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November 14, 2003

●追跡

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アレホ・カルペンティエル(Alejo Carpentier,1904-1980)「追跡」を読了。活字もそれほど小さくはない150ページほどの中篇であるが、なんと読みにくい、なんとも入り込めない小説であった。

あまりに説明しにくいので、オビの解説を引用しておきます。自分に文才がないということだよなあ。ショボン。
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《かれ》はかつて革命のために暗殺を敢行した《英雄》。しかし、今は庇護なき《逃亡者》。次第に明かされる、魂の救済を希求する一人の男の血塗られた歴史とその末路。物語構造の中に大胆に《音楽》を編みこんだことでも有名な異色の中篇。
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ベートーヴェンの英雄交響曲をバックモチーフに(小説の中にも出てきますが)、追われる男、その過去の回想、逃げ込んだ劇場、追うものたち、老婆、葬儀、革命結社、聖的な娼婦、死、再生、がまさに小説空間に展開されるのですが、うー、つらい。そのカットバックはあざやかで、マトリックスめじゃないです、しかも感動的なのだが、これほどの読むのが辛いのは何故?まさにディシプリン(修行)じゃ。

ヒッチコック的な追跡と劇場での死の話ではあるのだが、本来は英雄の死と裏切り者としての教会での再生と死が主題なのでしょう。聖なる娼婦を中心とする配置構造や老婆の位置付けにかんじるのだが、いかんせんキリスト教の神秘的な死と再生の宗教観は日本人にはわからんわいと開き直りました。

カルペンティエルは技巧的かつ修飾的な文体なので、物語世界に入り込む(個人的には自己チューニングとよんでいる作業)までが大変で、「ハープの影」はまずおもしろかったが、「時との戦い」は少々苦闘して読了。「失われた足跡」は3回挫折中です。「追跡」も全体はわかったので、また5年後に読んでみよう。まだこのあと「この世の王国」「光の世紀」「春の祭典」が積まれているんですよね。はあ。「バロック協奏曲」(サンリオ文庫)はなんとか入手したいなあ。

英雄交響曲をもとにした小説としては、アントニー・バージェスの「ナポレオン交響曲」もあって、こちらは4小節が4?ページ(だったか忘れた)の展開に対応しているとかで、読み始める前にまず総譜買わなきゃ、ということで積まれておりまっする。

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