V.アシュケナージ父子のピアノデュオリサイタルへ行ってきた。どちらも名前の頭文字がVなので...いや、本当は2人とも同姓同名なのである。
で、息子のほうはウラディーミルの愛称である「ヴォフカ」を使っているらしい。クラリネット奏者の次男坊は「ドミトリ」だったよね、確か。
今回はすべて2台のピアノによる曲ばかりで、中にはヴォフカが2台ピアノ用に編曲した曲もある。ウラディーミル・アシュケナージ(とーちゃんの方)は指にいろいろと支障があるらしく、リサイタルは辞めて録音のみの活動にする、ということは以前から耳にしていた。商売道具に支障があれば、そりゃ無理だわな。でも一度はソロの生ピアノを聴いてみたかったなあ。なんたって私は四半世紀以上のファンですから。この人のピアノ(あの頃はLP→カセットテープだった)を聴いて、音楽を始めたようなものですから。
前半のプーランクの「2台ピアノのためのソナタ」やラフマニノフの「組曲第1番 幻想的絵画 Op. 5」は初めて聴いたが、ラフマニノフの組曲がとてもいい曲だった。リサイタルの前日に発売されたCDを会場で売っていたので着いてすぐに購入したが、このCDの中にはちゃんと入っている。
CDのタイトルが「Russian Fantasy」だからね。ロシアものばかりの、ピアノデュオアルバムっす。
後半は有名曲パレード。ムソルグスキーの「はげ山の一夜」の2台ピアノ編曲版やラヴェルの「マ・メール・ロワ」(これも2台ピアノ編曲版)、最後がラヴェルの「ラ・ヴァルス」。
特によかったのは「マ・メール・ロワ」。こういう曲になると、テクニック云々ではなく音質その他で勝負だね。
で、とーちゃんのピアノの音のなんと美しいこと! この人のピアノは丸っこい音がするのだが、それはずっとDECCAの録音のせいかしらん、と思っていた。ここ最近リリースされたバッハ(平均律、パルティータ)がそのいい例かと。しかし生で聴いても、キンキン響かない丸い音がするのだよ。無駄な響きがないというのは、本当にストレスがたまらなくて素晴らしい。ピアノって平均律だから、無神経に弾かれると超有名プロでも耐えられないざんす。
客の入りは7割くらいだったが、皆結構気合が入っていたような。相変わらず、音楽関係知り合いの顔もチラホラ。しかし「マ・メール・ロワ」という繊細な曲で、咳や鼻すすりは止めていただきたい。飴やティッシュを用意しておけよ(ティッシュは当然鼻を押さえるのみ許可)。
リサイタル終了後は毎度おなじみのサイン会だが、今回はCDを買った人のみとのこと。へへ、おいら買っちゃったよ〜んとロビーへ向かうが、そこには予想をはるかに超える長い列が。せめて写真くらいは...と思ったものの、待っていてもなかなか出てこない。というわけで、御本尊様の写真なしです。
今回のリサイタルで驚いたのが楽譜。とーちゃんは昔ながらの紙の楽譜だったが、ヴォフカ氏が使っていたのはiPad。その情報は既に手に入れていたのだが、ほんとにiPadだよ。というわけで、譜めくリストはひたすらボタンを押していた。紙をめくるよりははるかに楽だとは思うけど、どんなもんやろか?
とーちゃんは左側(大屋根がある方)、ヴォフカ氏は右側で弾いておりました。
家へ帰ってCDを聴いたが、ラフマニノフはリサイタルの演奏のほうがはるかに良かったっす、はい。ついでに言うと、ラヴェルの「ラ・ヴァルス」も。
もう聴けないだろうと思っていたアシュケナージの生ピアノ、ソロじゃないけど聴くことができて、まあ満足。派手なテクニックやアーティキュレーションで主張することなく、徹底的に考えぬかれた「音」が聴けて、ほんとによかったよかった。
興味深いネタ、満載ですね。
今回は一つだけ。
2週間前、自宅に帰ったとき、家人いわく「アシュケナージっていう人有名な人じゃないの?」だって。
「当たり前じゃない!! 今はぎこちない指揮しかしないから、コンサートでピアノを聞く機会はなかなかないんじゃないの? ところで何? アシュケナージがどうしたの」ときいたら
「新聞にデカデカとのってるよ、金沢でコンサートがあるみたい。こんな直前でも広告をうたなきゃならないなんて、そんなにチケット、余ってるのかな。」
「。。。。。」
7割だったわけね。
どもー。
今回は1階の真ん中よりちょっと前くらいの席を確保し、音響的には万全の体制で行ったのですが、私の席よりも後ろにはちらほらと空席が見られました。2階もそれなりだったのではないかと。
まあ気合の入っていない客が多くてフライング拍手など発生するよりは、聴いている方はよっぽどいいのですけど。興行的には…w
どうでもいいけど「ぎこちない指揮」に笑わせていただきました(・∀・)
(でもロイヤルストックホルム管とのシベリウス6・7番はよかった。特に7番の最初のコラール風Adagio部分は、目まいがするくらいステキ。)