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June 12, 2006

●古代日本正史ほか

さて、いろいろと断片的に神社の話や神様の話を書いているが、なんのこっちゃという人も多いだろうと思う。そうはいっても今後も断片的に書きそうな気がするので、もしかしたら100人に一人くらい興味を持つ人もいるかもしれず、少し背景を書いておこうと思う。なお BGM は鈴木静一氏の「邪馬台」でお願いしたい。カテゴリーは「そうだ京都に行こう」にしているが、この項目は「そうだ飛鳥に行こう」のほうがふさわしい。

日本の神話というと「古事記」「日本書紀」が基本であるのだが、さてそれは単なる神話なのか、それともいくらかの真実を含んでいるのか、それとも何らかの意図を持って巧みに作られたものであるのか、ということである。まずは出雲神話はまったくの虚構であって、山陰にそのような巨大な国家は有り得ず、大和に対して鬼門の方角に想定された仮想敵国というのがかつての(学会の)常識であったが、現在では荒神谷遺跡のように銅剣が日本最多の358本も発見されたりして、もはや出雲になにもなかったとはいえない状況である。この数字はあまり感動しないかもしれないけど、それまでに日本で発見された銅剣の数を一箇所の遺跡で軽く越えた数字なのである。さて、では日本創世はどのようなもので、誰がいったい何のために虚構を構築したのか?

で、それを独自の方法で調査し書かれたのが、原田常治氏の「古代日本正史―記紀以前の資料による」である。これは「古事記」「日本書紀」が信用できないなら、それ以前に建てられた神社の由緒を調べることで、神々の体系を探り出そうとしているのがおもしろい。もっとも思い込み部分や熱意はあっても客観性のない部分があり全部をそのまま飲み込むのは難しいのだけど、スサノオの意味や忘れられたニギハヤヒを掘り起こしているところは意味があるんじゃないかと思う。眼からうろこの部分も多いが、その思い込み的な文体もあって、反論とか論ずるに値せずと言う意見も多い。もっとも、学者様の学説でももっと思い込みでしかないものも多いんだけど。この本自体は非常に読みにくいと思う。なお「上代日本正史」もおもしろいけど「古代日本正史」ほどではない。

book-haou.jpgその方式をまったくそのまま踏襲して読みやすくしたのが小椋一葉氏の「消された覇王」といえるかも。文庫で手に入るのは良いし、まず読みやすい。もっともなんでもかんでもスサノオとニギハヤヒにしてるんじゃないかと思える部分もあって、そのまま納得できない部分もあるんだけど、興味のある人はこれから読むと良いかもしれない。

book-SekiYuji-01.jpgスサノオ、ニギハヤヒのラインは認めていても神武東遷から台与に関してのトヨヒメの話で独自の説をあげているのが関裕二氏であるが、この二つの大和の流れが継体朝の二朝並立説やその後の蘇我氏と藤原氏の争いなどのバックボーンになる部分は、私も信用していたりする。ただ詳細には神武東遷と神功皇后-応神天皇のあたりのからみを結局どう解釈するのかよくわからんところでもある。この人の良いところは自説を紹介しながらも、今までの学説を客観的に書いてくれるところだと思う。つうか歴史学者って思い込みが強いのか、そういう他の人の説も含めて客観的に記述してくれる人は少ないのよね。逆に問題点としては、関氏の本はたくさんありすぎることが問題でどれから読むと良いのだろう。PHP文庫に入っているシリーズからが良いかもしれない。最近では「古代史謎解き紀行」がポプラ社から三冊(ヤマト編、出雲編、九州編)がでていて、これは結構良い。なお「聖徳太子は蘇我入鹿である」もおもしろいよ。関係ないようだけど古代からの深い対立関係があるのだ。

まあ一般の人にはトンデモ本かもしれんし、意味すらわからんかもしれんが、「ダ・ヴィンチ・コード」以上の謎が日本にもあるんだぞ、ということで。で、「日本書紀」と「古事記」は史上最高のメタ推理小説であり、藤原不比等は史上最高の推理小説作家であったと思ったりする。

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