●七悪魔の旅
久々に新刊を新刊のうちに読んだと言えよう。マヌエル・ムヒカ=ライネスの「七悪魔の旅」を読んだ。地獄の大魔王から叱責され、七つの大罪の悪魔たちが獲物を探して時空を超えて大騒ぎ、なんですが、とても面白かった。小説のなかで説明されるので、なんの知識がなくても笑えるけど、やはり悪魔の知識が少々と、出てくる場面と言うか歴史を少しでも知っているとより笑えると思われ。久々に「地獄の辞典」(ビアスじゃないよド・プランシー)を持ち出した。つうか講談社プラスアルファ文庫で文庫化されていたとは、世の中捨てたものではない、というかなんでもかんでも文庫化というか。でも手に入らんのか?
さて、マヌエル・ムヒカ=ライネスは「ボマルツォ公の回想」で有名だけど、入手したが積んでます、はい。というわけで、ムヒカ=ライネスはいくつかの短篇だけでしか知らなかったんだけど、その短篇はどれもひねくれていて面白かったので、期待ムンムンであった。「七悪魔の旅」も悪魔ということでもっと深刻な小説かと思ったらとんでもない、豪華絢爛な知識を振りまいた脱力系コメディとでもいいましょうか、なんか悪魔同志諸君のあまりのせこさと人間としての(いや悪魔としての)小ささに大笑いした。部下たちのプチ反乱ぶりも面白い。なんか人間以上に人間的すぎて、うーむやはり人間って7つの罪の集まりみたいなもんかのう、と改めて思った。同じ7つの大罪が題材でもでも映画の「Seven」とは偉い違いじゃのう。
で、ラテン・アメリカ的な部分はあまりない。もうこれはラテン・アメリカ文学であるかどうかは全く関係なく、作家ムヒカ=ライネスによる20世紀後半の現代の寓話的小説ってことなんだろうと勝手に思ったりする。まあラテン・アメリカ文学っていうとけっこう「ラテン・アメリカ的なもの」を潜在的に意識したりするので、注意しなければいかんなー。しかしムヒカ=ライネスおもしろいね。「ボマルツォ公の回想」も読まねばいかんなあ。ボマルツォ公よくわからんのでマンディアルグの「ボマルツォの怪物」も9買ってみたりしたのだが。その他「一角獣」とか「スカラベ」とか翻訳されないかなあ。
先月はマヌエル・ムヒカ=ライネスの本が出るよう、と大騒ぎしたのだが、今月末はスティーヴ・エリクソン「アムニジアスコープ」かな。「黒い時計の旅」も白水Uブックスから復刊されるようで。福武書店版も文庫版も持っていたはずなんだけど、文庫版行方不明なので、この際買っておこうかな。