« サプライズ | メイン | 賀茂別雷神社 »

June 09, 2006

●誰の死体?

book-Sayers-01.jpgアリンガムの「霧の中の虎」のときに書いたように、挫折していたんだけど、なんか読み終えちゃいました。ドロシー・L. セイヤーズはクリスティーと比較し称されるようですが、読んだことがなかった。私が推理小説にはまっていた第一期は中学~高校で、その頃セイヤーズなんて手にはいんなかったよなあ。やはりそういう刷り込みは大きいかもしれない。その後新本格とかも読んだけど、やはり黄金期のものが面白いし、イギリスのもののほうがひねくれていてよいのです。

で、ピーター卿うざいので一回は挫折したんだけど、その後つらつらと読んでいくとおもしろくなってきた。事件というかトリック自体はちと古い気もするが考えてみると1920年代の作品なのである。その頃で比較するとクリスティーよりはよほど完成度が高い気もするのだ。「誰の死体? 」は星3.5ということで。

どちらかというと「何がおきているんだろう」型の推理小説で、、、というか推理よりはピーター卿のキャラクターと従僕のバンターとのやりとり、お母様であらせられる先代公妃さまなどとのやりとりを楽しんで、引用をふんふん楽しんでいくのが良いのだろう。でも「何が起こっているんだろう」型の小説はうまく興味を保たせながら驚かせるのは(はい密室ですよりは)難しいと思っているので、最初からそれをやるのは尊敬しちまうのであった。で、ピーター卿のようなキャラクターは慣れて来れば癖になるわけで、また読んでいこうかとも思う。

それと良かったのはやはり犯人像がきちんと悪意をもってくれているところであった。現実の事件は嫌だがせめて小説の犯人はそうでないと面白くない。もっとも途中から挫折を越えて読んだのは、犯人の動機としてもっとひどいものを想像してしまったためでもある。ただそこまでではなかったらしいのが残念だ。もっとも私の想定した動機では準備などできないんだけど。

私にとってはトリックがどうであろうと、これは「本格」なのであって、探偵や登場人物の楽しさもあるけど、やはり犯人によるところが大きいのかもしれない。セイヤーズはまだまだ読んでないのがたくさん、、、つうかどれも読んでいないわけで、まあゆっくりと読むさ。

コメントする