アンドラーシュ・シフ リサイタル(その1)

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3連休の最終日、名古屋でアンドラーシュ・シフのリサイタルを聴いてきた。
「いやはや、すごいものを聴かせていただきました...」の一言に尽きる、そんな素晴らしいリサイタルだった。
今日のリサイタルは名古屋のしらかわホール。座席数700弱のホールでシフのピアノを聴けるというので、先行予約のために「しらかわメイト」という要年会費(しかも2014年3月末で終了)の会員になってしまったorz
連休初日には神奈川県立音楽堂でもリサイタルがあったためハシゴしようかとさえ思ったのだが、さすがにそれだけの財力が無く中止。2日続いているのであれば1泊して横浜→名古屋と行くつもりだったが、間に1日あるからねえ。しかも横浜と名古屋ではプログラムが違うんだよな。横浜はメンデルスゾーンとシューマン。シューマン、聴きたかった...。

で、23日のプログラムは以下のとおり。オール ベートーヴェンのプログラム。

・6つのバガテル Op. 126
・ピアノソナタ第32番 Op.111
  -休憩-
・ディアベリのワルツによる33の変奏曲 Op.120

うーむ、なんたる渋いプログラム。実はこれ、ある共通点がありまして。Wikiで「ベートーヴェンの楽曲一覧」を見ていただけるとお分かりになるかと思うが、ベートーヴェンのピアノ独奏曲を「ピアノソナタ」「変奏曲」「その他のピアノ独奏曲」の3つに分ける→各カテゴリーの作品番号ありの最後の曲を見る→この3曲がある、というわけ。

実は「ディアベリのワルツによる33の変奏曲」(以下、「ディアベリ変奏曲」と略)には思い出がある。今を去ること13年前、アメリカでアルフレッド・ブレンデルのリサイタルに行ったのだが、その時のメインがこの曲。バルコニー席の2階で聴いていた自分は、深く深く眠り込んでしまい、気がついたらもう終わりの方だった...。あの日のD.C.は4月上旬だというのに30℃超えで、暑かったなあ(遠い目)。
思い出というより黒歴史だがw、そんな訳でディアベリ変奏曲は今でも長いだけで何がいいのかさっぱりわからず、シフのアルバムがリリースされるまで聴くことすら封印状態だったのだ(爆)

20140324.jpg
今日の席は真ん中よりちょっと前、左側。先行チケット発売と同時に慌てふためいて買ったこの席はかなり良くて、音ももちろん、シフの右手をずっと見ることができた。
ちなみにこのピアノはベーゼンドルファー。あとで調べたところによると、しらかわホールにはスタインウェイD-274、ベーゼンドルファー・インペリアル、ヤマハのCFIII-Sがあるそうだ。

ステージ上に現れたシフは、いつもと同じ黒の詰襟の服装。今気がついたけど、サロネン様とちょっと似ているなあ。ちなみにサロネン様のステージ衣装w、裏地がオレンジというところが何気にお洒落。サロネン様はわりと小柄だけど、シフは思ったより大柄。てか、西洋人の平均くらいか?

で、6つのバガテル。
CDではフォルテピアノを使って弾いており、ピアノとは違った雰囲気の音だったが、今日の音もちょっとそれと似ている。これ、モダンピアノだよね...。ffでも柔らかめの音はベーゼンドルファーだからかな、なんて思っていたら、とんでもない大間違い。

6つのバガテルが終わっても舞台袖には下がらず、一度立ってからそのままピアノソナタ第32番へ。始めのEs-Fisの音を聴いて、ぶったまげ。さっきのバガテルと全然違うじゃないすか。違うピアノか?(んなわけない)と思ったくらい、音質が違う。全然違う、鋭い、けど音に濁りが全くないのはさっきのバガテルと同じ。
元々力勝負のようなピアノの音がダメなのだが、最近それに輪がかかってきたような気がする。「これは弦楽器の耳になってきたか、はたまた年のせいか」と考えていたところだったが、上手い人が弾けば強烈なffでもすんなり耳に入るんですねー。てか、平均律の鍵盤楽器でぐわんぐわん叩かれてもねえ...。3年半前にサントリーホールで聴いた、某有名ピアニスト(チケット代はシフの2倍)のことを思い出してしまったよ。いや、本人は計算しているんだろうけどね。
各音のバランスもさることながら、音色の使い分けがすごい。同じppでも、柔らかい、硬め、くもった、クリアーな...と、弾き分けているのが明らかにわかるのだ。「音色」とはよくいったもので、まさしく彩度が違うという感じで、「多彩」という言葉がぴったり。そのおかげで、真夜中に家に着いてから楽譜を引っ張り出して「こことここはほとんど同じ音形だけど、なぜ音質を変えていたのか?」などと調べる羽目になってしまったw
そういうところからも、彼の演奏における解釈の一端(ほんの入口だけど)が見える気がする。CDでも演奏は堪能できるけど、音色の使い分けはCDじゃちょっと掴めきれないねえ

32番の最後の音を弾いたあと、シフは鍵盤の上に手をかざしたまま十数秒、最後の音の余韻が消えるまで立ち上がろうとはしなかった。客席もしんと静まり返ったまま。彼が立つと同時に、割れんばかりの拍手。
はー、おいらこれでもう満足だよ...と言いたいが、そうは問屋が卸さない。休憩後は今日のメイン、ディアベリ変奏曲。さあ、寝ずに50分をクリアーし、この曲に対する苦手意識とおさらばできるのか?!

(続く)

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このページは、しづが2014年3月27日 21:53に書いたブログ記事です。

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