翌朝は晴れ。テントは内外とも放射冷却現象による夜露で、水滴がびっしり。さて、今日はどうしようか。このままテントを担いで帰るのはあんまりだ。かと言って、爪が割れてしまったので、重い荷物を持って歩くのは躊躇してしまう。
昨日ワインをくれた彼女と話をしたら、今日は蝶ヶ岳から常念へ向かうという。昨日・一昨日は涸沢でステイしたらしい。「北穂か奥穂には登ったの?」と聞いたら、「全然。真ん中の日は涸沢でぶらぶらしていました」とのこと。涸沢の感想は「とにかく暑かった」だそうで、なんのこっちゃよくわからない。
いろいろ考えた末、もう横尾でもう1泊することに。そうしたらテントをこのまま置いていけるので、荷物は軽くて済む。横尾から日帰りで帰って来れるのは、やはり蝶ヶ岳か涸沢だよなあ...というわけで、最初の目的地である涸沢を目指すことにする。余裕があったら最終目的地の北穂に向かうか。
横尾から1時間で「橋」にたどり着く。今日はザックが軽い(と言っても雨具や非常食・水1.5Lくらいは背負っているので、5〜6kgくらいはある)ので、さくさくと歩いたが、昨日はこの道がなんと長く感じられたことよ。坂になるたびに立ち止まりながらゼエゼエ言っていたような...。で、ここからが「登山」の領域。
橋からは急な上りが続く。これは昨日の状態では無理だったろうなあ、と考えながら黙々と足を動かす。頭の中ではなぜか、シベリウスの交響曲第2番の第1楽章の第1主題が延々とリピート。えー、6番だよ6番。...と思っても、なぜか繰り返されるのは2番。謎だw
途中で50歳代半ばのご夫婦と、抜きつ抜かれつ状態となる。さらに登っていくと、そのご夫婦と下ってきたおじさんが話をしていたので、私も休憩がてら話に混ざる。なんでもおじさんは北穂高岳へ行ってきたそうだ。「ほとんど壁に張り付き状態、延々と3点支持が続き気を抜けない」だったそうな。...私、そんな所へ行くんですか?
するとご夫婦も「今年は奧穂へ行くつもりだけど、北穂よりはマシだって聞いて。北穂は去年登ったけど、あんな所で落石があったら避けられないわー。運よ、運」。マジっすか...。
さんざん脅された(爆)あと、少々ブルーになりつつも涸沢へと向かう。涸沢小屋と涸沢ヒュッテの分岐点まで来れば、あと15分位。先程のご夫婦によると涸沢ヒュッテのバルコニーとおでんが有名とのことだったので、涸沢ヒュッテへ。
で、涸沢ヒュッテのバルコニーから撮った写真。左は奥穂方向で、穂高岳山荘が写っている。真ん中のとんがりは、涸沢槍。右下の建物が、涸沢小屋。
で、涸沢のテント場。確かにさえぎるものが何一つ無いので、暑いだろうなあ。しかも下は石だから、石焼状態(爆) 紅葉の時期には、ここにテントが500張だとか。女性用トイレ待ちが30分だとか。どひー。ディズニーランドかよw
私が登ろうとしていた、北穂高岳方面。この写真ではたいしたことないように見えるが、涸沢からみると壁ですよ、壁。そりゃあ涸沢とは標高差600mくらいあるからねえ。おいらは壁登りの趣味はないので(楽器弾きは手と腕に支障があることは避けるのだ)、さっくり帰ることに。暑いのでおでんはやめて、涸沢ヒュッテのマンゴーソフトを食べ、さあ下山だ。
荷物が軽いので、爪が割れた左足にも今のところ支障なし。さっきのご夫婦いわく今晩の天気は「雨ところにより雷雨」らしい。なら予定変更して、早く横尾に戻れたらそのまま上高地まで行ってしまおうか。横尾には13時前に到着。やはり夜は雨らしいので、このまま戻ろう。
ということで、さっさとテントを片付けて上高地へ。15kgを担ぐと、やはり足にこたえる。徳沢のテント場が非常によさげなので、疲れたこともあり「ここで泊まるか...」と思ったりもしたが、雷雨の中でのテン泊を想像すると足は自然に上高地へ。この徳沢ー明神間はもうヘロヘロ。明神で激甘缶コーヒーを飲んだら、かなり復活。りんごはもう無かった...。
上高地バスターミナルは観光客でいっぱい。土産物屋を冷やかす余裕もなく、さっさとバスに乗り込んで平湯へ。平湯の駐車場でポツポツと雨が降ってきた。まあ帰ってよかったということかな。
山登り好きにはこよなく槍・穂高(および涸沢)一帯を愛する人が多いのだが、「テントでゴロゴロ派」にとっては、あまり萌えるところはなかった。次に行くことがあれば、徳沢でテントを張ってゴロゴロだな。その時はビール持参で行かなくては。
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