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CHASING THE DRAGON/John Wetton

にわかウェットン様信者たるもの、ソロもライヴ盤を入手しなければならない…とネット中をさまよう日々である。これが東京在住なら、ブートレッグ探しの旅に西新宿をさまようことになるのだが…まあいいか。
粗製乱売されているウェットン様のライヴ盤(しかもオフィシャル)の中で、世間の評判が良いのが1994年の東京でのライヴを収録した「CHASING THE DRAGON」だということで、早速聴いてみた。
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ライヴはアコギでのHeat of the Momentという、珍しいものから始まる。お約束のMCも早々に飛び出すが、日本語の発音がだいぶ良くなっているので(「サイコダヨ」ではなく「最高だよ」に聞こえる)、昔のようなチャーミングさは無い。コンサートのセットリストを見ると全18曲(含アンコール)のうち、この頃の最新アルバム「VOICE MAIL」から4曲、エイジアから6曲、U.K.から3曲、クリムゾンから3曲、それにソロでの曲が2曲…とウェットン様の音楽人生ヒットパレードのような選曲である。あんたソロなんだから、もうちょっと新曲演奏しなさいよっ!とつっこみを入れたくなるが、人間歳をとると日和ってしまうものなのだろうか。CDには、その中から15曲が収録されている。
この頃のウェットン様のヴォーカルは中年オトコの色気爆発であることは以前書いたが、このライヴでも絶好調。スタジオ録音モノと変わらない、いやそれ以上に声はすばらしい。たぶん1990~1994年頃が声もスタイルも絶頂期だったのではなかろうか。
その後は階段を転げ落ちる様に中年太り…を通り越しているのは皆さんご存じの通り。先日オフィシャルサイトでクリス・スクワイアと写っている写真を見た時には絶句してしまった。クリスも2003年のステージを見た時よりはるかに太くなり、これではトドが2頭状態である。1970年代はスリムなイケメンだったこのお二人、どうしてこんなに…(涙) それにしても、なぜにプログレベーシストは激太るのか?(除:ロジャー・ウォーターズ) ちなみに来る3月10日、ウェットン様がクロサワ楽器でサイン会(爆)をするらすいので、お暇な人はぜひお姿を拝見しに行ってください。

それはともかく、このオトコの色気ヴォーカルでU.K.やクリムゾンの曲を歌われると、何か変なのだ。Rendez-vous 6:02を小節のきいた声で歌われても…ねえ。どうやら彼は歌を歌うのが相当好きらしく(だいたいU.K.のエディ・ジョブソンと決裂した原因のひとつでもある)、Thirty Yearsではもうカラオケ状態。In the Dead of Nightはまあまあだが、バックミュージシャンがダメダメ。ドラムスが「ドスドス」「ボコボコ」と聞こえるのだ。あの軽やかな7拍子(4+3拍子?)が死んでいる。イントロのキーボードも切れが悪く、おまけにイントロ以外はほとんどきこえない。キーボード無しのIn the Dead of Nightなんて考えられる? なんだかウェットン様ヴォーカルの別の曲を聴いているようだ。
クリムゾンファンが泣いて喜ぶStarlessは、なんと歌メロだけ。だーかーらーウェットン様、カラオケじゃありませんってば。後半の強烈なリズムリフ(これも7拍子だ)が無いStarlessなんて、ただの演歌。バックのメンバーのうち、ドラムスとキーボードは某プログレバンドのメンバーらしい。へえ、それでこんなにドスドスしたスネア(たぶん)と、切れの悪いキーボードですか。
ドラムスの技術についてはよくわからないが、エディのキーボードリフ及びバッキングを弾くにはクラシックはもちろん、相当ジャズのセンスが要求されると思う。キース・エマーソンもそうだが、和音のシンコペーションを多用しており、うまく音を引っ張らないと間抜けな演奏になってしまうのだ。この辺は実際に弾いてみるとよくわかるし、クラシックピアノオンリー人間には大変辛いモノがある。エマーソン先生は自分の作る曲については全て楽譜を起こすらしいけど、音符では表現しきれない「タメ」みたいなものがあるんですな。

というわけでウェットン様が歌いまくる懐メロ大会ライヴ、星4つというところでしょうかねえ(満点は5つ)。やはり人間、適材適所ということで。甘い色気声は1980年代以降の曲向けであり、1970年代のウェットン様曲には合わないっす。淡々と歌っていただきとうございます。

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