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August 15, 2004

●夜の姉妹団

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某サイトを見ていて、クロウリーの短編が入っているのを知って、とりあえず購入を決定。池袋西武のリブロでは、いまだに?ヒラ積みでした。なぜに?

スティーヴン・ミルハウザー「夜の姉妹団」

おもしろいんだけど、内容の面白さと形式を考えると、どうも形式が先行するのであざとさを感じて興ざめするのである。この題材なら普通に書けばよいのになあと思った。ミルハウザーはあんまり経験していないので大きなことは言えないんだけど、どうも表現形式のほうが過ぎるように思うのであるがどうか。読んでみないといけないですなー。「バーナム博物館」は2冊買っちゃったんだけど、どちらも?最初のシンドバッドでひっかかるのです。なんかこれだとやはり「アラビアン・ナイトメア」のほうに心がいっちゃうんですよねー。

結局、解釈をでろでろと書いちゃうところが不満で、もっといい加減に終わってもらってよいのだと思った。というか、ここで解釈から主張を書いちゃうか、放り投げるかで幻想文学の一つの分かれ道があるんじゃないかと思う。わしは放り投げるのに賛成派なのだ。もし今回の形式で書くなら、「私の解釈」ではなく「三歳男性ピーターさんのご意見」とかでほしかった。

レベッカ・ブラウン「結婚の悦び」

フェミニズム文学的に解釈してよいのか、フロイト的なのか、あるいは夢落ちなのか、いろいろ考えて遊べばよいのかよくわからないが、だいたい私は結婚したことがないから、その悦びを妄想するとこうなるのであろうか?「喜び」じゃなく「悦び」だからなー。フロイト的解釈って、けっこうあらゆる場合に使って遊べるので、20世紀最高のおもちゃを提供してくれたのではないだろうか?そう思うとフロイトさんはすごい。

ミハイル・ヨッセル「境界線の向こう側」

ストレートな文学、というかストレートな作品は、そういえば最近読んでないなーと実感。変化球だったり挙句の果てには魔球みたいな小説ばっかり読んでるもんね。やはりたまには直球の小説を読んで、豪快な感想を持つべきだと思った。結局境界というのは個人の持つ限界だとすると、自分も境界だらけだなあとか、最近よりたくさんの境界を作っているなあとか。原題の「Pale」に境界の意味はあるのだろうか?

スチュアート・ダイベック「僕たちはしなかった」

そうか、しなかったんだーと妙に納得。その青春の叫びにも納得。なんだかほろ苦い回想にも納得。

ジョン・クロウリー「古代の遺物」

「エンジンザマー」とも「ナイチンゲール」とも違って、軽くてとぼけた感じ。説明にあるように文明解釈とかに持ち込まないのが味なんだろうな。いつの間にか収まっているのがミソで、猫女の気まぐれな性格がでていてとても良い。最後に、サー・ジェフリーが自分も経験したかったふうの雰囲気がとてもいい。そのまま投げ出しているのがまた良い。

レベッカ・ゴールドスタイン「シャボン玉の幾何学と叶わぬ恋」

これ、おもしろくて妙にリズム感が良くて好きだ。どこかのサイトでこの登場人物3人の長編ものを英語で読んだのが載っていたなあ。アラスデア・グレイの「Lanark」とかジョン・バースの「Tide Water Story」とかピンチョンの「Vineland」とか英語で買ったけど結局読めないし。。。

ドナルド・バーセルミ「アート・オブ・ベースボール」「ドナルド・バーセルミの美味しいホームメイド・スープ」「コーネル」

バーセルミを読むのは久しぶりかもしれない。といっても「カリガリ博士」「死父」「雪白姫」くらいだけど。久しぶりに読むとくだらないけどおもしろい。マンガを読む気分で読むとげらげら笑える。「アート・オブ・ベースボール」はなんだか高橋源一郎の「優雅で感傷的な日本野球」の原本をみたみたい。つうか確信的にこれをもとにしているんじゃないかと思った。

ジェームズ・パーディ「いつかそのうち」

なんかわかるようなわからないような。まあどうでもいいや。

アンジェラ・カーター「ジョン・フォードの『あわれ彼女は娼婦』」

名前だけで強引に引っ付けた構成が笑えて楽しい。いや、話は悲惨なのだが、我々にはもはやよくある物語の原型のように思われます。小説自体は作者がくすくす笑いながら作ってるように見えます(実際は苦闘していてもね)。このあたりの構成の絶妙なバランスが作者のセンスなんだろうなと思う。大草原のテーマや愛のテーマは馬鹿笑いである。大規模な管弦楽でやりたい。

ラッセル・ホーバン「匕首をもった男」

ちょっと骸骨なのはあたりまえのイメージ過ぎるんだけど、物語のメタ化を考えると仕方ないのかな。最後まである程度見えてるけど、是も仕方なかろう。白黒つけるぜ、はもはやゼブラーマンがイメージされてしまうので読むタイミングが遅かったかも。

ルイ・ド・ベルニール「ラベル」

最後の落ちがすべてのような気がするが、そこまで持っていくまでがなかなかおもしろい。蒐集家の無意味さをだしていて、いいなあ。

ウィル・セルフ「北ロンドン死者の書」

死んだ母がいることではなく、母が会社に電話をかけてくることのほうが恥ずかしいというのはよくわかるようで、笑った。ごみの出し方とか地域による分別収集とかが書かれていると嫌だなあ。イギリスということですがアイルランド系なんでしょうか?読んでないけどオブライエンの「第三の警官」を思い出した。これも買ってあるので読まなきゃ。