●パラダイス・モーテル
エリック・マコーマックの「パラダイス・モーテル」を読んだ。前に短篇集である「隠し部屋を査察して」を読んで、あまりに変でおもしろいなあと思っていたんだけど、「パラダイス・モーテル」もやはりおかしい。この「おかしい」は「おもしろい」ではなく「狂っている」であります。以前に「カフカ+ボルヘスに筒井康隆を乾燥させてまぶした感じ。どちらかというと幻想小説にすれた人でないつらいかもしれません。」と書きましたが今回もよりいっそうそんな感じで、つうか小説と言うか散文詩というか、なんか違和感を感じつつ、それでも奔放なイメージにはすんげーと思いつつ。
「ある町で、ある外科医が妻を殺し、バラバラにしたその体の一部を四人の子供の体内に埋めこんだ。幼いころ、そんな奇怪な事件の話をしてくれたのは、三十年間の失踪から戻って死の床に伏していた祖父だった。いまわたしは裕福な中年となり、ここパラダイス・モーテルで海を眺めながらうたた寝をしている。ふと、あの四人の子供のその後の運命がどうなったか、調べてみる気になった…虚実の皮膜を切り裂く〈語り=騙り〉の現代文学。」と紹介にはあって、まあ中身はそうなんだけど、壮大な語り=騙りなわけで、最後もしかしたらと思っていたらそうだったよん、って感じ。もしかしたらと思ってしまったので、そんなことは無視している「隠し部屋を査察して」のほうがおもしろいかもしんない。
元々この話自体短編的なイメージのつながりであって、元ネタっぽいのは「隠し部屋を査察して」にいくつかあるわけで、どちらかかというと「パラダイス・モーテル」を先に読んで、ああ、マコーマックってなんて変なやつなんだ、と感じた後で「隠し部屋を査察して」を読んだほうがおもしろいかもしれない。こういうのは免疫ができていると、そんなに驚かないので、そのあたりがちょっと不満だな。また、長編という形式にまだちょっとこなれていない気もするので2作目の「ミステリウム」も読みたいなあ。翻訳でないかなあ、でも「パラダイス・モーテル」がこんなアホさ加減だと無理かなあ。
で、これがマジックリアリズムかというとちょっとイメージの異なるところもあって、シュールリアリズムに近いのではなかろうか?発想はシュールな感じ。いや両者にどんな違いがあるのかもわかっていないんだけど。ついでに表題も「はらいそ宿屋」とかだと笑えるか。。。「みんなではらいそさいくだ」