●ジーヴズの事件簿
さて、「ジーヴズの事件簿」は文藝春秋版のP.G.ウッドハウスです。国書刊行会版の「比類なきジーヴス」とは重なっているんで、一冊だけ取るならこちらかな、という気もするんですが、はまっちゃえば全部買っとけ、って感じですので問題なし。で、国書刊行会版に入っていない話と、重なっている部分はすまんが最初の一部を読みました。次読み返すときは文藝春秋版からやろう。というわけで文藝春秋版のP.G.ウッドハウスはまずは3巻までの予定ですが、売れ行きによっては今後もあるのでみんな買えよ。イギリス落語だと思って読めばよろしい。
重なっていない分では、第10話「バーティ君の変心」が、ジーヴズが語る形式になっているのと、第13話「ガッシー救出作戦」がジーヴズものとして確立する前の姿でおもしろかった。さすがに一冊読むとパターンはわかってきて、もちろんその状況を楽しむのもあるんだけど、ちょっとジーヴズが解決してまとまりすぎているなあと思ったり。その分落ちは紫色の靴下を捨てさせたりするわけだけど、まとまりすぎていてちと薄味。「ガッシー救出作戦」はジーヴズはでてくることはくるけど、全く出番は無く、むしろバーティーがとんでもないことになっていくのが楽しい。最初は少しは解決に向かうのと見せながらジュリア叔母さん登場以降のナンセンスさの加速の仕方や、他の解決や状況を全部捨てて、最後の電報の落ちだけにしぼったような速度感が好きだ。他のジーブズものは型にはまった形式感ができちゃっているけど、この「ガッシー救出作戦」はナンセンス落語の間抜け落ち(いや考え落ちかなあ)みたいなもんで一瞬の切れ味が「いい仕事してますねえ」。なんか我ながらひねくれた楽しみ方してるなあ。
さて、差異ですが、国書刊行会版の「比類なきジーヴス」は「The Inimitable Jeeves」そのもので、文藝春秋版の「ジーヴズの事件簿」はその解説にある通り、「The Inimitable Jeeves」を含んで前後に追加されています。したがって、単体で買うなら金額を別にすると文藝春秋版のほうが国書刊行会版を完全に含んで、さらにたくさん入っています。そのかわり値段は2900円と2100円で差がありますね。ところで、某大型書店で「ジーヴズの事件簿」とボウエンの「幸せな秋の野原」がミステリ新刊として並んでいると、ちょっと(というかとっても)違和感でございます。
第1話「ジーヴズの初仕事」
第2話~第9話「The Inimitable Jeeves」全話
第10話「バーティ君の変心」
第11話「ジーヴズと白鳥の湖」
第12話「ジーヴズと降誕祭気分」
第13話「ガッシー救出作戦」
ジーヴス(ズ)をもっと読みたい病の人には国書刊行会から「よしきた、ジーヴス(Right Ho, Jeeves)」が出ていますが、これは重なっていないんじゃないかな。自宅にありますがみてない。近刊予定の「それゆけ、ジーヴス(Carry on, Jeeves)」は、上記の第1話、第10話が「Carry on, Jeeves」出典なので重なるんじゃないかなあと予想しています。ジーヴズもの一冊でとなると文藝春秋版なんですが、国書版のなんか可愛い装丁も結構気に入っています。どうせわたしゃ買うし。また、「よしきた、ジーヴス(Right Ho, Jeeves)」の解説にはジーヴズものの出版一覧があってこれは便利だす。
マイケル・イネスの「ハムレット復讐せよ」でも「エムズワース卿みたいな」貴族が出てきていたので、文藝春秋版の「エムズワース卿/ブランディングス城」シリーズ早く読みたーいです。でも若い頃は言えないような遊び方してたんだよなあ。。。
コメント
TBさせていただきました。
本を読んで笑ったのは、ほんとに久しぶりでした。
Posted by: タウム | September 6, 2006 08:35 PM
タウムさんはじめまして(かな?)
ジーヴズおもしろいですよね。なんだかんだ言いながら「エムズワース卿/ブランディングス城」積んであるだけなので、読みたいです。この秋には読めるかなあ。
Posted by: なおき | September 6, 2006 10:14 PM