久しぶりに筒井康隆氏の小説「ヘル」を読んだ。「邪眼鳥」以来だろうか?時空の捻じ曲がり方やつながり具合は良くできているのだが、なんだか趣向には既視感がある。もちろん同じ趣向の小説がいくらあっても良いのだが、1作ごとの好みがすべてですが、今回は全体のリズム感とかおわりかたとかちと好みに合わない。前半の広がり方と後半の収束具合のレベルの合わなさもそういうものかもしれんが、もう少しひねってつながったほうが好きだ。また七五調の歌舞伎仕立ては登場人物ともあいまって、趣向ではあるが全体感として統一されているともいえない気がする。
この手のものではワタシとしては「驚愕の曠野」の凄惨な詩情が大好きで、続いて「邪眼鳥」であろうか。