ワタクシ的には、「宝島」はアニメの「どうぶつ宝島」、「ジキル氏とハイド氏」ももちろん知っているけど、スティーヴンスンの文章を読んだかといえば定かではなく、子供向けの抄訳だったような気もするので、これが初めてのスティーヴンスンといってよいのだろう。で、「新アラビア夜話」は「千夜一夜物語」を下敷きとしているのですが、19世紀ロンドンの都市自体が陰謀や謎を抱える不可思議な街として描かれているのが好きです。そう、今年観た映画の「シャーロック・ホームズ」のように、この頃のロンドンってやはりなんかありそうな気配がいい。
内容的には大きく2つの話がそれぞれ語り的に3+4に分かれていて、全部で7つの話が入っているのだが、それぞれの(分かれているほうの)話の主人公がそのたびに何か不思議な事件に巻き込まれて、それがそれぞれの裏側で大きな筋につながってくるという形式になっています。もちろんそういう仕組みはすぐわかるようになっていて、その語りと主人公の動きや驚きを楽しむ(すなわち読者のほうが神の視点に近いわけです)ものだから、くすくす笑いながら読むのが吉。でもそれぞれのサスペンスの盛り上がり具合も楽しめます。登場人物の軸としてはボヘミアの王子フロリゼルがいるのですが、その出し方がおもしろかった。また19世紀的なものの考え方や正義感もふむふむ感じてしまいます。まあ人間は精神的には退化しているよね、きっと。
「新アラビア夜話」には続きとして「臨海楼奇譚」、「続・新アラビア夜話-爆弾魔」もあるようで、直接的につながっていないようだし、また語りの設定も違うとは思うけど、読んでみたいなあ。
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