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June 19, 2005

●ペテルブルグ物語

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崩壊した自作マシンの復旧中です。

そろそろナボコフも何か読もうと思うのだが、やはりその前に読んでおくべきかなあと思って、というかまだ読んでいなかったのかということで、群像社から出ているニコライ・ゴーゴリの「ペテルブルグ物語」を読んだ。タイトルは「ペテルブルグ物語」だけど、そういう題の小説が入っているわけではなく、「ネフスキイ大通り」「」「外套」というペテルブルクを背景とした作品群が入っている。ゴーゴリおもしろすぎる。若いうちに読んでおくべきだったのだった。

岩波文庫版も持っているんだけど、群像社版のほうは高いけどきれいだし、地図が入っているしアリトマンによる挿画まであるので、こちらで読んだ。同じペテルブルクものと言われる「狂人日記」や「肖像画」は岩波で読むしかないかな。講談社文芸文庫は手に入るんだろうか?

しかし、とにかくおもしろい。話を要約してしまうとしょうもない話になってしまうのですが、その語り口や登場人物の描写など、各場面が目に浮かぶようなすごさがある。また、悲しいというか残酷でありながらそれを笑いと同等に扱ってしまう感覚が良いね。その書き方の距離感や切り替え方も、まさに自在という感じ。落語の名人芸を聞いているようだ。つうか落語的な話芸と似ているのかもしれない。笑いをとったり異常なことの一部を取り出して言及したりしてあたりまえのように進めていくやり方は、魔術的リアリズムの元でもあるんだろうけど、落語にも似て基本的な話芸なのだと思った。

「ネフスキイ大通り」「鼻」「外套」どれもびっくらこくしおもしろいんだけど、個人的にはこの中ではやはり「外套」かな。批評や描写展開や外套と結婚してしまったかのような描写もおもしろいんだけど、最後の急に死んでから強気になっちゃうところがえらくおもしろかった。「ネフスキイ大通り」は途中で枝分かれしてきゅるきゅると巻き戻るような構成がすごい。なんというか映像的で、まるで映画の巻き戻しをはさんでいるかのような鮮やかさだ。「鼻」は題材的に小説読み始めの人でもとっつきやすいだろうと思う。が、単純に馬鹿話というわけでもなく、初心者から上級までそれぞれのレベルで楽しめるだろう。

そういう意味では、自分の読書歴というか読み方に応じて見えてくるものが違うような気もするので、折に触れて読むべきなのかもしれない。ロシア恐るべし。ゴーゴリ自身鼻が大きかったようであるが、ニコライ・ワシーリエヴィチ・ゴーゴリの名前をみているとニコライ・ワシ鼻ヴィチ・ゴーゴリと見えてくるのは、ナボコフ菌に冒されているのかもしれん。

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