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December 05, 2004

●バルタザール

book-Durrell-Balthazar.jpg


ナボコフの作品を古書で収集中。汚くても積んでおくと安心する私です。

ローレンス・ダレルの「バルタザール」ですが、例の「エジプト4人衆」の第2巻です。あら、やっぱり「ぼく」はだめだめで、バルタザールおぢさんは冷徹な目で見ています。「ぼく」かわいそうですねえ。「ジュスティーヌ」ででてきた出来事や会話、日記や本のみかたがどんどん変わっていきますねえ。いやあおもしろくなってきました。やはり第1巻だけでは水晶の一つの面だけを見ていたに過ぎず、それだけではガラスとあまりかわりがないわけだけど、いくつかの切り口が現れると複雑な輝きを見せ始めるようなもんです。

とろとろ愛の第1巻はけっこう疲れたんだけど、第2巻では何か裏にありそうな雰囲気がむんむんしてきて、最後の殺された謎に向かってミステリタッチで進むので、気持ちよい。第2巻ではアレキサンドリアの描写もあるけど、山場はやはり最後の謝肉祭の光景なのかな。それもアレキサンドリアの一面な訳ですが。

だいたい第2巻で、初めて第3巻のタイトルとなるマウントオリーブ氏登場、というところからアザトイ。しかも最後のほうで「ぼく」をダーリーと読んで第3巻の三人称の記述につなげるとかもアザトイ。もう「ぼく」いろんなこと漏らしすぎだよ。大体第1巻の最後の鴨猟でのダ・カポの死の話もよくわからないままだし、愛よりもだんだんそちらのほうが気になってうずうずしてくる私です。

でも要らない読書経験積んできたせいか、第1巻がちょっとへなへな方向により過ぎて書かれているなー、とか、バルタザールはその反対側で書かれているなー、とか、でもバルタザールの見方も信用できないんじゃなー、とか、バルタザールがパースォーデンほめまくっているのもホの事だったんじゃないのー、とか、最後の最後で実は「ぼく」が全部たくらんでいましたつう大どんでん返しはないんじゃろかー、いらんこと考えすぎです。

ただ、ナボコフとかと比べると、上記のような小説の仕組みの舞台裏が見えちゃうのはちょっと困る。というか見えないほうが楽しくてよいと思うのだ。ナボコフはちゃんと舞台裏が笑えるようになってるからねえ。つうかナボコフでは舞台裏まで見ないと、実は一人芝居であるとか気付いていない可能性がある。それでも舞台の上ではおもしろいんだから。そういう意味では、やはり小説に目覚めて、平板な物語という世界から一歩踏み出す頃に読むと一生忘れられない本になるんだろうなあ。

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