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August 09, 2005

●第四の扉

book-Halter-01.jpg音楽も作らずに、忙しいのう、書くことないのう、とか考えているうちに購入していたCDやDVDがけっこう溜まってしまった。ま、順番にいきましょう。所詮タイムリーな紹介はしていないわけで。で、ポール・アルテの「第四の扉」を読んだ。ハヤカワポケミスです。推理小説です。本家を超えた「フランスのディクスン・カー」です。個人的好みとしてはひっかかるものがあるが、まずまずおもしろかったし、推理小説としては良くできているんだろう。その引っかかる部分が、私が推理小説専門になれない理由でもある。

私の本棚で、いまだ読まれずに積んである作品が多い作家はなんといってもディクスン・カーである。20冊近く積んであろうか?もちろん作品数が多くないとこういうことは起きないのであるが、それでもクリスティーやクイーンはほとんど読んだのだ。推理小説といえばディクスン・カー、カー・マニアであるが、私はどうもマニアにはなれないようで、クリスティーやクイーンは読めてもカーはうーんというところで、それでも積んであるのは「推理小説マニヤ」に偏向した憧れを抱いているからだろう。いつかは読んでやろうと買っているんだけどなかなか手が出ない。特にハヤカワミステリは消えるとなかなか手に入らないので、再版されれば買うんですが。もっとも有名どころの「火刑法廷」や「皇帝の嗅ぎ煙草入れ」「ユダの窓」「三つの棺」「曲がった蝶番」「盲目の理髪師」「 緑のカプセルの謎」「プレーグ・コートの殺人「白い僧院の殺人」「赤後家の殺人」「読者よ欺かるるなかれ」とか読んでいるはずなんだけど、まだまだあるんだよなあ。どこか私の求めるものとちょっと違うところが悲しいというかもったいないというか。。。

いや、カーの話ではなくポール・アルテの話であった。さて本題の「第四の扉」だけど、カーの雰囲気をよくだしていると思うんですが、弱点も同じ感じです。そう、日本の新本格とやらもそうなんですが、流れ的にはカー・クイーンの末流であって、クリスティーのような、事件や謎は小説を読み進めるためのエンジンである(エンジンだけ無駄にがんばっても仕方ない)というバランスが微妙なところで違うんですよね。アルテにしても、ちょっと、不可思議な雰囲気や謎にバランスが傾きすぎていて、なんつうか全体的にはもの足りんぎみ。でもこれは推理小説ファン落ちこぼれの立場なのであって、推理小説ファンにはこれがいいのかなあとも思う。でも私は、密室の謎なんかどうでもよい(小説の文字で記述すること自体密室には向かない作業だし)ので、マイケル・イネスやグラハム・ミッチェル、アントニー・バークリーといったちょっとひねくれた流れを好んでいるのだと思う。

じゃあダメなのかと言うと、よくできていると思うのです。第三部で、えー?これをやっちゃうの?って感じだったんですけど、最後はうまく着地したかなと思った。フランス推理小説なんて読まんので比較はできないんだけど、最初の風呂敷の広げ方からみるとうまくまとまったかなという感じ。密室の謎も、まあそんなもんかな。でも・・・個人的に気に入らないのは、

以下ネタバレを含みます。注意せよ。

やはり全体の事件が複合的な内容だってことですね。私が望むのは悪意の真犯人が悪意と余裕を持って犯罪をもてあそぶことであって、プロット上わかるんだけど、そういう複合的なのは、ある種偶然的な絡みもあってあんまし好きじゃないんです。贅沢すぎる要求かもしれないんですが。まあ一作だけでの判断もできないので他作を期待してみます。

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