもよくわからんので困ったのだが、最後の方になって、いろいろとつながってきました。

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November 01, 2004

●セバスチャン・ナイトの真実の生涯

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ナボコフの「セバスチャン・ナイトの真実の生涯」を読み始めたら、全然頭に入らなくてムロージェクの「所長」とかを先に読んでしまい、挙句には「アレキサンドリア四重奏」にまで踏み込んだんですが、セバスチャン・ナイトの著作のあたりから急に面白くなったので良かった。

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October 26, 2004

●世界終末十億年前

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最近レムの「ソラリス」が新訳ででたようだが、対抗するために?ストルガツキーの本を読もうと思った。なぜか私はストルガツキーの本をたくさん購入していて、しかもけっこう読んでいるのに、何一つ覚えていません。うーん、ということで「世界終末十億年前―異常な状況で発見された手記」を再読。

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October 22, 2004

●所長―ムロージェク短篇集

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僕たちの所長は優秀で、僕たちの所長は立派で、僕たちの所長の甥は頭が良くて、僕たちの所長はニシンのクリーム和えを頼んで、僕は所長と夜に出会って、共産主義はとてもすばらしく、人類はみな勤勉だ、そしてとっても楽しーい。

スワヴォーミル・ムロージェクというポーランドの作家の「所長―ムロージェク短篇集」を読んだ。未知谷という知らない出版社からだが、これがおもしろすぎて困っちゃう。2~3ページのショートショートが多いのだが、共産主義・社会主義を皮肉っているのだけど、今の日本の官公庁と思ってもなーんにも違和感ないところがすごいですね。どうも所長にいかりや長介、出納係に加藤茶、僕に志村けんをイメージしてしまいます。まあ今なら志村が所長かもしれませんが。これはポーランドのラジオ放送のシナリオだったようですが、こんなの放送できるんですね。

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October 18, 2004

●アウラ・純な魂

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本棚整理中。少しづつ載せていくつもり。このBlogの記録は、最近は物忘れが激しいので、自分の読書記録のために書いているのだが、見ていただいている人もいると思うが、だいたい私の書いているのは粗筋でもなく紹介記事でもないので、読んでない人が読んでも良くわからないんじゃなかろうかと思うのである。まあスタイルを変える気はないので、当面このままで。

さて、文学的なものはラテンアメリカ周遊中で、カルロス・フエンテスの「アウラ・純な魂」を勉強もせずに読んだのであった。これは良いぞ、怪しくて良いぞ。フエンテスに関しては、ラテンアメリカの人々の源の部分に関する問題意識と個人の源に関する問題意識がもろに表れてきて、ときにうっとーしい気になりますが、「純な魂」や「アウラ」はすんげーいい!と思った。

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October 13, 2004

●遠い女

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国書刊行会の文学の冒険シリーズで出版されている「遠い女」を読んだ。これはラテンアメリカの短篇のアンソロジーになっているのだが、特に幻想的なものが多いようである。これは良いです。Good!

特にコルタサルの初期の短編集「動物寓意譚」はまとめて翻訳されていないのでばらばらに読むしかないのだが、ここに5編入っている。これに岩波文庫の「占拠された屋敷」「パリにいる若い女性に宛てた手紙」を入れれば、結構なもんではなかろうか?

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October 07, 2004

●フリアとシナリオライター

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マリオ・バルガス=リョサの「フリアとシナリオライター」は翻訳を十数年待ちつづけてやっと出版されたのだが、やっと読んだ。そんなに待ったら早く読めよというところである。私はリョサをたくさん読んでいるわけではないのだが、リョサの小説は本当に好きだ。まじめに書かれているのも好きだし、これらの小説を読んでの感動が、本当に文学の本質的なものだと思えるからである。

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September 22, 2004

●バロック協奏曲

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アレッホ・カルペンティエールの「バロック協奏曲」を読んだ。最初はやはりカルペンティエール的文体に疲れるけど、ヴェネツィアに移ってからがめちゃくちゃおもしろい。さすが傑作といわれるだけのことはあると思った。が、傑作とかいうよりも、筒井康隆のジャズ大名ののりである。というか、筒井康隆の方がこれを読んで狂騒してまねたんだろうけど。

でも、その狂騒のレベルから新大陸と旧大陸の自我や奴隷と黒人の話、天体の中での地球というレベルまで話が入っちゃうのはすごいね。文学の繰り込み理論みたいです。昔、これを原作とした「バロック」つう映画をみたんだけど、あんまりわかってなかったかなー。もう一回見たいと思た。

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September 03, 2004

●「ケルベロス第5の首」の追加

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「ケルベロス第5の首」の追加検討録そうとう修正しました。自分的にはこのあたりで満足です。

注意!以下ねたばれあり。

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August 29, 2004

●ケルベロスの第5の首

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ジーン・ウルフの「ケルベロスの第5の首」を読みました。これは国書刊行会からの「未来の文学」として発刊。うーん、これは相当読み込まないとと楽しめませんね。叙述トリックについては、最近作品の質はおいといて新本格その他で嫌というほど見てきたのでもはや驚きはありませんが、各小説(3つの中篇からなる連作です)の主題は考えさせられるし(永遠の問題とはいってもさすがにちょっと古い気もするけど)、背景の構造がすばらしく、やはり傑作なんでしょう。

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August 25, 2004

●ウィンターズ・ティル(下)

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私の100kmマラソンみたいなもんでした。へろへろになりながら、なんとか読了です。ふぃー。しかし、「鎮魂歌」の不満で発火した私のファンタジー魂は、クロウリーの「ナイチンゲールは夜に歌う」でさらに燃え上がり、その火は「ウィンターズ・テイル」で物語内のNYに引火し、都市の破壊と再生の元に見事に鎮火したのであった。あー疲れた。いやしかし現代まれに見る物語性ですね。

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August 15, 2004

●夜の姉妹団

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某サイトを見ていて、クロウリーの短編が入っているのを知って、とりあえず購入を決定。池袋西武のリブロでは、いまだに?ヒラ積みでした。なぜに?

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August 08, 2004

●ウィンターズ・テイル(上)

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「冬のソナタ」がはやっていても、ひねくれた私としてはそのまま見る気になんないだろ?ということで、マーク・ヘルプリンの「ウィンターズ・テイル」の上巻を読んだ。いやあこういう洒落の為にも本は積んでおくものである。本来は下巻も読んでから書くべきなんだろうけど、このすばらしさを最近は「忘れる」ので、今メモしておくことにします。

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July 30, 2004

●ダヤン・ゆりの花蔭に

ミルチャ・エリアーデはルーマニア出身の宗教学者であると同時に偉大な幻想文学作家でもあるのだが、私はエリアーデ幻想小説全集〈第1巻〉〈第2巻〉を購入して破産した。これで安心して積んでおくことができる。。。エリアーデの幻想小説では「ムントウリャサ通りで」が有名だし、実際傑作だと思うが、今回は十年程前に読んでずっとひっかかっていた「ダヤン・ゆりの花蔭に」を再読しました。これらは〈第3巻〉に入るはずです。

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July 17, 2004

●ナイチンゲールは夜に歌う

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燃え上がったファンタジー魂をどうにかするために、ジョン・クロウリーの「ナイチンゲールは夜に歌う」を読んだ。うー、さすが、クロウリー、SFとファンタジーを掛け算したような満足感ですが、これ普通に読んでついていけるのかしら、とちょっと不安。

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July 09, 2004

●ほんやく本のススメ

最近忙しくて読書記録をだしてないのですが、そろそろ一冊読み終わるかなーと思っています。で、すみ&にえさんの「ほんやく本のススメ」サイト の読書量を見るとただただ羨ましく候。いや、忙しいと言いながらパチスロやっていたりというのもあるのですけどね。暑いし。で、上記サイトで上半期のベストを書いてみました。Blog からの抜粋なので、私の部分は新規に読まれる必要はないかもしれませんが、他の人のは参考になりますね。

で、そこには書けなかったのですが、ちょっと無謀な私の下半期積んである読みたいものリスト。

バルガス・リョサ 「フリアとシナリオライター」
スティーブン・エリクソン 「真夜中に海がやってきた」
ウラディミール・ナボコフ 「ロリータ」「セバスチャンナイトの真実の生涯」
リチャード・パワーズ 「舞踏会に向かう三人の農夫」「ガラティア2.2」
クリストファー・プリースト 「奇術師」
マーク・ヘルプリン 「ウィンター・テイルズ」
ジョン・クロウリー 「リトル・ビッグ」

さすがに「世界終末戦争」とか「サバティカル」、「アーダ」とかは無理だろうなー。いや、上に上げたものも実質は無理だろう。半分も読めればよいほうですか。その他に推理小説系があって、けっこう黄金時代のものを読みたくてバークリーの2編、ミルンの「四日間の不思議」、イネスの「ハムレット復讐せよ」などいろいろ読みたいが、とほほ。

しかし朱雀十五シリーズの新刊と京極夏彦の榎津探偵シリーズ新刊を買ってしまったので、やはりそちらが先になるのであろうと思われ。

June 07, 2004

●ヴァインランド

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ピンチョンの「ヴァインランド」をよーやく読み終わった。いやーやはりピンチョンはおもしろい。どうしたらこんな風に書けるんだろう。

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May 17, 2004

●愛その他の悪霊について

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世の中では世界の中心でさけぶのが流行のようであるが、うるさいのであんまり近くで叫んでほしくないと思っている。せめて世界の片隅でならわかるんだけど。。。いや、「自己愛をさけぶ」かな。まあ、もともと盗作的なタイトルではあるのだが。で、どうせなら、もう少し私向きな「愛について」の本を読んでみました。これはどちらかというと「世界のあちらこちらで、愛についてのたうちまわる」という本であります。「愛は成就されず、成就されるのは愛でないものばかり。」というオビの文句のほうがかっこよい。

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April 29, 2004

●隠し部屋を査察して

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カナダのエリック・マコーマックという作家の短編集である「隠し部屋を査察して」を読了。いや、これはすごいです。その歪んだ発想といい、ビジョンの具体性といい、着地点のない展開といい、これはとてもよいものですな。

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March 28, 2004

●ジャンピング・ジェニイ

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アントニイ・バークリー(Anthony Berkeley)の「ジャンピング・ジェニイ」を読む。というか、少し前に読み終わったのですが。バークリーは1920~30年代の推理小説の黄金期の作家の一人ですが、作品の邦訳は非常に少なかったのです。しかし、最近国書刊行会や晶文社から翻訳されたので、全体像を知ることができるようになりました。「ジャンピング・ジェニイ」は時期的には後期といっても良いのでしょうが、すでに推理小説としては「壊れた」作品です。

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March 21, 2004

●パロマー

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コズモポリスの反動でピンチョンの「ヴァインランド」を読み始めました。10ページも読むと、ああ、ピンチョンだあとうれしくなってしまうので、やはり私はこちらのほうが水にあう。のだが、出張に際して本の重さには勝てず、文庫本で途中まで読んでいたカルヴィーノの「パロマー」を同伴し読み終えたのであった。

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March 14, 2004

●コズモポリス

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ドン・デリーロ(Don DeLillo)「コズモポリス」を読む。劇のシナリオである「白い部屋」は読んだことがあるが、「ホワイトノイズ」や「マオII」「ボディアーティスト」が積んだまま。それから読めばよかったわけですが、ついつい新刊だったのとオビの紹介がかっこよかったので。

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March 12, 2004

●九百人のお祖母さん

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R.パワーズの「舞踏会に向かう三人の農夫」を読み始めながら、ちょっと挫折したので、R.A.ラファティ「九百人のお祖母さん」を久しぶりに読み直した。蛙さんと牛さんが流行っていますが、ラファティの場合は蛙さんと熊さんです。しかしラファティの爆裂ぶりは凄い。

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March 07, 2004

●フローティングオペラ

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サンリオSF文庫版のフローティングオペラ(ジョン・バース)を Book Off で発見。2,000円だったけど、次いつ出会えるかわからないので購入した。バイトの兄ちゃんが文庫本と値札を何度も見直していたけど、世の中には理解しがたいこともあるのだよ。十年程前に読んだのは、講談社版で京都市立図書館から借りたのではなかっただろうか?レターズを読むためには手元に必要だよね(と自分を納得させる)。

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February 16, 2004

●ドン・イシドロ・パロディ 六つの難事件

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ホルヘ・ルイス ボルヘス (Jorge Luis Borges), アドルフォ ビオイ=カサーレス (Adolfo Bioy Casares)による「ドン・イシドロ・パロディ 六つの難事件」を読んだ。最初は語り口も含めて楽しく読んでいたのだが、最後のほうは飽きたっす。

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February 11, 2004

●透明な対象

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ウラジミール・ナボコフ(Vladimir Vladimirovich Nabokov, 1899-1977)「透明な対象」読了。年末に「青白い炎」を読んだので、勢いにまかせてという感じ。

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●透明な対象

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ここでは、「透明な対象」の話者は誰か?もちと書いてみます。未読の方は読まないほうが良いかも。はずれているかもしれんし。

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February 07, 2004

●3つの Pavane

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キース・ロバーツの「パヴァーヌ」を読み終わりました。というわけで、日々是音楽のほうも、とってつけたように「パヴァーヌ」を2曲公開しておきます。クラシック曲として有名なのはフォーレやラヴェルのものでしょうが、やはりこの本であれば、イギリス、エリザベス1世時代のリュート曲でなければなるまいて。

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January 03, 2004

●青白い炎

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ウラジミール・ナボコフ(Vladimir Vladimirovich Nabokov, 1899-1977)「青白い炎」をやっと読み終わった。本当は2003年中に終えたかったのだが、なかなかそうはいかず。ナボコフは「ロリータ」ばかりが有名な気がするが、未読。私は短編集である「ナボコフの1ダース」ですら敗北しつづけてきたのであるが。「青白い炎」は実験小説といいながらなんのなんの、面白すぎる。

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December 02, 2003

●無知

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ミラン・クンデラ(Milan Kundera)「無知」を読了。クンデラを読むのは何年ぶりだろうか?前に読んだ「不滅」が1992年の出版のようなので、10年以上が過ぎている。だがしかし、ほんの2,3行読むだけで、「ああクンデラだあ」と幸せな気分になれるのは何故でしょう。

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November 14, 2003

●追跡

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アレホ・カルペンティエル(Alejo Carpentier,1904-1980)「追跡」を読了。活字もそれほど小さくはない150ページほどの中篇であるが、なんと読みにくい、なんとも入り込めない小説であった。

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●終わらざりし物語

指輪物語のファンの方へのご連絡。河出書房新社からトルーキンの「終わらざりし物語」(上・下)各2,200円が12月12日に出版されるようです。これはトルーキンの遺稿を編纂したもので、内容はこちらの 2003/11/12 Wed 「UT(終わらざりし物語)」上下巻12/12発売決定 No.432をご覧ください。

うーん、買っちゃううんだろうな。積んどくんだろうな。。。

November 12, 2003

●文庫本の整理

ダイエットと同様に明白なことは、読む量より買って積んどく量が多ければ、どんどん未読が増えることです。またハードカバー二冊ほど買ったので鬱。新刊ではないのですが、「舞踏会へ向かう三人の農夫」リチャード・パワーズと「ベンドシニスター」ナボコフです。いや、そろそろ品切れも近いかなーと思って。この微妙なタイミングが難しく、下手すると入手できなくなります。では出た瞬間に買えばよいのですが、そのときには、その頃入手不可能になりそうな本を買うと。

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October 31, 2003

●石の幻影、柔らかい月

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イタリアの音楽をいじっているのだから、イタリアの文学も読もう、ということである。しかし全分野は無理なので、趣味的にはどうしても幻想文学のほうへよろよろと傾いているのです。で、積んである本の中からディーノ・ブッツァーティ(Dino Buzzati, 1906-1972)の短編集である「石の幻影」を読了。

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October 20, 2003

●Xのアーチ

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スティーブ・エリクソンは米国の現在最高の幻視小説家です。今ごろ「Xのアーチ」をなんとか読み終わりました。陰陽師や京極夏彦の小説にあるように言葉が呪(まじない)であるとするなら、スティーブ・エリクソンの小説は最初から最後まで呪であるといえましょう。

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October 03, 2003

●通りすがりの男

フリオ・コルタサル(Julio Cortazar)はアルゼンチンの作家で、幻想的な短編の名手です。いや長編の「石蹴り遊び」も有名なわけですが。「通りすがりの男」(現代企画室)は1977年出版のコルタサルの短編集ですが、十年ぶりくらいで読み直しました。

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September 25, 2003

●ストーリーを続けよう

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ジョン・バース(John Barth)の第二短編集。やっと読み終わりました。玖保キリコの装丁にだまされると偉い目にあいます。

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September 12, 2003

●砂の本

ホルヘ・ルイス・ボルヘスの「砂の本」を読了。ボルヘスの小説は小説界の光学異性体のようなもので、同じ文字列で記述されていてもメタレベルの視点がない限り全く味も香りもしないので、なんだこりゃ?となるかもしれません。

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September 09, 2003

●サロン・ドット・コム

「サロン・ドット・コム」をぱらぱらと読んでいます。ピンチョン、バース、エリクソン・・・懐かしいねえ。

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