デジュー・ラーンキ ピアノリサイタル

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行って来ました、ラーンキのリサイタル。場所は兵庫県立芸術文化センター神戸女学院小ホール。しかし「神戸女学院小ホール」って名前は、スポンサーでもどうかと思うよ。ちなみに他のホールは「阪急中ホール」「KOBELCO大ホール」...ってそのままやん!
今回は来年のフィルハーモニア管に向けての予習も兼ねた芸文センター行き、かつケチケチ旅行をモットーとした。という訳で、往復夜行高速バスの0泊2日弾丸ツアー。金沢のバス乗り場までは自転車、というケチの徹底ぶりw

これを読んでいるそこのあなたは、デジュー・ラーンキというピアニストをご存知だろうか? 1970年代に「ハンガリーの三羽烏」としてコチシュ、シフとともに活躍したピアニストの一人である。他にはツィメルマンも人気があったらしいが、ラーンキの人気は抜群だったらしい。
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まあ、このアルバムジャケット見ればうなずけるわな。イケメンのはしり、ってところか?

いつしかコチシュは指揮者としてのほうが有名になり、シフは80年代にデッカと契約してバッハ弾きとして高い評価を受けるようになった...が、ラーンキは?どこへ行って何をしているんだろう?
そう思っていたが、ヨーロッパではソロや室内楽でずっと活躍しているらしい。2007年からはラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポンにも出演していた...ということを今更知った。

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で、リサイタル。キャパシティ400人という小さなホールだが、なかなか感じが良い。私の席は、最前列のピアノのほぼ真横(A-16)。そうです、ラーンキが弾く手やペダルがすべて見えるという超特等席。音はもうちょっと上の列(後列)のほうがいいと思うが、一挙手一投足、呼吸や鼻声まで聴こえたよw
この日のチケットは数日で完売。そのせいか弾く方はもちろん、聴く方もマナーが良く、演奏中はコトリとも音がしなかった。あ、ハイドンが終わってから入ってきた人がいて、ラーンキが「はよ座らんかい!」って感じでキッと睨んでいたけどね。

プログラムは
ハイドン: ピアノソナタ Hob XVI/49
ドビュッシー: 子供の領分
        版画
- 休憩 -
シューマン: クライスレリアーナ

一言で言うと「隅々にまで神経の行き届いた、美しい音」。ピアノだからどうやったって音程がぴったり合うわけがないんだが、「ん?」と思うような音が一音たりとも無いんですね。すごいわ...。
ドビュッシーの「子供の領分」は子どもが発表会で弾くような曲が並んでいるのだけど、このレベルの人がどう弾くのか非常に興味があった。で、ほんまもんのプロが弾くと、こうなるのか...。最初から最後まで澄んだ音で、あざといアーティキュレーションや子供だまし的なタメ(間合い)は全く無く、あくまでも計算され尽くした音で勝負。「グラドゥス・アド・パルナッスム博士」と「ゴリウォーグのケークウォーク」というまさに子どもピアノの発表会常連曲は、ちょっとアップテンポで軽やかかつ上品に、でもグルーヴしてたぜw
しかしこの日圧巻だったのは、休憩後の「クライスレリアーナ」。1曲めから、この曲の世界に引きずり込まれちゃいましたよ。この曲は8つの小曲から構成されている、シューマンによくあるパターンの小品集。この8つは急-緩-急-...と並んでいるのだが、アップテンポの曲を「これでもか!」とばかりに速くして、静かな曲との対比を出す演奏が多いんだよね。おいらはそういうの苦手。アンタが上手いのはわかったから、落ち着いて聴かせてくれ、と言いたくなる。
この日のラーンキは、その1曲めから私のツボにぴったりハマる速さ、そして左手バスのスタッカートの具合(←これ、結構自分のポイント)。あっという間に引きこまれて、大好きな7曲目もシューマンらしい激しさとともにあくまでも美しく(←これ、バキバキ鍵盤叩く人が多い)、気がついたらラストの8曲目。ああ、もう終わっちゃうんだ...と、あの交響曲第1番の第4楽章に引用されている旋律を聴きながら、ぼんやりと考えた。

終演後はなんとサイン会あり。ラーンキ様、ファンサービス良すぎるわ...。私は「サインはどうでもいい派」だし、販売されていたCDも既に持っているものだったので購入せず、ちょっと離れて写真をパチリ。
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この人還暦過ぎたのに、昔のイケメン時代の面影そのままの素敵なおじさま。昔のクルクル巻き毛茶髪はマッシュルームカットのロマンスグレーになったけど、細いんだよ!
タキシード姿も細いなあ、と思ったけど(ぴったりしたスーツは弾きにくいしね)、黒のTシャツとパンツ姿で出てきたその姿、おいらまで韓流スターの追っかけオバさん化して「ラーンキ様~(はあと)」になりそうでしただ。ソレに比べて、コチシュやシフは...(以下略)

大大満足のリサイタルだったけど、1つだけ「あれ?」と思ったのが、ピアノ。1曲目のハイドンで、何か妙な残響っぽいものが聴こえるのだ。え、何これ?と思っていたが、ドビュッシーの版画あたりではほとんど聴こえなくなった。休憩時間、隣の女性2人が「ピアノ、ちょっとかわいそうだったね」と話しをしている。空調を効かせ、それに合わせて調律してあったにもかかわらず、開始直前にたくさんの人が外から入ってきたからではないか、と。その日外は結構暑かったし、湿度もあったからねえ。
...と思ったら、調律師が出てきて、軽く調律。やっぱり弾いている本人も、おかしいと思ったのね。てか、ピアノって繊細な楽器なんだなー。いつもはヴァイオリンを手にしているので、場所や湿度、温度によって音の響きが全く変わることはよくわかっているのだけど、ピアノは木の部分が多いし、ハンマーなんてフェルトだもんねえ。こんなに変わるのか。

そうそう、何の気なしに調べたら、2年前のツアーではやはりメインにシューマンを演奏しているんですねー。しかも幻想曲。ギャー、行けばよかった!と思っても後の祭り。あんなバカ高くてうるさい演奏のポリーニに行かず、こっちに行けばよかった(泣)
ラーンキ様はシューマンがお得意なのでございますか?と思ったら、世の中に出たきっかけはシューマン国際コンクールの優勝だったらしい。その後、外貨稼ぎのためにこき使われたwのだけど、なーんだ、シューマンは得意技ってことですね。
次回来日するときには、メインはソナタ第1番でよろしく! ピアノ協奏曲をやってくれたら、仕事サボって聴きに行きますから!!とSchumann addictの私は、心から希望するのでございます。

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今回のチラシがこれ。なんちゅうコピーや、と思っていたのだけど、聴いた後は本当に思えるんだよねえ。ま、聴く人によっては「フツーすぎて、何がいいのか全然わかんない」とも言われそうだけどねw 


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このページは、しづが2012年10月 4日 21:55に書いたブログ記事です。

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