●アレン警部登場
ナイオ・マーシュの「ランプリイ家の殺人」がそれなりにおもしろかったので、論創社の「アレン警部登場」を読んだ。ナイオ・マーシュの処女作であるらしい。トリックというか推理小説としての柱は少し弱い気もするんだけど、やはり登場人物やアレンの冷たいあしらいが良いので、まずまずおもしろかった。推理小説としては星3つだけど、その通俗小説部分のうまさで+0.5で、3.5としたい。
今年も論創社から出るみたいだし、ハヤカワミステリで入手した「死の序曲」「ヴァルカン劇場の夜」も読まなきゃなあ。
招待された邸に集まる一癖ありそうな人々と人間関係、予定された殺人ゲームが実際の殺人を呼んだのか、ともうお決まりのパターンのような枠のお話なんですが、それでもおもしろいのはやはり作者の腕というやつでしょうか。うーん本格を満喫というのは、細かい登場人物の性格や設定の雰囲気がやはりモノをいうわけで、トリックの問題じゃないよなあ、と思った。
特に殺人が起きてアレン警部が登場してからは、状況調査や聞き込みが主にならざるを得ないんだけど、うまく章の終わりには少し意外な方向に持っていったり、うまく盛り上がったところで切ったり、何か小さな事件を起こしたりで、こういう地道な構成の努力がうまくいってるんだろうと思う。
そうでないと、トリックだけみると最後は「おいおい、途中重要だと言っていたことと違うぞー」とか、「ありえーねーだろ、それでドラと剣はさあ」とか、「で、結局計画的なのか?これは」とか突っ込みたくなっちゃうんだけど、まあそれなりに読めるところがすごいというか。マーシュは今後も論創社から出るみたいなので続けて読みたいと思っているです。