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July 26, 2004

●花の旅・夜の旅

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マーク・ヘルプリンの「ウィンター・テイルズ」を読んでいるのだが、ベッドサイドにずいぶんころがっていた皆川博子の「花の旅・夜の旅」をちらと見たらおもしろくなって再読。というかもともと「聖女の島」のほうを読みたくて買ったはずなのだが、「花の旅・夜の旅」のほうだけ読んで積まれていたらしい。この際両方読んだ。うーん、濃い。

皆川博子は「死の泉」と「笑い姫」しか読んだことがないので、全体像を捕らえているとはいえないだろう。どちらも好きだ。

花の旅・夜の旅」は、旅行雑誌に連作小説を依頼された作家が、取材旅行とその小説を進めていくと。。。という作中小説自体がトリックとなっている作品。これが2ひねりくらいあっておもしろい。たぶん外枠の設定だと、松本清張の某作品を思い出していかんのだが、その後の記述トリック(と書いてよいだろうか)は凝りすぎている。うーん、良い。ちなみに松本清張の作品を読んでいたのはたぶん小学校から中学1年くらいだったような気がするので、今読むと印象は変わるかもしれない。ちなみに某作品は、最近他の意味で急に読みたくなったので買いなおして読んでみたのだった。なるほど細かい処理はうまいなとその頃は気付いていなかったことを思ったりする。

聖女の島」は推理小説というより幻想小説よりであろう。細かく推理するのではなく、その歪んだ世界を追体験し、感じることができるかで感じ方が違うと思うのだ。謎は最後の瞬間集約し、形式自体のトリックもあるんだけど、それはあくまで読み進めるためのエンジンなのであって、その世界に畏怖せよ、と思うのです。でもこれは読む価値ありだと思います。しかし、ここでも「愛は悪霊ではないのか?」という深い主題を背負っているのですなあ。愛には自己愛も含まれております。

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