2,3年前はマイクル・イネスとグラディス・ミッチェルの新訳が多くて喜んでいたが、さすがに売れなかったのかその後はもう出なくなっている。手元に購入してあったミッチェルのもので読んでいなかった「踊るドルイド」を読んだ。グラディス・ミッチェルとしてのおもしろさは出ているんだけど、欠点もいろいろわかった気がする。
そもそもミッチェルの作品は、クイーン流のガチの推理小説ではなく、クリスティ後期の何が起っているんだろう型が基本で、こちらでは論理的な推理や証拠が必要ではない一方、書き方によっては本当に何やっているのかわからなくなる危険性がある。今回の作品では後のほうの悪い部分が出ているのかなあというところ。
出だしのクロスカントリーで事件に巻き込まれるのはおもしろいんだけど、そもそも日本ではクロスカントリーでの遊びがよくわからないのでもう少し説明が先にほしかったなあと思う。また、どこをどう動いているのか読んでいてもイメージできない。その後も何箇所か関係する場所が出てくるんだけど、よくわからないので距離が遠いのか近いのかもよくわからないのが残念。地図をつけられなかったのだろうか?ソルズベリー中心に事件が起きている位置関係を示してほしいものである。特に終盤ではそれぞれが別れて行動したりするので、どこでどうなっているのかがよくわからなかった。同様に登場人物の名前がどうも覚え難く誰が誰だっけ、という感じ。登場人物表はあったほうがよかったなあ。
事件の展開は意表をついておもしろいというか、そこがグラディス・ミッチェルの魅力なんだけど、いろいろ動きがあるのと皮肉っぽい言い回しのおかげで、何が起っているのかわかり難いのが大きな問題点だと思う。クリスティーはこういうところを整理して示すのがうまいんですよね。結局9年おきというのも偶然ということですか。。。
まあそれでもブラッドリー夫人は好きなので、グラディス・ミッチェルもう少し翻訳が出ないかなあと思うのだけれど、最近の様子をみていると無理なのかな。アマゾンUKでみるとキンドル版がでているようだけど、英語で読むのはつらいし。
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