●死の序曲
さて、マンドリン系の人に質問ですが、「死の序曲」とはどの曲でしょう?劇的序曲?うんにゃ。マネンテでもファルボでも帰山栄治でも吉水秀徳でもなく、実は E.ネヴィンの「ヴェニスの一日」なのであります。うっひゃあ。
ナイオ・マーシュの「死の序曲」を読んだのですが、マーシュは3冊目だけど、おもしろい!ぼくはマーシュ好きかも。「死の序曲」は典型的なカントリーもので、地方の貴族の一家、牧師と娘、オールドミスの老猫×2、医者、怪しい女性、などのいろんな怪しい人間関係の中で、教会のピアノを買い換えるための基金募集の芝居が行われようとしています。その序曲としてのピアノ演奏が始まった瞬間、ピアノの中から轟然たる銃声が。。。その曲がラフマニノフの「嬰ハ短調序曲」とネヴィンの「ヴェニスの一日」(作中では「ヴェニスの組曲」)なんですよ。単に曲名ではなくて、けっこう性格に絡んで出てくるので笑える。とともに男前のアレン警部けっこう好きだし、人間模様も面白く、何しろ各シーンが印象的なのはマーシュが演劇畑のということもあるかもしれません。地味といえば地味な事件なんだけどカントリーものだからしかたないか。で、★4.0 なんだけど、「ヴェニスの一日」分も少々加味されているかも。
こういう推理小説が好きです。まあ地味に犯人当てというか犯人はわかっちゃっても、細かいねたがけっこうおもしろい。玉ねぎの話とか殺人トリックの仕立ても無理なく、最後まで劇のようで好きだ。キャラクターがそれぞれ立っているのがいいなあ。典型的なカントリーハウスものですが、嫌味なオールドミスを2人投入するという大技を使いながら、うまくやってるなあと思った。アレンがでてきて調査に入ると聞き込みは少々細かいので地味になっちゃうんだけど、ところどころでひねりながら進めているのと、問題点をうまくまとめながら進んでくれるのでいい。マーシュの作品はトリックよりもドラマとして読みたいんだけど、私の好みであります。まだ読むぞー。
演劇畑ということで、出てくる劇や曲もそれぞれ凝ってるんだろうなあと思う。劇のほうが全くわからないのがちょっとくやしい。選曲も凝っているので、きっと劇のほうも知っていると笑えるんだろうなあ、と残念だ。で、曲のほうは老嬢がそれぞれ得意曲としてラフマニノフの「嬰ハ短調序曲」とネヴィンの「ヴェニスの一日」を抱えて反発するんだけど、それぞれの曲調が彼女らの性格を現していて笑える。
ネヴィンの「ヴェニスの一日」は前世紀初めには有名だったんだろうけど、今はクラシックファンでもしらんだろうなあ。マンドリンでは中野二郎氏の編曲で時々演奏されるので有名曲なんだけど。その曲の使われ方がおもしろい。
『彼女の対抗用の曲はエスルバアト・ネェヴィンの「ヴェニスの組曲」だつたが、弾き方が不正確で沈んだ調子なので、甘いサッカリンのようなメロディが、伴奏音と絶対に調和しなかつた。』
『「観客を失望させることはできないし、、演奏は運指法を代えてできますよ、ということでした。勿論、いつものヴェニスの組曲のことでしょうな」
「ええ」とダイナアは憂鬱げに答えた。「『夜明け』と、『運河の上』を序曲に、『夜曲』を幕間にですわ、絶対にあきらめないわね」』
『「お得意の『ヴェニスの組曲』を弾いてはいけないといわれはしないかと心配したんです」とヘンリはいつた。「エスルバアト・ネェヴィンの曲をご推賞なさいますか、アレンさん」
「いいえ」と、アレンがいつた。
「あれは大嫌いです」と、ヘンリは陰うつげにいつた。』
など、曲知っている人には笑えるシーン満載ですので。「日々是音楽」で作るって公開してみるのが筋かとは思うんですが、中野二郎氏編曲が登録されているので、原譜からじゃないといかんのかなあ。。。