●陰摩羅鬼の瑕
久しぶりに京極夏彦の京極堂シリーズの新刊がでました。今回はあまりにストレート。ちょっとだけ内容にもふれるかも。
前に「不連続殺人事件」で本格の話を書きましたが、京極夏彦は本格なんだろうか?というとそういうわけでもないのだろうと思うわけです。というか推理小説かどうかも怪しいところがあります。しかしそれでも京極夏彦の京極堂シリーズが面白いのは、事件と推理小説的な機構を話を進めるためのエンジンと割り切り、実際に書きたいところが他にあるからでしょう。もちろん京極堂は探偵ではあり得ないし、榎木津もあまりに強力な機能をもっているために、ここでは半分はずされています。
犯人はあきらかですが、最初からここでは「誰が犯人か」は問題ではなくて、「何が起こっているのか?」に興味の中心があります。このあたりは、クリスティーの後期の「バートラムホテルにて」で作られた新しい謎のパターンの後継者といえるのかもしれません。したがって、いずれの場合も事件自体に謎の中心があり、ひどい場合はSFにいってしまうわけですね。
しかし、その「世界」を堪能できる作品が少ない今、次の話が楽しみではあります。関口君復活しかかったしね。