音楽の世界にには「~の主題による変奏曲」があったり和歌の世界には元歌どりがあったりで、過去の作品を織り込んだものを楽しむには、やはり原典のものを知っていた方がより楽しめることは確かだ。というか、後のほうの作品になるとそちらの方に主題があって、作品自体の内容は普通だったりすることもあるけど。
「神器―軍艦「橿原」殺人事件」においては、「白鯨」を下敷きにしながら「黒死館殺人事件」風味を加えて、夏目漱石的文体をちょっと振りかけて、おまけに「虚構船団」の香りも少々。テーマ的には過去の「グランドミステリー」や「浪漫的な行軍の記録」からも持ってきて、ソナタ・フーガ風にしあげた交響曲といったところか。そういったところを前と似ているからダメというかそれを楽しむのかということですが、私は楽しめるので問題なし。ただ、自分は非常に楽しく読んでいるけど、人によっては無理だろうなあと思う。
現在の日本人のあり方や問題は太平洋戦争や明治維新からの病の部分も大きいと思う。そのあたりについては、下巻を読んでから書きたい。
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