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March 19, 2006

●ロジャー・シェリンガムとヴェインの謎

book-berkeley-05.jpg別に晶文社ミステリを選んで読んでいるわけじゃないけど、部屋を片付けているうちに途中で挫折していたアントニー・バークリーの「ロジャー・シェリンガムとヴェインの謎」を発見し、最初から読み直して読了。途中でわかっちゃう部分もあるんだけど、あいかわらずシェリンガム君がやってくれるのでよし。今回からモーズビー警部も登場するのでこれもよし。

で、1920年代の作品ではあるが、すでにアンチ推理小説の気分があってそれもよし。構成的にはもう少し古典の某作品に似てるなあ。で、面白くて個人的には好きなんだけど、作品の出来としてはまあ星3.5ということで。でも十分楽しめるよ。さてあとは「絹靴下殺人事件」を読めば、バークリーで訳されているのは大体読んだことになるかな。次はフランシス・アイルズ名義か(全然読んでねー)。

さて、ウィッチフォード事件で名をあげたシェリンガム君は新聞社の特派員としてヴェイン夫人が崖から落ちた事件に挑みます。対するは沈着冷静、プロのモーズビー警部。さて、この事件を解決するのは・・・

やはり相変わらずのシェリンガムの強(狂?)躁状態で事件をいろいろとかき混ぜてくれます。モース警部が躁状態になるとこんな感じかなあ、というかこちらが先なわけですが。で、バークリー得意の多重解決というか事件の展開のさせ方はやっぱりうまいなあと思う。古いといえば古いんですが、最近翻訳されたとはいえ、1920年代のものですからねえ。

ただ、大きな全体のトリックというかつくりは、さすがにいろいろ経験してくると分かっちゃうけど、これは作品が悪いわけではなくて読んでいる順が、その後のフォロワーのほうを先に読んでたりするわけで。また事件全体もそれほど凝ったものでもないので、そのあたりが不満といえば不満だろうか。まあそのあたりもう慣れちゃって、評価が下がりそうですが、この作品の書かれた時期を考えると仕方ないよね。このあたり私はバークリーに甘いのかもしれない。もっともトリックや構成を楽しんでいるというよりも、シェリンガムのどたばたぶりと会話のおもしろさを楽しんでいるので、それでいいのだ。

で、もうその狂騒ぶりが最後の苦さへの良い複線となっているし、アンチ推理小説ぶりを発揮しているともいえる。ただ、言えるのはやはりこの一冊だけ読んで、なんじゃこりゃ、シェリンガムってなんて奴だ!と言ってもしょうがないってこと。やはりシェリンガムを好きになっちゃったら全部読もう!でもうるさそうなので、実際にはそばにいて欲しくないけど。

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