●銀河ヒッチハイク・ガイド
DVD がでたので購入した後で、積んであった原作を読み始める。ダグラス・アダムスの「銀河ヒッチハイク・ガイド」はおばかSFの金字塔といわれているが、まさに金字塔であった。このすばらしさに星4.5。こういうの好きなんだねえ、私。でもただおばかだから、というわけではなく、おバカな題材を精緻に効果的に組み上げている構成が好きだなあ。「宇宙の果てのレストラン」も続けて読む気でいる。
一方、映画のほうは設定や各登場人物?はそれほど悪くもないが、全体のリズム感がとても悪い気がする。なんかねー、せっかくの気の利いた英吉利風風刺がただのどたばた亜米利加風になっていて、とっても嫌だ。でも脚本とかの名前にダグラス・アダムス入ってるんだよなー。まあ、そんなわけで映画のほうは推薦しません。
ダグラス・アダムスの「銀河ヒッチハイク・ガイド」はもう全部楽しい。まじめに科学で飾り立てて緻密な構成で、徹底的におばかをやるところが好きだ。もちろんもう一歩やっちゃうと、あーあ、となる手前でとめているところにモンティパイソン魂を感じる。。。がモンティパイソンでは、やっちゃったよ、というのが多いのも事実だけど。
というわけで勝手に賞をあげたくなった。
・最優秀登場人物賞 マーヴィン
・最優秀技術賞 無限不可能性ドライブ
・最優秀番号賞 42
・かわいそうで賞 マッコウクジラ
・実は寝てたで賞 ディープソート
というわけで開始直後に地球が抹消されたり、実はその地球は・・・とかいうのが面白かったのだが、本質的にはやはり細かいところのギャグや皮肉なんぞがおもしろいのである。しかしそれは前にきちんとネタが振られていたりで、うまく構成しているなーと感心した。読んでいるときはあんまり考えずに、そういうことかーと喜んでいたんだけど。また、皮肉ってやっぱりクールじゃないといかんよなあ。登場人物をかわいがったりしてはいかんのだ。
映画のほうは、出だしのイルカ君と歌がおもしろかったので、これはすごいかも、と思ったら見事に裏切られた。アーサーが出てくる最初からもうだめっす。ヴォゴン人の宇宙船なんて最初の見せ場なのに、アーサーがネッコロガル前からみんな逃げちゃうし。。。最初ばかりはアーサーの視点でないとおもしろくないと思うぞ。
その他面白くないことはやまもりです。
・最初から人種構成を考えたような配置
・原作での皮肉はすべて映像のギャグかばっさり消えている
・労働争議系のギャグはばっさりない
・宇宙船が躁状態になっていない
・マーヴィンもっと落ち込めよ
・本の中では前にうまく振っている仕込がそれぞればっさりない
・三角関係とか恋愛関係を入れるな(アーサーが一方的に好きになるのはよし)
・最後ハッピーエンドはねーだろ
うーん、もろハリウッド風最悪改変だなあ。だいたい、原作を切り貼りしたような感じでギャグになっていないこと甚だしいし、そこをきっちりやらない割にはいらないストーリーを入れてるし。。。まったく、途中からライバルのところとかヴォゴン人のところとかいく暇あったら、原作どおりやれよって感じです(全然おもしろくないので)。つうか原作読んで無いと話がわからないんじゃないかと思うんですよね。
つうわけで映画は見ても見なくてもいいけど、それは文庫本の「銀河ヒッチハイク・ガイド」を読んでからにしようね。河出書房新社は「晶文社ミステリ」の後の企画を引き取って出してくれるようなので応援するぞい。とにかくジャック・リッチー短篇集『10ドルだって大金だ』(仮題)、マイクル・イネス『アララテのアプルビイ』、グラディス・ミッチェル『The Mystery of a Butcher's Shop』が出てくれれば御の字だ。