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March 28, 2004

●ジャンピング・ジェニイ

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アントニイ・バークリー(Anthony Berkeley)の「ジャンピング・ジェニイ」を読む。というか、少し前に読み終わったのですが。バークリーは1920~30年代の推理小説の黄金期の作家の一人ですが、作品の邦訳は非常に少なかったのです。しかし、最近国書刊行会や晶文社から翻訳されたので、全体像を知ることができるようになりました。「ジャンピング・ジェニイ」は時期的には後期といっても良いのでしょうが、すでに推理小説としては「壊れた」作品です。

もともとデビュー作以来シニカルな作風で、登場する探偵のシェリンガムも成功半分失敗半分なので、名探偵というよりは迷探偵です。中期以降は一般的な探偵小説の枠を壊し始め、このあたりでは、すでに犯人当てでも謎の推理でもなく、「探偵小説」を本歌取りとして、どたばた、ユーモア、パロディ小説のようになっている。。。のでまとまな推理小説を望む人は怒り出すでしょう。でも、シェリンガムとバークリーの歪んだ世界が好きな人にはたまらん作品ですな。しかし、70年間翻訳されないとは。。。

私は途中まで読んで、ふーんと思ってしばらく中断していたのですが、この前最後まで読んだら、最後にもう一ひねりしてるんですね。これにはやられました(もちろん推理できる範囲は超えているんですが)。

シェリンガムの登場作品

レイトン・コートの謎・・・現在読書中
デビュー作ですが、古典的な構成で、滞在先での拳銃自殺が殺人事件と目をつけたシェリンガムとワトソン役のアレックの探偵談。まだまだ普通の推理小説っぽいですが、シニカルでユーモアのある会話は最初から楽しめます。このような設定はクリスティのスタイルズ荘もそうだったし、書きやすいのでしょうか?

ウィッチフォード毒殺事件・・・既読
シェリンガムとアレックにおてんば娘のシーラを加えての楽しい小説ですが、推理小説としてはちょっと弱いかな。でも妄想的にいろいろな可能性を推理していくところは、モース警部の先祖なのだと実感(シェリンガムは人間が軽い感じですが)。

ロジャー・シェリンガムとヴェインの謎・・・積んであります

絹靴下殺人事件・・・未購入

毒入りチョコレート殺人事件
やはりバークリーというより推理小説の古典としての基本。しかし、いくつかの事実から6個の推理を導き出すのはやはりおもしろい。。。というか、他の小説ではこれを一人でやっているわけですが。できたら原作の短編も読みましょう。私は短編を後にするほうがお薦め。

第二の銃声・・・既読
心理的な方向に少し進みつつある実験作。トリックはいろいろあるけど、まとめ方はうまい。これが進展して後期の「ジャンピング・ジェニイ」や「試行錯誤」につながりますね。シェリンガムは・・・おもしろいねえ。麻耶雄嵩の「翼ある闇」の探偵を尾乱しました。

最上階の殺人・・・既読
事件はどうということないんだが、シェリンガムのはしゃぎぶりと秘書シーラとのやり取りをたのしむものです。構成はすでに「探偵小説」をパロディ化していますので。最後の会話が好き。

地下室の殺人・・・既読
これは一転してまじめな推理小説の範疇でしょう。シニカルな部分やユーモアもありますが、基本的にはまっとなもの。ただ最後の処理は「ジャンピング・ジェニイ」や「試行錯誤」的な問題意識を明確にしています。

ジャンピング・ジェニイ・・・既読
めちゃくちゃおもしろいが、まじめな推理小説を望む人は読まないほうが良いでしょう。もうシェリンガムは探偵なんかじゃないよね。

Panic Party・・・未翻訳

シェリンガムのでてこない作品では「ピカデリーの殺人」はまともな推理小説、「試行錯誤」は「ジャンピング・ジェニイ」のひとつの変奏。ここに通奏する主題は重い。特に最近のようにマナーと他者のことを考えられない人間の多い世の中では。

コメント

その後「レイトン・コートの謎」を読み終わりました。バークリーって最初から嫌味なやつが殺されるという路線なのね。

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