●比類なきジーヴス
P.G.ウッドハウスってイギリスでは有名らしいんだけど、日本ではあんまり知られてないなあ、ということです。翻訳自体があんまりなくて戦前、戦後すぐあたりしかなかったんですが、国書刊行会から「比類なきジーヴス」がでたので読んだ。国書刊行会からはジーヴスものが3冊でるらしいし、文藝春秋からもでるらしい(こちらは第一巻は重なるけど他はジーヴスものではないらしい)。なんかほのぼのとぬるぬるな幸せな気分になれるのであった。
ちょっとできの悪い有閑階級のバーティーと切れ者であるその執事のジーヴス、バーティーの学友で惚れっぽいビンゴ、厳格なアガサ伯母さんなどがおりなすコメディです。現在からみればどたばたというほどでもないんだが、そのほのぼのした感じが良い。なんだか良い時代だよなあということでイギリスの人が今でも喜ぶのはわかるような気もする。少し時代はずれるけど、日本で明治は活気があって大正時代の浅草・上野は・・・というような感じかしら。学友の仲間意識やスポーツ魂(ギャンブルのことだ!)に燃えるあたりは今も昔もあんまりかわらないもんじゃろか?
語り手のバーティーはちょっと頭のできが・・・という感じでかかれているんだけど、ジーヴスを生かすためにはまあしょうがないし、ごたごたに巻き込まれるためでもあるんだろう。語り口や人間的な大きさは普通じゃないなあ、というわけでなんだか語り手バーティーのファンなのであった。しかもちょっと頭が・・・といったって当意即妙な話し口や詩の引用などをみても、その頃のできの悪さのレベルって高いやなあ、現代で馬鹿というと本当に何にも知らなかったりするし。このあたり階級の違いというのもあるのかな。
話は過度にならず、短編を寄せ集めて長編にしたようですが、前のパターンとは少し変えようとしていたり、うまく利用したりでおもしろかった。最後はそういうオチかい!というところまで楽しくてよい。ワンパターンだけど、水戸黄門みたいなもんなのだろうなあ。
「プリーストリー氏の問題」もそうだけど、こういうユーモア本って楽しいなあ。はやく続刊と文藝春秋からでないかなと思う。