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November 18, 2005

●どんがらがん

book-Davidson-01.jpgアヴラム・デイヴィッドスンなんて知りませんなー、殊能将之氏推奨かあ、と思って読み始めたが、解説を読んでいて思い出した。そうだ、クイーンの代筆やってたじゃん、しかも私があんまり好きではない「第八の日」に途中で放り投げた「三角形の第四辺」。それじゃだめだめかなというと「どんがらがん」は少し面白かった。で、わかったのはデイヴィッドスンはプロットというかアイディアへの肉付けはできるが、登場人物を肉付けしていく筆力ではないということだ。クイーンのものは梗概以上におもしろくなかったのは、やはり自分のプロットでひねくる文体なんだよなあ。登場人物を肉付けしていく文体じゃないのね。

タイトル作の「どんがらがん」が面白い。これがないと星3つなんだけど、「どんがらがん」は星4つ。で、本としては星3.5ということで。

ゴーレム

これはおもしろかった。いい加減なバランスが好きだ。

物は証言できない
さあ、みんなで眠ろう

物語およびSFの短編としては構成もオチもしっかりしているけど、ちょっと壊れたところがないので不満。完全に割り切れるとあまりがなくて面白くない。割り切れないそのあまりの部分が「文学」になるんだと思うが、まあデイヴィッドスンは文学なんか目指していたわけではないんだろうけど(私はそこを望んでしまう)。

さもなくば海は牡蠣でいっぱいに

これはおもしろかった。いい加減なバランスが好きだ。実存的楽観主義がよい。

ラホール駐屯地での出来事

物語のオチとしてはよくできているが、まあ普通かな。これも余剰がないところが食い足りない。詩の部分が余剰かもしれんが、知らないんだよ。

ィーン・エステル、おうちはどこさ?

おもしろかった。これは好きだ。でも翻訳の文体によっている部分も大きいと思う。

尾をつながれた王族

ちょっとおもしろい、けど寓話的な最後はそれほどでもない。

サシェヴラル

ちょっと楽しい。ちょっと残酷。

眺めのいい静かな部屋

なんか当たり前すぎて物足りません。いや小物がうまくつながっているのはわかるけど、別に読んで心は動かない。

グーバーども

おもしろかった。これも好きだ。ウンパルンパを思い出した。

パシャルーニー大尉

なんか当たり前すぎて物足りません。

そして赤い薔薇一輪を忘れずに

これもなんか当たり前すぎて物足りません。そんなに弱者への視線がやさしいわけでもないと思う。どっちも均等にいじめている感じ。

ナポリ

これはよい。旅人は所詮異人(まれびと)で異世界を覗いた感じがいいなあ。世界が時間的に近くなることと意識として近くなることは違うと思う。日本人だからより違和感があってグッド。つうか割り切ったオチではないので深さを感じる。

すべての根っこに宿る力

うーん、微妙。わかるけどさあって感じ。ミステリ・・・?そんなことないよなあ。。。

ナイルの水源

うーん、解説では奇想とか傑作とか書いてるけど、それほどでもって感じ。というのは、私にとってはせっかく広がった物語が一番つまらんオチになったような感じなんですよね。やはり最後は一家の謎と影を残したまま彼がじじいになって、若者におごってもらっているときに「ナイルの水源・・・」と一言つぶやいて息絶えてほしかった。

どんがらがん

これは面白かった。ぜんぜん弱者への暖かい視線じゃないところがよい。Bumberboomを「どんがらがん」と翻訳しているのがすんごくよい。どん・がら・がーん、は大切だよね。ジャガーノートは Magic the Gathering を思い出して大笑い。ジャガーノートは大物だからなあ。。。また、もちろん「猿の惑星」と「ゴーストバスターズ」を思い出したり。マリオンの無責任さがよいね。こういう作品のほうが向いている気がする。

やはり全体としてアイデアとオチに大きく寄りかかっているのとあんまり余韻がなく、そのあたりがアメリカ的なのかよくわからんが最近はボウエンやスパークの短編のほうが好きなのでいまひとつぴんとこない感じである。しかしこれはターナーの水彩画とアメコミを比較してターナーが好きやーといっている感じかもしれず、比較している自分がきっとバカなのだろうと思う。

また、あんまり弱者への暖かい視線というのも感じなかった。前半は弱者をいじめ後半は強者をいじめてるだけでは。。。まあ最後は強者をいじめるほうが物語的には収まりが良いというだけで。いずれねせよ多層的な感じを得られるような小説ではないので、そのあたりが不満かな。それを望むこと自体間違っているのかもしれんけど。

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