ベートーヴェン以来、交響曲の第5番といえばまさにそれぞれエース級、なんだけど中には心に優しい5番もあります。レイフ・ヴォーン=ウィリアムズも9曲の交響曲を書いたけど、戦争への不安が高まる1938年からドイツ空軍による空襲が続く1943年にかけて作曲されたこの曲は人間の持つ平和への可能性への祈りを感じる。
レイフ・ヴォーン・ウィリアムズは、イギリスの作曲家ですが、通常RVWと略されます。作品番号じゃないよ。名前のRalphは、通常のラルフではなく、本人が古風な発音のレイフにこだわっていたそうです。RVWはいろいろな種類の曲を書いていますが、作曲した交響曲は王道の9曲であります。その9曲はカンタータ風あり、激しいものあり、穏やかなものあり、映画音楽からのものあり、叙景的なものありとバラエティに飛んだ世界を構築しています。
中では5番が好き。有名さからいうと「海」とか「南極」とかだし、激しさだと4番とか6番があるけど、5番が好きである(2番の「ロンドン」は捨て難いけど)。戦火激しい中で、このような曲を作曲したのはいかなる気持ちであったのだろうか。せめて人間の心の中には平和を祈る気持ちがあるのだとの信念なのだろうか。RVWに限らず、もっとも心に平穏な祈りの交響曲ではなかろうか。3番よりはこちらのほうが「田園」という名称に似つかわしいのでは、と思ってしまう。曲的には第1楽章がプレリュード、第4楽章がパッサカリアと名付けられていたり、複調的な構成による擬古的な印象が安らぎにつながるのかも。第3楽章のロマンツァの旋律で泣いて、第1楽章の主題が戻ってくるところでまた泣ける。なお、この5番はシベリウスに献呈されています。
RVWの交響曲演奏はプレヴィン/LSOの全集録音が有名かもしれないけど、私は新録音のプレヴィン/ロイヤル・フィルのものではまった。テンポとかは私はこの演奏が基準になっているのです。第3楽章のロマンツァの旋律で泣いて、第1楽章の主題が戻ってくるところでまた泣ける。この頃TELARCは良録音で有名だったなあ。
A・ディヴィス指揮BBC交響楽団によるものは交響曲全集6枚組で持っている。ケースが特殊でCD4枚組用の箱だけれど、開いた中がさらにもう一段開いて表裏に2枚装着できる×2なので、中央の2枚とあわせて、6枚入るのであった。丹念に演奏されているので、これでもかまわないけれど、プレヴィンに慣れていると出だしが少し遅めだ。今は安くなっているけど、私が購入したときは高かったのが難点か。ストレス発散買いだったのだ、きっと。
スラットキン指揮フィルハーモニア管弦楽団のものも最近セットででた交響曲全集であるが、めちゃくちゃ安い(Amazonは高いなあ)。演奏録音も悪くはないので曲を知るには問題なし。5番に限らず全体的に快速な印象をもっている。5番もすっきりした演奏だけど、この曲に関してはすっきりすると思い入れが入らなくなってしまう。他の激しい曲には向いているかもしれないので、他の番号も聴きなおしてみよう。
手元のCD
- プレヴィン指揮 ロイヤル・フィル
- A・ディヴィス指揮 BBC交響楽団(全集)
- スラットキン指揮 フィルハーモニア管弦楽団(全集)
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