●砂の本
ホルヘ・ルイス・ボルヘスの「砂の本」を読了。ボルヘスの小説は小説界の光学異性体のようなもので、同じ文字列で記述されていてもメタレベルの視点がない限り全く味も香りもしないので、なんだこりゃ?となるかもしれません。
しかも「砂の本」は後期の作品なので、それぞれの純度が高く(もはや結晶化しているとも言えるような)、もはや幻想文学というよりは純粋哲学書のような趣であります。久しぶりに読んでみると、自分でも味わったのだか味わっていないのだか中途半端な位置に放り出されたような、そう二つの丘は似通うことはなくても平原はどこでも同じなので、大平原に放り出されたような気分である。そこでは全てのものが別々であると同時に同一の視点を持つような、あるいは世界を凝縮しきったひとつの歌があるような、あるいはその世界の外側には無限のその世界の鏡影があるような。
さて、感性的なリハビリにはなったのだろうか???