●アウラ・純な魂
本棚整理中。少しづつ載せていくつもり。このBlogの記録は、最近は物忘れが激しいので、自分の読書記録のために書いているのだが、見ていただいている人もいると思うが、だいたい私の書いているのは粗筋でもなく紹介記事でもないので、読んでない人が読んでも良くわからないんじゃなかろうかと思うのである。まあスタイルを変える気はないので、当面このままで。
さて、文学的なものはラテンアメリカ周遊中で、カルロス・フエンテスの「アウラ・純な魂」を勉強もせずに読んだのであった。これは良いぞ、怪しくて良いぞ。フエンテスに関しては、ラテンアメリカの人々の源の部分に関する問題意識と個人の源に関する問題意識がもろに表れてきて、ときにうっとーしい気になりますが、「純な魂」や「アウラ」はすんげーいい!と思った。
チャック・モール
果たして海で死んだ友人に何があったのか、ゴシックホラー系の基本のような話であるが、他のアンソロジーにも入れられているように、うまくできた小説だなあと思った。前の「遠い女」でも書いたのだが、やはり神様は怖い。
台風の中で読むといかん。雨音に続いて、ほら、ドアを誰かがノックしているような気がして。。。
生命線
兵士たちの物語が乾いた文体で書かれていく。「空気の澄んだ土地」の一部ということだが、こういうリアルなやつはあんまり好みではない。でも厳しさも状況もうまく書かれていると思います。
最後の恋
これも「アルテミオ・クルスの死」という長編の一部だとのこと。金持ちじいさんの独白的な内容なのだが、この部分だけでは長編のほうの人称を使用した視点の変化はわからない。どうもフエンテスがいまひとつ身近でないのは、この「おれが・・・おれは・・・」というのが結構うっとーしくなってきたからでもあります。「老いぼれグリンゴ」もわかるけどちとしつこいなあ。
女王人形
最初読んだときは、畸形とかゴシック的な雰囲気も含んでの、「最後のオチ」のための短篇かと思ったのですが、解説を読んであらびっくりですね。なるほど、単なるゴシックホラー的にも読めるけど、キリスト教に征服されたマヤ・アステカの神様=メキシコの我々の「根」の問題になるのかあ。マヤ・アステカ神話は読んでおかないといかんですなあ。
純な魂
これはすてきな作品です。兄妹二人の関係も近親相姦的な関係もあるけど、もう少し魂のレベルでの一体感ということでしょうか?きっとメキシコへの根というかルーツの喪失が二人の分離につながっているのでしょうね。ファン・ルイスのおどおどぶりは、自分のルーツを失ったせいでもあるのかしらん。クラウディアが語りかける小説の形もなかなか良いなー。手紙、一体何書いたんだろうと思うと、やっぱり女って怖ーい。クラウディアのような甘くて芯のきつい小説。
アウラ
これはもうすばらしか。。。途中からアウラとコンスエロ夫人の関係がわかるあたりからぞくぞくする。それにはまっていくフェリーペも、いつでも逃げられそうで逃げない、もうゴシックホラーの定番でありながら、その様式感がすてき。屋敷に入った瞬間からすでに異界に接してしまったってことなんでしょうね。いや新聞記事を見たときからかな。
最後の言葉の「しばらく力を蓄えさせて。。。」というのがいいね。月の満ち欠けのように女は力を蓄えて男はその罠でおどるだけだろうか。フェリーペは生まれ変わりかとか意味付けしたがる人もいるかもしれないが、それはあんまりおいしくないね。幻想小説の楽しみ方としてはとてももったいない。もうこれはコンスエロ夫人の登場時点から異界であって、場所も時間も不確かな意識の中の出来事なのだと、ありのまま受け入れてコンスエロ夫人に抱かれよう(二人称なんだから)。