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September 22, 2004

●バロック協奏曲

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アレッホ・カルペンティエールの「バロック協奏曲」を読んだ。最初はやはりカルペンティエール的文体に疲れるけど、ヴェネツィアに移ってからがめちゃくちゃおもしろい。さすが傑作といわれるだけのことはあると思った。が、傑作とかいうよりも、筒井康隆のジャズ大名ののりである。というか、筒井康隆の方がこれを読んで狂騒してまねたんだろうけど。

でも、その狂騒のレベルから新大陸と旧大陸の自我や奴隷と黒人の話、天体の中での地球というレベルまで話が入っちゃうのはすごいね。文学の繰り込み理論みたいです。昔、これを原作とした「バロック」つう映画をみたんだけど、あんまりわかってなかったかなー。もう一回見たいと思た。

メキシコのお金持ちの御領主様があこがれの旧大陸へと旅にでるのだが、そこで得たものは幻滅。最後の希望を持ってイタリア、ヴェネツィアへと向かうが、主顕祭の仮面での祭りの中で飲んだくれたうちにあったのは、赤毛の色好き僧侶、ナポリ野郎、サクソン人ですが実はそれはヴィヴァルディ、スカルラッティ、ヘンデルで。。。御領主様のぐちと話を聞いてヴィヴァルディは「そりゃ歌劇にぴったりじゃん」ということで、「モンテスマ」という歌劇を書き上げ演奏するのです。が、都合良く書き換えられた歌曲の筋と違和感から御領主様は新大陸の人間としてのアイデンティティに目覚めるのであったのであった。

という本筋に感動するのも良いが、上記三人集と演奏団と黒人奴隷のアフロ・リズムによる時空間乱れまくりの大セッション、コンチェルトグロッソ、もう時間軸壊しまくりで、小説的にもどんどんアッチェラランド、ストラヴィンスキーの墓からワーグナーの死からトランペットを軸にしてルイ・アームストロングの演奏までの200年を30ページほどでぶっとばすあたりを、ぎゃははははと笑いながら読むのもまた正しいのだろうと思う。音楽ファンだとより笑えるのである。

疑問としては、ヘンデルはイギリスに帰化したとはいえ、サクソン人と呼ぶのはちょっとどうかとも思うのですが、まあたいしたことじゃないですね。あとその同時代として、シェークスピアのハムレットやタイタス・アンドロニカスを元にしたほのめかしもあるので、そのあたりわかっているとより笑えてよろしいかと。

選ばれた人々」はノアの箱船に基づく話ですが、各神様毎に「ノア」と箱船の指示があったら、というSFというかそんあ話です。まあこちらはちょっと楽しいかな。これは時間に関する連作「時との戦い」の一編になっているので、そちらの中で読んだ方が楽しいかも。他の3編読んだのはすでに十年以上前だしなあ。読み返すか。。。

カルペンティエールの文体とのりは私はちょっと苦手でして、これも短い割にはのりがわるいなあと思っていたのですが、書いたとおり途中からもうすんげえおもしろいので、古本屋で発見したらとりあえず購入してくださいませ。サンリオ文庫はなかなかないよ。1000円以下ならお得な方だと思われます。「ハープと影」もおもしろいので、もし見つけたらこれも購入しておくように。

さて「失われた足跡」も再挑戦すべきかのう。まだ「春の祭典」とか「光の世紀」とか大物が残っているし。

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