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KEITH EMERSON BAND LIVE(その3)

今回のツアーで、キースは新しい楽器をマスターしてきた。その一つが、Hoedownで演奏したハーモニカ。

実は8月30日に開催された「Creation of Peace Festival」で、彼はハーモニカを吹いているのだ。しかも曲はZEPのWhole Lotta Love。この時にはなんとエディ・ジョブソン(私のVn版心の師匠)がヴァイオリンを弾いている。その映像を事前にキャッチしていたため、ハーモニカも特に驚かなかったが・・・。Hoedownは「レディース&ジェントルメン」のときのような、どーやって弾いているんだ!と言いたくなるような超スピードではなく、あくまでスタジオ録音よりちょっと速い程度。でもハーモニカの「おおスザンナ」、楽しませてもらいましたわ(w
そしてもう一つの新しい楽器が、秘密兵器・テルミンである。ちなみに現在テルミンはmoog社で販売されていることは、以前このblogで書いたとおり。moogつながりってことでしょうかねえ。還暦過ぎて新しい楽器に挑戦するあくなき音楽への熱意、しかと見届けましたぞ(爆)

Hoedownからはやりたい放題、と書いたが、この人の演奏はとにかくアドリブが多いので、最初から最後までやりたい放題である。つーか、最初から最後までスタジオ録音版と同じ演奏なんて、一つも無かったんじゃない?
YESはアルバムとまったく同じ演奏を再現する「形式美」のライヴだが、EL&Pもといキースは「形式美って何ですか?」といった感じで、あちこちアドリブをちりばめてくる。まあ、ロックのライヴってそういうものだけど。YESの場合は「これはスタジオ録音テープの切り貼りでしか作れないだろう」という音楽を目の前で演奏するからねえ。これはこれで聴いているほうとしては、目が点になっちゃうわけよ。
Karn Evil #9にはスコット・ジョプリンの「メイプル・リーフ・ラグ」が突然入ったし、曲の合間にもモーツァルトの「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」、Prelude to a Hopeはベースの音はそのままで右手は好き放題メロディー・・・といった感じである。
ちなみに私が覚えている範囲でクラシック関連のフレーズを挙げると、From the Beginningにはさらっとラヴェルの「クープランの墓」のプレリュードが入り、アンコールのFanfare for the Common Manにはドヴォルザークの交響曲第9番第4楽章、そして・・・Nutrockerはいつもの「くるみ割り人形~行進曲」だけではなく、こんぺい糖の踊り(へヴィメタル調)→行進曲→ロシアの踊り(トレパック)という豪華版。
このようにクラシックの曲を多少知っていると、ニヤッとさせられることがたびたび。ニヤッどころか、大大大好きな「クープランの墓」のフレーズが飛び出したときには、「私の愛が通じたわっ!!」と内心小躍りした、おバカな私(爆)

派手なパフォーマンスも相変わらず。
From the Beginningでドラム用ブラシでグランドピアノの弦をこすったり、Fanfare for the Common ManではOASYSの向こう側に行ってディスプレイを倒したかと思うと、出ました!バッハのトッカータとフーガを逆弾き。その後はリボンコントローラーを振りかざしてゴシゴシ。床に転がってゴシゴシ(w ちょっとだけお尻でもゴシゴシ(ww

そうそう、今回の観客はプログレのライヴらしく、ずっとみなさんおとなしく座っていた。しかし35分の長丁場Tarkusの最後の音が終わった瞬間、一斉に立ち上がる観客席。そして嵐のような拍手。スタンディング・オベーションってやつですね。私も、思わず立ち上がっておりました。ほんとにすごかったんだから。
その後のFanfare for the Common ManはASIAのライヴでも演奏された曲だが、やはり本家本元(カールは違うのか?)は一味もふた味も違う。ASIAでは各人のソロを楽しみ、こちらではキースのパフォーマンス付鍵盤技を楽しむといった感じ。この曲にはおなじみのRondo~Americaがあいだに入ったのだが、ハモンドにナイフは刺さなかったなー。残念!

鍵盤と格闘して、自由自在に操って・・・という言い方がぴったりのキースだったが、心配なことが一つ。それは右手の指である。
前日のワイドショーではマークとともに4分くらい演奏していたが、なんだか弾き方が変だ。コードはちゃんと押さえているが、それ以外では薬指と小指をほとんど使っていないのだ。こんな弾きかたしたら、指を傷めちゃうよ・・・と思っていたので、ライヴでも弾きかたを確認したかったのだ。
ちょうど彼の右手が見える席だったのでずっと見ていたが、やはり3本だけで弾いていることが多い。彼は1990年代前半に腱鞘炎が悪化して、右手の大手術を受けている。その影響が今頃出てきたのかなあ、と思ってみたり。
それを知ってか知らずか「ミスタッチが多い」だの「下手になった」だの、あちこちで書き散らかすバカが多いこと。薬指・小指をほとんど使わずに、あの高速パッセージが弾けるわけないじゃないか。楽譜どおり弾くとか、早く弾くとか、テクニックが云々は、クラシック方面の人にまかせておけばよろしい。ロックってのは、クリエイティブさかつオリジナリティの勝負だと思うんですけどねえ。
それはさておき、これからは手を自重して大事に使っていただきたい・・・と言いたいところだが、彼の場合プレイヤーかつパフォーマーであるゆえ、鍵盤を目の前にすると燃えるんだろうなあ。キースに「自重」なんて言葉は似合わないけど、ほんとに無理しないで手を大事にしてくださいね。

彼は自分のパートが無いときには、腕組みをしたり手を後ろに回してボニーラたちを見ていたのだが(私の目の前で!!)、その姿を見ていると彼も大人になったなあ、としみじみ。やんちゃ坊主のようだったキースも、還暦過ぎてやっと「大人」ですよ。この人に「老いる」という言葉は存在しないに違いない。

・・・さらに続く。

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