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August 20, 2006

●裁かれる花園

book-Tey-04.jpgジョセフィン・テイ を続けて読んでいる。昔はほとんど「時の娘」しか読めなかったけど、今は全作品(といっても8冊ですが)が邦訳で読むことができるとはよい時代になったのう。これも論創社さまとハヤカワさまのおかげです。 私はこれでやっと 5/8 テイ。もう3冊で在庫が尽きるかと思うとちょっと悲しい(あ、「時の娘」は読み直すつもりだから4冊か)。

さて、「裁かれる花園」はグラント警部ものではなく心理学者ルーシー・ピムが主人公となっています。確かに設定上グラント警部では無理だわな。まあ無理に顔出したりしないところにも好感がもてます。 アマゾンの評などで「アンフェアかも・・・」とか書かれていますが、この小説は謎解きではなくましてパズル小説ではないので、アンフェアとかいう類の人は読まない方がよいでしょう。どちらかというと学園心理小説で展開を楽しむみたいな感じだし、心理学を茶化した本みたいに思った方が良いと思う。というわけで、ミステリとして読むなよ、というのも入れて星3.5。

で、英国ミステリのひとつの定番、学園ものなんですが、女子体育学校というのがちょっと設定として面白い。もっともテイ自身その先生だったようですが。最近ライトノベルで学園ものが多すぎて、うーん、なんかライトノベルっぽい設定だなあとか竹本健治の「眠れる森の惨劇」に似てるなあとか時間軸を無視した感想を持っちゃいます。で、テイの作品はここでもやはりしっかりした眼とシニカルな書きっぷりでおいしいです。ただ、やっぱりミステリとして読んじゃいかんなあ、というのは他のテイの作品といっしょ。

で、各学生の個性がなかなかおもしろい。ちょっと印象薄くて混乱しそうな人もいるけど。四使途はおもしろいね。そのままライノベにでてきそうで笑った。先生方もおもしろいし、ピムの優柔不断っぽい性格がうまくでていてよいなあ、探偵失格の理由もよくわかるし。で、最初は大騒ぎの学園生活が続いて 、事件らしきものは後半です。派手ではないけど、その分ありそうな感じがむんむん。でも最後の苦さがうまいなあ、とやはりテイは好きだーと実感。ピムksらの視点の描き方もうまく、最初はすべて良いようにみえるけど、いったん疑い始めるとなんだか全部があいまいに思えてくるのがおもしろい。

以下ちとふれます。

どんでん返しのためには仕方ないんだけど、じゃあ結局校長のヘンリエッタの選択は?と疑問も残るのであった。ただ、あくまでピムの視点が中心なので仕方ないんだろうか?

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