暑い、暑いといっている間に9月になってしまったが相変わらず暑い。2,3年前の京都を越えるなあ、これは。さて、暑いと凝ったものを読む気にならず、されとてあまりに出来が悪いとぶち切れてしまいそうなので、安全策をとってクリスティーに逃げる。ノンシリーズものはまだ読んでいないものがあるのだ。
「忘られぬ死」は短編の「黄色いアイリス」が元になっていて、それは読んだことがあるはずなのだがすでに覚えていないのでちょうどよい。誕生パーティーで死んだローズマリーは本当に自殺だったのか?というところを周囲の人間が回想するところから始まるのだが、どろどろの愛憎があってどの人も疑わしい。。。けど、まあクリスティーになれてくると「この人が犯人」というのだけはわかったりする。でも今回はその手段や・・・で間違えてしまった。うーん、クリスティー侮れないぜ。
クリスティーの場合、犯行の骨格(犯人・動機、共犯など)については共通でありながら、それを作品に仕上げる設定のバリエーションが豊富すぎる。今回のものの骨格でもノンシリーズのあれやマープルもののあれなどいろんなところで使われながら、作品としての人間関係やミスリードの仕掛け方がそれぞれうまく異なっている。「忘られぬ死」では、誰が狙われているのか、と、独白の中の意味の二重性があまりにもうまい。それをメロドラマにまぶしているところで、より見えにくくしているのも座布団1枚である。
というわけでやはりクリスティーが良いなあということであった。
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