前にも2009年11月の記事でも写楽のことを書いたのだが、まず写楽=斉藤十郎兵衛であることは当然であるとして、では?という謎を解き明かそうとした本である。単に写楽は誰か?ということではなく、なぜこの時期にこのような形で現れたのか?ということにひとつの説を展開しているのであるが、けっこう納得できる。
特に個人的には第一期の大首絵と第二期以降の出版形態の違いの意味と、第二期以降の中での顔の出来の差異について気になっていたのだが、「顔のデザインを最初に行いそれをコピーペーストで再利用した」というのは、なかなかおもしろい。なるほど、第二期以降の中での顔の出来の差異は書き手の腕に差があるということなのだな。また、本来の商売は第二期以降であるというのもなるほどと思った。
結局、今までの説では蔦重の役割が軽すぎて納得できなかった。言われるとおり、「写楽」は枚数といいい規模といい、大金を掛けたプロジェクトである。そのプロデューサーである蔦重の実力を考えると「ヒットさせる事」を第一義においたはずなのだ。もちろん最後の歌麿の関与などは少々仮説に過ぎる気がするけど、全体的には読んでおもしろいと思う。というか江戸時代のヒットメーカーも恐るべしだな。
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