●間違いの悲劇
エラリー・クイーンの最後の聖典・・・というほどクイーンに心酔しているわけではないのですが、最後の梗概とかにも興味があったので読んでみた。「間違いの悲劇」(The Tragedy of the Errors)は最後の長編である「心地よく秘密めいた場所」の次回作にあたる長編のためにダネイさんが用意したものです。なるほどシノプシス(梗概)とはこういうものかと勉強になった。内容は後期のクイーンらしいなあ。。。まあこれはそれなりにファンならば読んでも良い。が、同時に入ったほかの短編は単なるなぞなぞ程度なので、もしクイーン以外の作者の短編として読めば壁に投げつけているかもしれない。というわけで、星2つで。ファン以外には推薦はとてもできませぬ。。。でも「最後の一撃」が読みたくなったなあ。
未発表長編のシノプシス「間違いの悲劇」に、これまで単行本に収録されていなかった短編7編を同時収録するのだが、最初の「動機」をのぞいてほかは、私にとってはくずなのでどうでもよい。つうか設定を事件にしなければ単なるつまらんなぞなぞです。つうかもともと推理小説がそういうものだ、とは言えるかもしれんがそうは思いたくはないのだよ。
で、「間違いの悲劇」は確かにこっているしクイーンのいろいろな主題が入っていておもしろい。が、最後の動機に関する問答はさすがにこれでは納得がいかない。もしきちんと書かれていたら納得できるのかなあとも思うがとっても疑問である。二つの動機がが、といっても結局片方は自己欺瞞ではないのかと思ったり。また真犯人のやり方も無茶ありすぎ。これを文章力でどれだけそれらしくみせるかが実は推理小説の腕なのかもしれんけど。まあそういうことは書いているダネイさんが一番良くわかっていて、冒頭からカットした文に「この物語は、アリスの『不思議の国』のように、妖精の論理が存在する世界でしか成立しない。・・・(後略)」とあるもんね。あ、犯人はわかりましたけどね。
ただ、これで懐かしくなって読み返すには「最後の女」や「心地よく秘密めいた場所」は弱過ぎるので、やはり「最後の一撃」とか「悪の起源」あたりかなあ。「十日間の不思議」は枯れてないからねえ。で、良いクイーンファンではないんだけど、前にも書いたとおり初期の作品がどちらかというとうっとーしくて嫌いなのだ。つまりは私は動機や犯人の人間性に興味があって、犯人を示す論理にはあんまり興味がないらしい(でも推理小説を読む以上は驚かされる犯人であってほしい)。なので自選のクイーンをあげておくと、以下のとおり。
- 靴に棲む老婆
- フォックス家の殺人
- 十日間の不思議
- 九尾の猫
- ダブル・ダブル
- 悪の起源
- 最後の一撃
あまりに偏っていていかんなあ。これから読もうという人は、素直に国名シリーズとドルリー・レーンシリーズから入ったほうが良いです。