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July 11, 2004

●鎮魂歌(レクイエム)

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大学を卒業した頃、いろいろな作曲家のレクイエムを集め始めたことがある。ヴェルディやモーツアルトは当然として、ヒンデミットやブリテン、ハウエルズ、フォーレ、ブラームスなどや珍しいところではブルックナーやヴィラロボスまで。しかしレクイエムは人の心に住まうジンのように増えつづけており、すべての収集は絶望的であった。あるいは飽きたのかもしれず、私が精神的に変化したのかもしれない。で、グレアム・ジョイスの「鎮魂歌(レクイエム)」を読んだ。幻想文学に形を変えたレクイエムはどうか?

というわけですが、雰囲気はまずまず良いのですが、ちょっと問題が小さいかなー。心に壁を作った男が壁のある街へいく、みたいなピンクフロイドのウォールのような設定でございます。まあ宗教に頼る人って結局そうなんだろうけど。キリスト教でいうと、その教えを正しいと思い実践するのは良いが、だからといって教会やイエス自身、聖地を信仰する必要性とは話が違う。自分での価値判断を他に委ねているだけではないのだろうか?

で、この本の感想は

女性は怖い

付け加えて言うと

愛も宗教も同じ悪霊

もっと言うと

共闘した女はもっと怖い

ということです。共闘したのはケイティとマグダラのマリアですが。まあそのつながりもなんだか意味不明の雰囲気だけだし、単に復讐したいだけみたいだし、終わり方はもう白人至上主義みたいでとっても不愉快だし。あくまで白人が異世界に惑う話としても、他から見てどないやねんという突込みをいれたくなっちまう。結局はすべて個人の問題で「コスモポリス」に通じる不愉快さを感じてしまう。

解説では「アラビアの夜の種族」や「アラビアン・ナイトメア」と比較しているんだけど、「アラビアの夜の種族」はまだ積んであるので比較できないが、「アラビアン・ナイトメア」と比較するのはちょっとレベルが違いすぎるんでないかい?そりゃ「アラビアン・ナイトメア」のほうが100倍おもしろいでしょうて。

この「鎮魂歌(レクイエム)」も幻想文学なんだろうか?私にとってはこのかきっぷりでは幻想文学にはちょっと入れたくないです。幻想文学風味のモダンホラー型ミニマル小説というところにおいておきます。この位置は私には縁なしに近い。

コメント

うん、これってホラーですよね。幻想と名のつく賞をとってるから、つい濃厚な幻想文学を期待しちゃいましたが、そういう期待をすると、肩すかしをくらいますよね。正直、ガッカリしちゃいました。

幻想文学ではないのに賛成です。読んだ後、すみ&にえさんの感想も見ました。たぶん同じようなところで引っかかっているのではと思います。私としてはホラーよりは自己憐憫型のミニマル小説の主題に近いかと。

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