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December 18, 2004

●あの薔薇を見てよ

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エリザベス・ボウエンの「あの薔薇を見てよ―ボウエン・ミステリー短編集」を途中まで読んだ。ミステリー短編集とあるがミステリーとはち・が・い・ま・す・か・ら。どちらかというと英国ゴシック幻想に近い流れではあるが、かといって遠い話ではなく英国の生活の中の日常に潜む「不安」や「恐怖」なのである。

小説自体は短いし、手ごろだし結構楽しい・・・んだけど、日本語の文章がちょっと変だと思う。また、さすがに短篇がこれだけあるとパターンが似てきて、一気に読むには飽きてくる。二分冊くらいがちょうど良い気もするが、商売的には続編は売れなくなっちゃうだろうから難しいね。途中なんだけど、飽きてきたので一旦書くことにして、またそのうち続きを書こうと思う。そのほうが時間が経って熟成したものになるかもしれんし。

さて、解説にもあるんだけど、ボウエンの文体は相当難しいんだろうか?そうかもしれんが英語の翻訳の教科書ではないのだから、わかった上でもう一段文章をまるく主語を明確にするべきじゃないだろうか?読んでいて、英語の文章を一旦思い浮かべてから日本語の意味を一生懸命考えなければならないのでは、ちょっと小説の翻訳としてどうかと思う。文体がいくら難しくても内容は流麗な流れなのだから、それにあわせた文章にしてもらいたいと思う。なんかワンパスコンパイラの吐き出すコードを見ているみたいだ。いくつか主語や文のつながりが意味不明だし、「泪よ、むなしい泪よ」も本文は涙なのになんで?と思ったりする。日本語として問題あると思われ。

以下ネタバレちょっとあり。

コージーな表面の陰にあるもの(小池滋)

前書きでがんばるのもいいけど、クリスティーと比べたってどうしようもない気がするんだが。。。そうか、読書に癒しを求める人がいるのか、と勉強になった。

あの薔薇を見てよ

イギリスの郊外の風景がいい。きっとこういう怪しい家があるんだろうなあ、ゴシックの本場だよなあ、と思ったり。はっきりしない終わり方の切り口のあざやかさがいいね。不安感がどんどん広がるところがうまい。

アン・リーの店
針箱

「アン・リーの店」ではお客の二人と男性のかみ合わなさ具合が楽しい。女性の買い物ってこうなんだろうなあ。最後何が起こったかは・・・ねえ。「針箱」はミス・フォックスの毅然とした感じがいいね。名字もフォックスだし雰囲気でてる気がする。どちらも自立したような女性の姿なんだけど、時代を後ろにみておかないと味わいが薄れるかもしれない。

泪よ、むなしい泪よ

最後の思い出さないあたりがよい。タイトル、詩から来ているとしても本文との流れでは「涙よ、むなしい涙よ」のほうがよくはないか?

火喰い鳥

フィリスかわいそうだけど、どうでもよくなっているポールの最後のせりふあたりがやはりいいね。

マリア
チャリティー
ザ・ジャングル

少女というのは私たちにとって異生物で、少女から見ると私たちの世界は異世界なんだなあと思った。その心の動きや切り口を鮮やかに示してくれていると思う。萩尾望都の初期のマンガみたいだ。。。でもそれは男の子同士の世界だったから、「マリア様がみている」という感じかしらん(読んでない)。これらを読むと異生物的少女に興味を持つが、そうなるとハンバートに一歩近づくのかもしれず。

タイトルの「ザ」の意味はわかるんだけど「ザ・ジャングル」という翻訳はないんじゃないかねえ。「私たちだけの森」とかにしちゃうとやはりぬるいか。。。でも「ザ」はねーだろ。

告げ口

結局へなへな男のままだったテリーの最後は救いがなくて楽しい。きっとボウエン自身こんなへなへな男は嫌いなんだろうなあ。そういう意味でちょっと解説の感じ方とは異なるものがいくつかある。

さてこのあたりで小説自体は面白いんだけど、雰囲気に飽きてきたので一旦休止しようと思う。「エジプト4人組」復活させないといけないからねえ。

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