●アルゼンチン短篇集-バベルの図書館
ムヒカ=ライネスの「七悪魔の旅」が7月に出るということなので、先に読んでおこうということです。「アルゼンチン短篇集」はいくつか拾い読みしてたんだけど、今回全部読んだ。傾向としてはだいたい有名どころがおもしろく、やはり有名になるだけのことはあるのかなと思ったり。最近イギリスとかロシアよりだけど、ラテンアメリカも捨てがたい。
「イスール」ルゴーネス
「塩の像」にも入っていて、昔読んだ記憶はあるが最後など全く忘れていた。種族の話もおもしろいんだけど、やはりヨーロッパ人とラテンアメリカ人に比べてしまう。文明化することあるいはそれを押し付けることが果たして幸せなことだったのか、深く考えさせられる。最後の言葉は和解ととっていいのか僕にはよくわからない。
「烏賊はおのれの墨を選ぶ」ビオイ=カサレス
これも前に読んでいたと思う。最初クトゥルゥかと思いましたぞ。ちょっとおもしろいけど、最初読んだ時ほどじゃないなあ。昔ほど人類を信用していないからかもしれない。最後のなまずはナイスです。
「運命の神さまはどじなお方」カンセーラ/ルサレータ
これは面白かった。最後の考え方が素敵だ。神を許す、というか。神に許されることしか考えない人が多いからねえ。昔の風景がノスタルジイという感じでいいなあ。時代は少し違うけど、最近「エヴィータ」のDVDを購入したので1930~40年代のアルゼンチンの雰囲気が見れてよかった。でもそのときにも「昔は良かったなあ」と言ってたんだろうなあ。
「占拠された家」コルタサル
もう何回か読んでいるんだけど、毎回そのときの体調で印象が違う。兄妹の関係が深く関係している読み方もしていたんだけど、今回は一族の収束というか斜陽というか時代の流れに消えていく運命の寓話のように読んでいる。もちろん独裁に対するなどいろいろな比喩は可能だろうけど、今回はそういう感じ方だった。その間口の広さが名作として残っているのだろうと思う。
「駅馬車」ムヒカ=ライネス
ムヒカ=ライネス目標だったんだけど、おもしろかった。出だしの方向性からすると、いったい何を訴えるつもりなのか・・・と見せながら全然違う方向に曲がっていくのが良い。最後もいいなあ。
「物」オカンボ
最後の一行はなるほどでした。
「チェスの師匠」ペルツァー
これは、まああんまり。最後、この人が相手なのはもう飽きちゃったので。
「わが身にほんとうに起こったこと」ペイロウ
これももう少しプロットや説明を省いても良いような。動機などうまくつながっていないような気がする。
「選ばれし人」バスケス
こういうのは世界史や宗教史に弱くピンとこないので悲しい。彷徨えるユダヤ人の話かと思った。