エイトル・ヴィラ=ロボスはブラジルの作曲家です。超多作家で、12曲の交響曲、17曲の弦楽四重奏曲といった作品から、民俗音楽風の9曲の「ブラジル風バッハ」、14曲の「ショーロス」など、実に1千曲近くに及ぶ膨大な作品を遺したのであります。
ギターを弾く人だと、練習曲などで有名。12番とかずるりずるりとかっちょよい。で、それらも良いのだが、やはり印象的な「ブラジル風バッハ」から選んでみました。「ブラジル風バッハ」は、第1番から第9番までありますが、それぞれ編成が違う。オーケストラ編成だったり、ピアノ協奏曲風だったり、室内楽的なフルートとファゴットだけだったり実に多彩です。しかもタイトルの通り、ブラジル民俗音楽的な素材を対位法や変奏ででやっちまおうという、かなり意欲的かつ冒険的な作品群であります。が、ゲンダイ音楽の実験とは異なり、ここには息の通った活き活きとした作品になっています。
中では8本のセロという変態的な編成の第1番とそれにソプラノを加えた第5番が結構有名かもしれないけれど、個人的に一番好きなのは、弦楽合奏による第9番であります。前奏曲とフーガの形式で書かれていますが、前奏曲のなんとも清明な雰囲気がたまりませぬ。また、変拍子なフーガがこれまたたまらん。11/8拍子が続くので、複合拍子ではあるのですが、実際は2+3+2+4ということですか。こういう拍子をリズムに乗って演奏できるかどうかが難しいし、しかもフーガ。楽譜持ってるし、日本的には著作権はもう切れたはずなので、これもなんとかしたいのう。。。なお、9番には無伴奏合唱版があるのですが、そちらよりはやはり弦が好きかも。
ユーリ・トゥロフスキー指揮イ・ムジチ・ドゥ・モントリオールはスカルコッタスでもお世話になったけれども、さすがに弦楽合奏団で切れが良い。録音もすっきりとして好みです。前奏曲のボンとでだしの和音から泣けてたっぷりの下降音階でもうヒト泣き。フーガでは一転しゃきっと鮮烈な良い感じだ。CD自体は南米の弦楽合奏曲集のようで、ヒナステラやエヴァンジェリスタの曲も入っています。ヴィラ=ロボスがもう一曲入っていて、この「弦楽のための組曲」のアンダンティーノもトロケルようでよいけど、エヴァンジェリスタの曲もおもしろい。
エンリケ・バティス指揮のものは、「ブラジル風バッハ」の全集(+ギター協奏曲)の3枚組です。バティスというと爆演をイメージされるかもしれないけど、ここではそれほどではない。それでもバティスの演奏は勢いがあって好きなんだけど、この9番のフーガはちとオケが乱れている気がする。ただ「ブラジル風バッハ」には他にも良い曲がたくさんあるので、この廉価盤も持っていて損はないと思う。上述の1番や5番の他に、2番の第4楽章の「カイピラの小さな汽車」という表題を持つトッカータは単独でも有名。電車でGO!である。ここに表示しているのは私が持っているCDのジャケットだけれど、何度か再販されているので廉価盤のものは変わっているみたい。
手元のCD
- ユーリ・トゥロフスキー指揮 イ・ムジチ・ドゥ・モントリオール
- エンリケ・バティス指揮 ロイヤルフィル
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