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July 14, 2005

●月が昇るとき

book-Mitchell-02.jpgグラディス・ミッチェルの「ソルトマーシュの殺人」が気に入ったので、勢いで晶文社からでている「月が昇るとき」も読んだ。こちらは13才の少年の視線(書いているのはもっと後の設定らしい)で書かれた連続殺人事件というか切り裂き魔の話なんだけど、妙に少年たちがよく、萩尾望都の「ギムナジウム」などを思い出させるような世界である。とはいえ、もっと下層階級なんだと思うけど。

「ソルトマーシュの殺人」に比べると、ちと事件自体はとっ散らかっているような気がするし、矛盾も多い気がするんだけど、少年の視点に合わせきったのは偉いのかもしれないと思った。その意味では最後にブラッドリー夫人が活躍しないのはちょっと不満だけど、それもありかな、と思う。前に書いた歪んだクリスティーもそのままという感じだけど、私にとって良い歪み方をしているので無問題。いずれにせよグラディス・ミッチェル好きなので今後も翻訳出版されれば買うぞ(ただし1冊だけど)と心に誓ったのでした。なんかDVDもありそうなのでちょっと考える。ヒアリングでわかるかなあ。

以下できれば読後のほうが。

切り裂き魔に対しての合理的な解決なんだけど、それでありながら犯人心理に関して全くブラッドリー夫人の説明がないのは、心理学者という設定からすると、すごいことかもしれんなーと思ったり。ついついいろいろ書きたくなっちゃうよね。それをすべてなくしたことでいろいろなことの余韻がすごく深くなっていると思う。少年の視点であるというのも含めて。

で、合理的な解決ではあるのだが、やはり背後には犯人の狂い方というか心理的な歪み方がいろいろと想像できておもしろい。また作者自体が若い男の子好きみたいでおもしろいね。ミッチェルって学校の先生で独身だったみたいですが。

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