●アプルビイズ・エンド
論創社という出版社はあんまり知らなかったんだけど、黄金期などの日本では知られていないような推理小説を翻訳してくれているらしい。9月末にはマイケル・イネスの「アプルビイズ・エンド」がでたので、うほうほと踊りながら購入したのです。なお、10月初頭には手をひらひらさせながら国書刊行会のほうの「ストッププレス」も購入した。「アプルビイズ・エンド」はいってみりゃバカミスのはしりみたいな気もするけどハイブロウなテンションの会話や表現は一行毎におもしろい。もうなんつうか遊びのわかったひねくれもののための本というか、うっきゃーという感じです。他の作家の本も買いますで、ぜひ論創社には他のイネスの本も翻訳していただきたく。
アプルビイ警部が雪のために、列車で知り合ったレイブン家の人々にさそわれて降りた駅は「アプルビイズ・エンド」という駅で、実はレイブン家には不思議なことが起こっていた。。。。もうおもしろすぎるぞ。アップルビイだって?と驚いたらアップルビイズ・エンドという駅名だったりヘイ、ヘイホーと踊りだしたかと思うとヘイホーという従者を呼んでたりするところがあまりにもくだらなくて笑える。いや本当に笑えるんです。まあこんな笑いだけでなくすっとぼけた会話やシチュエーション、普通に織り込まれる引用や変な性格など、英国人ってやっぱしゆがんでるよな、そこがおもしろいんだけど。全然万人向けでないウッドハウスと言った感じでしょうか?アントニー・バークリーにも通じるけど、冗談や文章的にはもっと嫌味にすかした感じ。
このあたりは殊能氏の日記の紹介がそのまますばらしいので、そちらにまかせる。「爆笑しつづけたあげく、読んだあとにはみごとなくらい何も残らない。」というのは残らなさ加減が残っているというか。。。私は「ハムレット復讐せよ」や「ある詩人の挽歌」のイメージがあったのでもう少し重い感じかと思っていました。なるほどそれで「二人のマイケルに」なのね。
とにかく文学的なジョークや織り込んだ句も、わかってもわかんなくてもどっちでもいいや、という感じがあって、そのあたりナボコフの言葉遊び的な雰囲気(意図としてですよ)もあって楽しい。でも原文は難しそうだな。他のイネスも読みたいんですけど。。。なお、奥さんのジュディスはそういえば「アプルビイの事件簿」で出てきていたなあ、でもあんまり印象になかった。短編は結構普通に見えちゃうので、総じて壮大な冗談をかます長編のほうが面白い気がする。