ウッディ・アレン監督のブルージャスミンを観た。いや、ケイト・ブランシェットのアカデミー主演女優賞は当然だと思ったです、はい。
ニューヨークの上流階級として暮らしていたジャスミンが、夫の破綻で西海岸に住む妹のジンジャーのところに転がり込む。このジャスミンが虚言癖があるダメ女で、見栄と虚構でどんどん落ちていく。。。
と、見えて、昔の華やかな頃(これはこれで痛い)と現在の妹宅での痛い暮らしを交互にみせることで、嘘つきのお金大好き女かと思わせておいて、徐々にあれっと思っているうちに、最後で昔の夫が捕まった(ひいては自分の転落することになった)原因の行動をみせてちゃぶ台返しをするというきつい映画です。もっともそんなこと気にしないでみている人の方が多いだろうから、壊れちゃった最後のジャスミンを笑えるか、それとも固まってしまうか、自分はどちらだろうと考えると後者なんだろうなあ。でもきっと少数派なんだろうなあ。。。
監督の視線からは、ジャスミンと対称的な妹のジンジャーやその彼などもどちらも嘲笑的な位置にいるわけで、その意味では監督はどちらも同等に「痛い」ように表現しているのであるけれども、観客の多くは妹側の視点からみてジャスミンを笑えるようにできていて、きっとこの映画でジャスミンはなんて馬鹿な女なんだ、と最後まで笑えた人は、見えていないあんたたちも十分「痛いよ」ということなのだろうと思う。このあたりはケイト・ブランシェットの演技がとにかく凄いし、ウッディ・アレンの残酷さもまたすごい。
最後にいくに従って、ジャスミンは単にお金や地位が好きなわけでもなく、世の中に純粋な愛があると信じている意味での馬鹿女である(もちろんその先の行動には虚言癖や深い損得なしの行動、酒やクスリへの逃亡もある)ことがわかるんだけど、現実に折り合いをつけて嘘を日常として暮らしている人と比べて、あんたは笑うことができるのか、とつきつけてくるウッディ・アレンはやはりただものではないのう。だからやめられない。
なお、パンフレットを含め感想や批評はとんちんかんなものも多いので笑える。特にこの映画を観て「生きていることは悪くないと思わせる名作だ」と某脚本家が書いていたのには大笑い。正反対だろう。「生きていくことは自分の何かを折り曲げて形を無理やり変えて周囲にあわせていくしかない悲しいことである」
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