●アプルビイの事件簿
マイケル・イネスのものでは大物の「ストップ・プレス」が積まれているんだけど、途中で止まっていた創元推理文庫の短編集「アプルビイの事件簿」をもう一回最初から読み直した。けっこうしっかりした短編集だなと3.5点。ついでに森一訳 勉誠社の「アップルビィ警部の事件簿」も読みました。勉誠社の「アップルビィ警部の事件簿」のほうは訳の問題もあり星3つ。でもイネス・ファンは読むように。
創元推理文庫の短編集「アプルビイの事件簿」は真ん中あたりまで読んでいたんだけど、このさい読み直しました。「家霊の所業」など奥さんのジュディスうるさい、とか思ってたんだけど、「アプルビイズ・エンド」を読んだあとだと、うーんジュディスはやはりこうでなきゃという感じです。小説を読むときは自分のコンテキストも重要ですなあ。
創元推理文庫の短編集「アプルビイの事件簿」は結構本格的で、「死者の靴」などは力が入っているし、その他のものもおもしろい。そういいながら、けっこう最後でファルス派巨匠としてやってくれるのは「終わりの終わり」。最後は笑った。ショートショートの「本物のモートン」「ロンバード卿の蔵書」も面白いんだけど、特に「ロンバード卿の蔵書」はトリックが、というかはまりました。こういう犯人はえらいね。
勉誠社の「アップルビィ警部の事件簿」のほうは、大学の先生が教科書を訳した感じで、なんかえらくどうなんだろうと思ったりするし、医者や牧師に勝手に名前付けちゃうのもうーんなんだけど、まあ途中からなれちゃった。でもどれだったか、ジュディスが「ジョン卿、いつもこられませんのに」といったおすましした訳は、「アプルビイズ・エンド」などを読んでいると、全然違うぞーといいたくなってしまう。本当にこの先生、他の翻訳とか読んでないのかな。話としてはそれぞれ面白かったけど、イネスのばかばかしさは「獅子と一角獣」かな。獅子と一角獣のかっこして戦うあたりが大笑いです。こちらは最後についているセクストンものはつまらんです。
アプルビイの事件簿
「死者の靴」
「ハンカチーフの悲劇」
「家霊の所業」
「本物のモートン」
「テープの謎」
「ヘリテージ卿の肖像画」
「ロンバード卿の蔵書」
「罠」
「終わりの終わり」
アップルビィ警部の事件簿
「アップルビィ最初の事件」
「復讐の女神島」
「ビレアリスの洞窟」
「タイムの砂浜」
「ウィリアム征服王」
「獅子と一角獣」