« Apple & Intel | メイン | 音楽PCの崩壊 »

June 10, 2005

●邪魔をしないで

book-spark-02.jpg

エリザベス・ボウエンの「幸せな秋の野原」も一部読み始めているんだけど、これは英語、邦訳ともに困難な道なのでゆっくりやることにする。特に邦訳は日本語の文章としてどうよ?というのが多く、疲れまくり。一部ボウエンの流れにあるミュリエル・スパークの「邪魔をしないで」を読んだ。こちらは簡潔な文体と会話なので読みやすかった。が、内容はとんでもない世界じゃのう。スパーク萌え。

「ポートベロー通り」ではまったので、続いてミュリエル・スパークの「邪魔をしないで」を読了。このあたりは絶版なので入手に手間がかかるのだ。私は図書館は使用せず、基本的には「買う」方針にあるのです。

さて、「邪魔をしないで」ではスイスにあるちと立派な男爵の館で、使用人たちが集まって「今後」起こる事に備えて、いろいろと忙しく動き回っている。男爵の「邪魔をしないで」という言質をとって、彼ら(男爵夫妻と秘書)の邪魔をさせないようにするとともに、第三者が執事リスターの筋書きの邪魔をさせないように活動し、その後を見越して、映画会社との契約や記録の作成、コメントの準備を着々と進めていくところが面白い。ブラックユーモアというか、大公も含めてあまりの淡々振りに凄みを感じる小説であります。進展はほとんど屋敷の室内で使用人たちの会話が多くを占めていて、まるで舞台演劇のようにまざまざと浮かび上がるのでありました。途中の屋根裏の男の正体からうまく筋書きを変えちゃう柔軟性がリスターの凄みだよなあ。

で、使用人の世界は現代的なブラック・ユーモアでありますが、きっと昔々から表裏で起こってきたことは変わらないんでしょう。でもロマン派的な前世紀では、男爵夫妻と秘書の密室の中の悲劇(彼らは彼らの中で真面目に悲劇を演じていて欲しいわけです)にスポットライトがあたり、マスメディア的な現代では裏の使用人室にあたって喜劇になってしまうという皮肉な構造が想像できるのがおもしろいです。つまり、使用人世界を楽しむだけでなく、ほとんど記述されていない密室の世界での19世紀的ロマンの愛憎劇を想像できると、二重の意味で楽しめるんじゃないでしょうか。やはり彼らは彼らで全力で昼メロの世界を演じてくれていなければ困ります。

スパークに関してはあと少し在庫があるので読みたいと思っているし、古本でも手に入れたいと思う。「死を忘れるな」と「マンデルバウム・ゲイト」はなぜかはまる前から持っていたし、「シンポジウム」は古本で入手済み。でもその他は無理なら英語で読むかなあ。ボウエンよりは楽そうな気がする。でももう少し生活に余裕がないと無理です。誰か養ってください。

執事リスターに関しては、解説でやはりウッドハウスのジーヴスに触れられていて、ジーヴスものはやはり必読だよなあとまた思った次第。日本ではでていないけど、JeevesもののTVシリーズがあるようで、買ってみようかと思ってみたり。

コメントする