●レオナルドのユダ
「レオナルドのユダ」でぐぐると長野まゆみが出てきて困る。レオ・ペルッツの遺作の「レオナルドのユダ」である。しかも紀伊国屋書店では芸術書のところに置かれていて見つからずに困った。うーん、小説だよなあ。。。さて、世の中ダ・ヴィンチ祭開催中のようなので、、、というわけではなく、単に年末に読んだ「最後の審判の巨匠」がおもしろかったので読んでみた。
で、やはりペルッツって語り口がうますぎてプロの技やのうと感心する。背景も相当調べてあるんだろうなあ。でもそれがさりげない感じで書かれていて、うーんうまい。もっともそのあたりがうますぎるのがペルッツの弱点といいましょうか、あんまり考える暇も与えずに読んじゃうんだよね。もっとも遺作で凝り方も少ないのかあっさりと読めてしまう。文学の香りよりおもしろさが先立っちゃうんだよなあ。で、星4つ。
タイトルの「レオナルドのユダ」というのは、最後の晩餐を描こうとしてユダの顔を探せずに困っているレオナルド・ダ・ヴィンチはどちらかと枠の話で、ミラノで借金を取り返そうとする馬商人のベーハイムの話が主である。話自体は結構単純でオチも含めてわかりやすいので話だけみると小話か落語みたいなんだけど、書きっぷりがうまくやはりこういう部分が小説だなあと思うのであった。三人称的な記述からベーハイムの思い込みの一人称的な記述まで、しかもさりげなく小道具的なふりをいろいろしてあるあたりなんか憎いねえ。書いたように遺作ということで、ペルッツの思ったように手は入れられていないのかもしれないんだけど、話自体が単純なので、これくらいがよいのかなと思ったりもする。
翻訳は最初ちょっとと思った部分もあるけど、すぐにそれほど気にならなくなった。しかし解説の説明はやはり物足りず。しかもすでに翻訳が出ている「第三の魔弾」を他の訳していたりで、ちょっと不満。あと出版社が芸術書系なんだけど、芸術コーナーに置くのはかわいそうなのでやめてほしい。ジュンク堂はさすがにドイツ文学のところにあったなあ。で、この解説・・・よりも「最後の審判の巨匠」の解説で読んだペルッツの他の作品どれも読みてー。ぜひどこかで出してくれないかなあ。