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October 21, 2005

●カリブ諸島の手がかり

book-stribling-01.jpg国書刊行会の世界探偵小説全集からT.S.ストリブリングの「カリブ諸島の手がかり」を読んだ。Clues of the Caribbees という題なのだが、Cruise of the Caribbees(カリブ諸島の船旅)とかけてるのかしらんなどと思いつつ、われながらナボコフ病だなあと。まあそんなのはおいておいて、カリブ諸島を背景にしたアメリカ人であるポジオリ教授が探偵として事件に当たる短編集なのですが、全然名探偵ではないポジオリ教授がおもしろすぎる。いや、もっというと探偵小説ですらないわけですが。最後はやはり強烈なので、お奨めしておきたい。右のリンクで「時系列の読書録」で、個人的な採点をしているわけですが、これは★4つ(5点満点)としておきましょう。

アメリカ人である心理学者のポジオリ教授が、カリブ諸島を旅するうちに事件に遭遇し、意図しないうちに名探偵に祭り上げられて最後は・・・というのがおもしろい。特に後のほうになると、自分の名声を恐れたり喜んだりしながらというのが楽しすぎる。一応最後の短編が有名なようですが、私はその前のものもそれぞれおもしろかった。ただ推理小説としておもしろかったのとはちょっと違うけど。最後の短編も本当に味わうには前の短編を読んでおいたほうが良い気がする。翻訳ではネイティブなかたがたが関西弁だったりするんだけど、ちょっとなれなれしい感じがするんで、自分のイメージでは東北系の言語のほうが感じが出るような(勝手な思い込み)。

「亡命者たち」
ラテン系気質の事件ということでしょうか? まあトリックはすぐにわかったんだけど、その皮肉な扱いがおもしろいね。それよりはその後の最後の落ちのような展開がおもしろい。ラテン人情熱てきぃ。ポジオリ教授はまだしも探偵らしいが、最後は取り残されたような気分だね。

「カパイシアンの長官」
すでにこの事件からポジオリ教授もてあそばれまくりなのでおもしろい。推理小説ではないですが。。。ただ、やはり長官の姿勢がいいね。タイトルになるだけあって印象に残ります。

「アントゥンの指紋」
これも推理小説としてはどうかと思うのですが、最後の100フランが楽しい。事件の飾り方がフランス風と言うことなのかな?

「クリケット」
これはもうイギリス人気質のジョークとしか思えないひねり方でグッド。ろくに解決もしないのに有名になっていくポジオリ教授がグッドジョブ。ま、因果はめぐる訳ですが。このあたりではポジオリ教授けっこうひどい扱いですな。イギリス人から見たアメリカ人というか、イギリス人から見たと思われるアメリカ人を自己嘲笑するアメリカ人作家というか。。。

「ベナレスへの道」
もうこれは短編選にもはいっているようなので。すんげーおもしろいんですけど、皮肉っぽいんですけど、やはり短編集全体を読んでポジオリ教授のことを知っておいたほうがおもしろい。それなりになぞは解くんだけど自己保全的で小心で・・・というのがけっこう全体に効いている。最後は・・・もう楽しいなあ。小説の形式としておもしろい。


【注意!】以降本書を読んでからのほうが絶対に良いです。

「亡命者たち」
最後、実は意図的な殺人事件であったという解釈は、本当は成り立たないんだけど、そうも思わせるというか考えたくなる気質なのであった。親よりも一目ぼれの愛人を選ぶ、みたいな。

「クリケット」
最後にポジオリ教授の功績にしてしまって、しかも本人が喜んでいるあたりが面白すぎる。犯人はまあ誰でもよさそうなので推理小説としては無意味なんだけど、引っ掛ける小説というかイギリス風味の徹底的嫌味小説というところでしょうか。

「ベナレスへの道」
動機の問題よりも小説の形式として、落語の落ちみたいでおもしろいね。もはやスリラーに突入なわけですが、まあその後何事もなく復活されているわけですから、内容からも夢落ちとも読めるわけで。某長大作の夢落ちよりはこちらのほうがよほどスリリングだぞ。

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