●我間違えるゆえに我あり
囲碁になかなかかける時間がない、という言い訳をしつづけている今日この頃ですが、せっかく追悼で購入した加藤正夫名誉殺し屋の「加藤正夫打碁集 攻めの構図、読みの力」上下巻もまだつらつら見るだけで並べていない。打碁集はやはり並べてなんぼなんだろう。いろいろと溜まっているんだけど、そのうえ王銘エン九段の「我間違えるゆえに我あり―悪手を打ってもえーじゃないか」を購入したが、これが気軽に読めてめちゃくちゃおもしろい。
王銘エン(【王宛】という字?)さんはメーエンなどとよばれている気もしますが、けっこう愛称のように使われている感じ。独特のメーエンワールドは一回ハマっちゃうと抜け出しがたいですな。碁も見ていて個性的で面白いし、解説もサービス精神を忘れていないというか。ただ、著作のほうの「ゾーンプレス」は会話体がちとおちゃらけで私にとっては入り込みにくかったというのがあります。今回の「我間違えるゆえに我あり―悪手を打ってもえーじゃないか」つうのは、読み損じや悪手に関して、なぜそうなっちゃったのかというのを事細かに書かれていて面白かった。最初はこの寸劇のような記述体も読みにくいかなあと思っていたのだが、こちらのほうは内容と結構マッチしているのでかみしめるとおもしろくなってきた。
特に「美人は追わず」とか「トムとジェリー」が好き。大竹名誉碁聖との追っかけているかどうか気付かれもしなかったというのには笑い転げた。また張栩との王座戦はまだ記憶に残っているだけに、そのときの考え方と、うまく罠に(小さな意味ではなく精神的な意味での)はめられていた話は深いなーと感心した。その時の解説だとやはり単独の手の優劣にしかならず、これが悪手とか言われちゃうわけだけど、その背後にあるものって素人にはわからない。私が好きなのはやはりその精神性の勝負であって、こういう本はもっと出して欲しいなと思う。でもワンパターンな本が増えても困るし、難易度は設定が難しいね。